初対面から厳しい言葉を向けられて
その男性患者さんは、以前は大手企業で役職に就いていた方だそうです。初対面からこちらを試すような態度があり、「君のような若造に何がわかる」と言われました。私はすでに50代ですが、その方から見ると年下に見えたのかもしれません。
男性は長年、膝の痛みに悩んでいるとのことでした。私は状態を見ながら無理のないリハビリメニューを提案しましたが、「医者でもない人間の言うことは信用せん」「もっと強い刺激を与えろ」と、なかなか聞き入れてもらえません。
さらに、自己流の激しいトレーニングを始めようとしたため、このままでは膝だけでなく腰にも負担がかかると感じました。
状態を見極め、冷静に伝えることに
強く言い返しても反発を招くだけだと思い、私はまず体の状態を具体的に伝えることにしました。
歩行の様子を確認すると、膝をかばう動きに加え、腰にも負担がかかっているように見えました。そこで「膝だけでなく、腰の影響も出ている可能性があります」と伝えると、男性は少し驚いた表情をしました。以前、腰を痛めたことがあったそうです。
私は続けて、「今の動き方のまま無理に負荷をかけると、膝ではなく腰に痛みが出る可能性もあります」と説明しました。専門用語ばかりにならないよう気を付けながら話すと、男性は次第に黙って聞いてくれるようになりました。
地味な動きで変化が見えた瞬間
男性は強い刺激を加える方法にこだわっていましたが、私は今の状態には、負荷の強い運動よりも動き方を整えることが必要だと考えました。そこで、一見簡単に見える動作をいくつか指導しました。最初は半信半疑の様子でしたが、数分後、男性が膝を動かしながら「あれ、さっきより痛くないな……」とつぶやいたのです。
周囲のスタッフも少し驚いた様子でした。男性はしばらく黙った後、顔を赤くしながら「……すまなかった、先生」と小さく頭を下げました。私は「いえ、一緒に無理のない方法を探していきましょう」と答えました。
厳しい言葉を向けられると、つい感情的になりそうになります。けれどこの経験を通じて、専門職として積み重ねてきた知識や経験を落ち着いて示すことが、何よりの説得力になるのだと感じました。
まとめ
肩書きや威圧的な態度に押されそうになる場面でも、自分の仕事に誇りを持ち、学び続けていれば伝わるものがある。そう再確認できた出来事でした。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:佐々木時雄/50代男性・会社員
イラスト:マメ美
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年7月)
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