父から期待をかけられて以来、夫は「残業」「休日出勤」「急な出張」を理由に家を空ける日が増えました。結婚記念日も「会議があるから」と電話1本でキャンセル。それでも私は、「会社の期待に応えようと頑張っている時期なんだ」と自分に言い聞かせていました。
そんななか、私たちは日ごろお世話になっている両親への感謝を込めて、家族旅行を計画していたのですが……。
家族旅行を突然キャンセルした夫
旅行の予約や手配は夫が担当してくれていたため、私は何度も「当日は絶対に来てね。あなたがいないと旅行にならないんだから」と念を押していました。
ところが旅行当日の朝、玄関のドアが勢いよく閉まる音が……。慌ててスマートフォンを見ると、夫からメッセージが届いていました。
「担当現場で外せないトラブルが発生したから、出張になってしまった。幹部候補としてすぐ対応に向かわないといけないから……本当にごめん」
「旅行の予約内容はスクリーンショットで送るから、それを見れば問題なく行けると思う」
突然の連絡に頭が真っ白になり、私はすぐ父へ電話。事情を話すと、社長である父も「たしかに現場のフォローも彼の役目ではあるからな……。トラブルの状況次第では急な出張が入ることもあるんだよ。残念だが仕方ない、仕事なら理解してあげよう」と、夫の仕事に理解を示してくれたのです。
私と父のやり取りをそばで聞いていたらしい母も、「家族みんなで行くことに意味があるし、今回の旅行は延期しましょう」と言ってくれました。
さらに「せっかくだし、今日は私たちがそっちへ遊びに行くね」と明るく声をかけてくれ、私はその言葉に少しだけ救われました。
出張中のはずの夫が公園に!?
その日の夕方、両親が家に来てくれたため、一緒に夕食の買い出しへ出かけることに。道中、近所の公園を通りかかったとき、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできたのです。
「……え? 今の声って……」
気になって視線を向けると、ベンチに座っていたのは、出張へ行ったはずの夫でした。しかも隣には、同じマンションに住む女性が寄り添うように座っています。
思わず足を止めると、夫たちの会話が聞こえてきました。
「義両親との旅行なんて正直しんどいんだよ」
「それより君と一緒にいたかったから旅行は断った」
その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった私。両親も言葉を失って立ち尽くしていました。
覚悟を決めた私は忍び足で夫の背後まで歩み寄り、「ねえ、出張じゃなかったの?」と静かに声をかけました。
夫は「えっ……なんでここに!? 旅行に行ったんじゃないのか!?」と飛び上がるほど驚き、顔色が一気に真っ青に。隣にいた女性も状況を理解したのか、青ざめた表情で固まっていました。
夫をにらむ私の前に出て、「出張と言っていたのは嘘だったのか。説明してもらおう」と低い声で問いかけた父。
夫は慌てて「あ、いや……たまたまマンションの前で会って、仕事の話をしていて……!」と苦しい言い訳をしようとしましたが、父の冷ややかな視線に言葉を詰まらせます。
「嘘の上に嘘を重ねるつもりか? 『旅行がしんどい』『一緒にいたかった』という会話は全部聞こえていたぞ。家族に嘘をついて不倫していたということだな」
父に言い逃れのできない事実を突きつけられ、夫はついに不倫関係にあったことを認めました。完全に自滅したことを悟り、顔面蒼白のままその場にへたり込んで頭を下げたのです。
「申し訳ありません……」
夫は自分ひとりが不在でも旅行は予定通り決行されると思い込んでいたようで、完全に油断していた様子。私たち家族を旅行先へと追い払ったつもりになって、堂々と近所で不倫相手と過ごしていたのでした。
公園の真ん中で土下座をする夫を見ても、私は許す気持ちにはなれませんでした。ここまで平然と嘘をつき続けていた人を、もう信じることはできなかったのです。
信頼を失った夫の末路
夫の謝罪を聞き終えてから、静かにこう告げた父。
「会社を任せる話は白紙にする。人として信頼できない相手に、大切な会社は任せられない」
続けて私も夫を見つめながら、「離婚してください。それから、旅行のキャンセルで発生した費用については、あなたに負担してもらいます」とはっきり伝えました。
夫はうつむいたまま何も言いませんでした。
その後、話し合いを重ねて私たちの離婚は成立。当然、夫は父の会社を辞めました。
一方、私は父の会社へ入社。父のもとで経営や仕事について一から学ぶ毎日を送っています。いつかは父の会社を継げたら……と思っています。
あの出来事はつらい経験でしたが、大切なのは口先だけの言葉ではなく、誠実に向き合ってくれる人なのだと実感しました。今も支えてくれる両親には感謝してもしきれません。今度、両親と一緒に本当の家族旅行に行く予定です!
◇ ◇ ◇
信頼は、小さな嘘や裏切りの積み重ねによって失われていくものです。
一度失った信用を取り戻すことは、簡単ではありません。だからこそ、目先の欲や都合ではなく、本当に大切な家族や支えてくれる人との関係を大切にしたいものですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。