出産後は、近所に住む実家の母が何かと手伝いに来てくれたおかげで、慣れない育児も何とか乗り越えられていました。
一方、義実家は新幹線で3時間ほど離れた場所にあります。義祖父の介護もあり、義両親は家を空けることが難しかったため、出産後もしばらくは孫に会いに来られませんでした。落ち着いたら私たちのほうから帰省しようと話していました。
一向に届かない出産祝い
なかなか孫に会えない義両親は、私が送る写真や動画を毎日のように楽しみにしてくれていました。
ある日、義母は申し訳なさそうに、「会いに行けないから、せめて出産祝いだけでも先に送るわね」と言ってくれたのですが、その後いくら待っても何も届きません。
これまで義両親との関係はとても良好でした。だからこそ、「何か事情があったのかな」と気になりながらも、催促するようで聞けません。
夫に相談しても「親相手とはいえ、聞きづらいな」と言うだけで、結局そのままになってしまいました。
そして数カ月後――。
私たちは、子どもを連れて初めて義実家へ帰省。義両親は初孫を抱いて本当にうれしそうで、私もその笑顔を見て安心しました。
ところが夫は、到着してあいさつを済ませると、地元の友人と会う約束があると言って出かけてしまったのです。
私は少し緊張しながらも、義両親とゆっくり話をして過ごしていました。すると義母が「何か困っていることはない?」と聞いてくれたのです。
私は勇気を出して、ずっと気になっていたことを口にしました。
「お義母さん、言いにくいんですが……」
「前に出産祝いをいただけるというお話があったと思うのですが」
その瞬間、義両親は顔を見合わせました。そして義母は険しい表情になり、「足りないって言いたいの? ガメついこと言わないで」と言ったのです。
突然の言葉に私は頭が真っ白。すると義父が、「現金書留で送ったけど足りなかったか? 何か欲しい物でもあったのか?」と尋ねてきました。
現金書留なんて、出産後、私は一度も受け取った覚えがありません。そのことを伝えると、義両親は再び顔を見合わせたのです。
義父が追跡番号を確認すると、現金書留は私たちの住所に届き、すでに受け取り済みになっていました。
「でも……私、受け取ってません」
そう言うと、義母は「あなたがそう言うなら……きついことを言ってごめんなさいね」と謝ってくれました。
そして3人で話し合った結果、受け取ったのは夫しか考えられないという結論に。義両親が私を疑わず、信じてくれたことが何よりの救いでした。
出産祝いの行方
夜になって夫が帰宅すると、義両親は夫を座らせ、現金書留について問いただしました。夫は激しく動揺し、観念したように事実を認めました。
最初は「仕事を頑張ってる自分へのご褒美だった」と言い訳していましたが、義母が「何に使ったの!」と厳しく問い詰めると、キャバクラで使ってしまったことを白状。
夫の毎日の残業や休日出勤は、本当に仕事だったわけではなかったのです。
怒りを抑えきれず、「なんでそんなことに使ったの!」と言うと、夫は「俺の親がくれた金なんだから俺が使って何が悪い!」と逆ギレ。さらに、「子どもを産んだからって偉そうにするな。嫁のくせにうるさい」と暴言まで吐いたのです。
義両親は言葉を失い、深いため息をついていました。
しかし夫は止まりません。キャバクラの女性にプレゼントを贈っていることや、その女性が自分を特別扱いしてくれることを得意げに話し始めたのです。興奮した勢いで、「借金してでも彼女を喜ばせたい」と口を滑らせ、消費者金融から借り入れまでしていたことも判明。
私はあまりの情けなさに何も言えませんでした。キャバクラの営業を本気で信じ、借金まで背負うなんて信じられなかったのです。
重たい沈黙を破ったのは義母でした。義母は私の肩に手を置き、「あなたはもう十分頑張った。息子とは離婚しなさい」と言ってくれたのです。
続いて義父も、「情けない。親として許せない」と厳しく夫を叱責。その場で「親子だからといって何でも許せるわけではない」と告げ、夫に反省を求めました。
そして私に、「たとえ離婚しても、あなたと孫は私たちの大切な家族。何があっても支えるから」と言ってくれた義母。その言葉を聞いた瞬間、私の目からは涙が溢れ出していました。
家族に支えられて
その後、義両親とともに夫のスマートフォンを確認すると、キャバクラの女性と親密なやり取りや写真が見つかりました。やり取りの内容から、不適切な男女関係が疑われる状況だったため、私は弁護士へ相談することに。
離婚協議のなかで、慰謝料や養育費について取り決め、毎月支払いを受けることになりました。借金に加え、私たちへの月々の支払いまで背負った夫は、義両親の管理のもとで生活することになったと聞いています。
一方、私は子どもと一緒に実家へ戻り、新しい生活をスタート。離婚後も義両親との関係は変わらず、今でも孫の動画を送るたびに喜んでくれます。
「困ったことがあったら遠慮しないで頼ってね」
そう声をかけてもらえるたびに、私はひとりではないのだと実感しています。
思いがけずシングルマザーになりましたが、この子を守るために強く生きようと決めました。実家の両親、そして義両親という温かい家族に支えられながら、今は子どもの笑顔を何より大切に、穏やかな毎日を過ごしています。
◇ ◇ ◇
出産祝いは、新しい家族の誕生を祝う大切な気持ちが込められたものです。それを自分のためだけに使い込むだけでなく、妻や子どもを傷つける言動を繰り返した夫の行動は、家族の信頼を大きく裏切るものでした。
一方で、誤解に気づくとすぐに謝罪し、最後まで味方でいてくれた義両親の存在は、大きな救いだったと言えるでしょう。血のつながりだけではなく、日頃から誠実に築いてきた信頼関係こそが、本当に困ったときの支えになることを教えてくれるエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。