さらに驚いたのは「夫婦の貯金を旅の資金にしたい」と言われたこと。夫が無職になって以来、わが家は貯金を切り崩して生活している状況だったのに、さらに貯金を使おうなんて、許せるわけがありません。
「自分探しの旅に貯金は使えません」と断ると——。
自分探しをしたいと言い出した夫。資金は…?
夫は「夫婦のお金が使えないのなら、どこかで借りてきてほしい」と言い出しました。無職の自分では借りられないため、私が銀行で借りるか、実家の親へ頼むか——お金を使わせないのだから、どうにかしろという口ぶりです。
そのあまりにも身勝手な言い分に、私はついに堪忍袋の緒が切れました。もうこれ以上のわがままには付き合えません。
「旅に出たいなら自分で工面するか、自分の親に頼んで。親を説得する覚悟すらないなら諦めて」と伝えると、彼は「冷たいな」と不満げにうつむくだけでした。
夕飯の確認で夫に電話したら…予想外の返答が!
その少し後、夕飯の買い物を頼もうと夫に電話をかけると、電話口から返ってきたのは「もう家には帰らない」という唐突な言葉。彼は「自分探しの旅に出発するところだ」と言ったのです。
動揺を抑えつつ旅費のことを尋ねると、夫は「夫婦の貯金をすべて下ろした」と平然と言い放ちました。将来のためにコツコツと積み立ててきた大切な資金が、私の知らないところで消えていたという事実に、胸が凍りつくばかり……。
さらに夫は「しばらく放っておいてほしい」と勝手なことばかり口にしました。
私が怒りをぶつけても、彼は「いつか、これが必要な旅だったとわかるはず」と言い張り、まったく聞く耳を持ちません。旅の期間すら伝えず、一方的に連絡を絶つと言って電話を切った彼の声は、どこか浮かれているようにさえ思えました。
それとは対照的に、私はただただどん底へ突き落とされたような気分でした。
3年ぶりに夫から連絡
夫が旅に出て約3年が経ったある日、突然彼から連絡がありました。
「急にいなくなって悪かったな」「これからは妻を一番大切にするから」
何を言っているのか、まったく意味がわかりません。
「妻って誰のこと? あなたにもう妻はいません」と返すと、彼はあからさまに驚いた様子……。
「私があなたの帰りを待っていると、本気で思っていたの?」
私はとっくに彼を見限っており、すでに離婚も成立しています。
スマホ越しにも、彼が動揺しているのがはっきりと伝わってきました。
3年前、彼が旅立った日、家に帰ると机の上には記入済みの離婚届と「何かあったら好きに出してくれ」というメモが残されていたのです。彼はまさか、私が本当に提出するとは思っていなかったのでしょうが……。
「勝手な真似をするな!」と怒る彼でしたが、家族を捨てて勝手に出て行ったのは彼自身です。いつ帰るかもわからない夫を待ち続けるより、自ら区切りをつけて人生を立て直すのは当然の選択でしょう。
私は、彼の荷物を実家に送ったことを伝え、電話を切りました。
彼が私に連絡してきた理由が明らかに…!
そのすぐ後、再び彼から連絡がありました。メッセージを見ると「引っ越したのか?」と書かれており、どうやら以前の住まいを訪ねたものの、すでに見知らぬ家族が住んでいて驚いたようです。
彼は新しい住所を教えてほしいと言ってきましたが、私はきっぱりと拒否しました。そもそもなぜ今さら戻ってきたのか、自分探しは終わったのかと尋ねると、「いろいろ落ち着いたから帰ってきた。いろんなことに挑戦して視野が広がったよ」と、あまりにも呑気な返答が返ってきます。
しかし、どうやら仕事も貯金もない様子。結局のところ、行き場を失って経済的にも行き詰まり、元妻である私を頼ろうとしているだけのこと……。
私は静かに、しかしはっきりと伝えました。
「私はあなたの都合のいいお財布ではありません。援助を望むなら、ご両親に相談してください」
すると彼は「利用するつもりなんてない。ただ会いたかっただけだ」と弁解してきましたが、その言葉が私の心に響くことは二度とありませんでした。
義母からの連絡で、さらなる事実が判明!
私がここまで夫をきっぱり拒絶できたのには、理由がありました。実は夫から連絡が入る少し前、義母からの電話で彼が3年ぶりに実家へ顔を出したことを聞いていたのです。
そこで義母が語った彼の“旅の顛末”は、まさに驚くべき内容でした。旅先で資金が尽きた彼は、現地で知り合った日本人と金銭トラブルを起こし、行き場を失って帰国したというのです。
「もう息子とは関わらないほうがいい」と言う義母。その話を聞いた私も、あまりの無計画さと迷惑ぶりに呆れるほかありませんでした。
元夫からはその後も懲りずに連絡がありました。「お金を貸してほしい」と言ってきたのです。私は落ち着いた口調で、すでに再婚し、穏やかな日々を過ごしていることを伝えました。
彼はなおも食い下がろうとしましたが、私が再婚相手の正体を明かしたことで事態は一変しました。その相手とは、かつて彼が「堅物でつまらない奴だ」と見下していた彼の幼なじみだったのです。
自分が見下していた相手に私を奪われたうえ、私から「やさしい理想のパートナー」だと聞かされた元夫は、自分にはもう付け入る隙も、勝てる要素も何ひとつないと思い知らされたのでしょう。完全にプライドを打ち砕かれた彼は、言い返す言葉を失ったように、黙って電話を切りました。
それきり、彼がどこで何をしているのかはわかりません。私は、今の恵まれた毎日を決して当たり前とは思わず、大切にしていきたいと思います。
◇ ◇ ◇
人生に関わる大きな決断は夫婦でしっかり話し合って決めていきたいもの。相手の気持ちを置き去りにした勝手な行動によって崩れた信頼は、後からどれだけ後悔しても元の形に戻すのはとても難しいことです。
一番身近で大切なパートナーだからこそ、日ごろから思いやりを持って、丁寧にお互いの声に耳を傾け合いたいものですね。
【取材時期:2026年6月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。