夫は以前、大手企業に勤めていました。
ところがある日、「俺ならもっと条件のいい会社に転職できる」と自信満々に退職。私は引き止めましたが、「すぐに決まるから心配するな」と聞く耳を持ちませんでした。
勝手に退職を決めた夫
しかし現実は甘くなく、転職活動は思うように進みません。それでも夫は中小企業や条件を下げた求人には一切応募せず、「俺にふさわしい会社じゃない」の一点張り。家で求人サイトを見るだけの日々が続き、やがて転職活動そのものもしなくなっていったのです。
生活費は私の収入だけでは苦しく、貯金も減っていきました。
さらに夫はストレス発散だと言ってパチンコへ通うようになり、消費者金融から借り入れまでしていたことが発覚。娘の送り迎えや家事もほとんど私任せで、私は仕事と育児、家計のすべてを背負う毎日でした。
何度も「最初から理想どおりの会社じゃなくても、まずは働いてみようよ」と話しましたが、夫は「妥協するくらいなら働かない」と言い切るばかり。私は、この生活がいつまで続くのか不安でたまりませんでした。
偶然目にした夫の姿
そんなある日のこと――。
私は仕事中に体調を崩し、会社を早退。夫には連絡せず、そのまま自宅へ向かっていたところ、自宅マンションの近くで夫の姿を見つけたのです。
しかも隣には、派手な服装をした女性。2人は手をつないで親しげに歩いていました。
思わず立ち止まって見ていると、夫が私に気づき、女性と顔を見合わせました。そしてあわてたようにタクシーを拾い、そのまま走り去っていったのです。
頭が真っ白になりました。体調も限界だった私は、そのまま帰宅してベッドに倒れ込みました。
数時間後、「こんなところで寝てるなんて邪魔なんだけど」と吐き捨てるような夫の声で目が覚めました。
私は女性と一緒にいたことを問い詰めましたが、夫は鼻で笑いながら、「熱があるから変なものでも見たんじゃない?」と言って、まともに取り合おうともしません。
娘のために離婚だけは避けようと思っていた私ですが、その気持ちは大きく揺らぎ始めました。
娘が夫から託されたもの
それから数カ月、私は証拠を集めながら離婚の準備を進めました。仕事も続け、娘と生活していけるだけの貯蓄を増やし、実家にも相談しながら住まいの目処も立てました。
そんな矢先、夫は突然荷物をまとめ、「しばらく家を出る」と言って出て行ったのです。
翌朝、無邪気な笑顔で私のところへやってきた娘。
「はい、これ。パパから預かったよ!」
そう言って渡されたのは、夫の署名済みの離婚届。まだ5歳の娘は、その紙の意味を理解していません。もし将来、この出来事を思い出したらどれほど傷つくのだろうと思うと、胸が締めつけられました。
娘をこんな役回りに使うなんて、親として最低です。怒りは込み上げましたが、不思議と気持ちは落ち着いていました。すでに離婚後の生活を始められるだけの準備を整えていたからでしょう。
むしろ、夫が自分から家を出て行ったことで、引っ越しや別居の話し合いも最小限で済むし、この状況はラッキーだ――そうポジティブにとらえている自分もいたのです。私は迷うことなく離婚届に署名し、役所へ提出しました。
不倫の代償と、新しい人生
離婚後、私は集めた証拠をもとに弁護士へ相談。元夫は私との婚姻中から女性と交際していたことが確認できたため、元夫と不倫相手の双方に慰謝料を請求しました。
時間はかかりましたが、話し合いの末、私の希望が通る形で決着。元夫とは養育費の取り決めもおこないました。
今、私は娘との新しい生活をスタートさせています。
以前は「父親がいたほうが娘は幸せだ」と思い込み、離婚をためらっていました。しかし、本当に大切なのは、お互いを思いやり、安心して暮らせる環境だったのです。
あのとき勇気を出して一歩踏み出したからこそ、私たちは穏やかな毎日を取り戻すことができたのだと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
このイラストも内容と全然ちゃうやん