理不尽な先輩
僕の事務所には、事務や顧客対応を的確にこなしてくれる優秀な女性スタッフがいます。彼女は、学生時代からうちの料理の大ファンで、アルバイトを経て正社員になってくれた、会社にとって欠かせない存在です。今では、僕にとって右腕のような存在でもあります。
ある日、取引先である大学時代の先輩が事務所へやってきました。先輩は親のグループ会社の一つで社長を任されていましたが、昔からプライドが高く、下請けには横暴な態度を取る人でした。その日も、前回の代金がかたくなに未払いであるにもかかわらず、「来月の重要な社内パーティー用に、50人前の豪華な料理を追加で用意しろ」と一方的に要求してきたのです。
見かねたスタッフが、「恐れ入りますが、前回分のご入金を確認でき次第、ご注文を承っております」と毅然として伝えると、先輩は激昂。「俺の親父の会社の社員たちが、お前の会社のケータリングをよく利用しているのを忘れたの? SNSや口コミサイトに悪評を書き込んで、他の取引先を減らしてもいいんだぞ」とすごんできました。
先輩への逆襲
理不尽な要求に頭を抱える僕に、彼女が「実は…私に考えがあります。情けは無用です」と提案してくれました。彼女はすぐさま、先輩の会社宛てに『期日までに未払い金の入金がない場合、追加の依頼はお受けできず、今後の取引も一切終了とさせていただきます』という内容の正式な通知書を作成し、配達記録が残る形で送付してくれたのです。
そして、パーティー当日。案の定、期日を過ぎても未払い金は振り込まれていませんでした。私たちが通常の業務をこなしていると、昼過ぎに先輩社長から血相を変えた様子で電話がかかってきました。
「おい! もうパーティーが始まる時間なのに、料理が全然来てないぞ! どうなってるんだ!」
電話口で怒鳴り散らす先輩に対し、僕は冷静に告げました。
「お世話になっております。先日書面でもお伝えしました通り、期日までにお支払いがなかったため、ご依頼はお受けしておりません。また、規定に基づき、御社との取引はすでに終了させていただきました」
「はぁ!? あんな紙切れ、脅しに決まってるだろ! 参加者が待ってるんだぞ、今すぐ持ってこい!」
「取引が終了した相手に無償で提供できる料理はございません。それでは失礼いたします」
そう言って電話を切りました。後日風のうわさで聞いたところによると、料理が届かなかったことでパーティーは散々な結果となり、来賓として参加していた親会社の会長(先輩の父親)が激怒。その後の調査で、先輩社長がうち以外にも未払いを繰り返し、ずさんな経営で会社の資金を私的流用していたことまで発覚したそうです。
先輩の末路
結果として、先輩は社長を解任され、親会社の一般社員へと降格。未払いだった代金については、親会社の管理部門から丁重な謝罪とともに速やかに振り込まれました。
この一件を無事に乗り越えられたのは、間違いなく頼もしいスタッフの事前の準備と機転のおかげです。後日、この窮地を救ってくれた彼女に心から感謝し、昇給と特別ボーナスを出しました。
理不尽な脅しに屈することなく、毅然とした態度で会社を守り抜いたこの経験は、経営者としての僕を大きく成長させてくれました。これからも、優秀なスタッフたちと共に、お客様においしい料理と笑顔を届け続けていこうと心に誓っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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