「細かすぎる」と笑う同期
私はもともと営業部で、取引先へ新しいパッケージを提案したり、商品の仕様やデザイン、希望する納期などを聞いて社内の担当部署へ伝えたりしながら、案件全体の進行を管理する仕事を担当していました。
私は、取引先から受け取った情報に曖昧な点があったり、途中で仕様変更が入ったりすると、内容を確認してから関係部署へ共有するようにしていました。
ただ、同期のB田とは仕事の進め方がかなり違いました。B田は行動が早く、次々と案件を進めていくタイプです。その一方で、私が取引先へ細かな点を確認していると、
「お前って本当に仕事が遅いよな」
「細かすぎるだろ」
と、からかうように言うことがありました。私は、後から認識の違いがわかってやり直すくらいなら、必要なことは先に確認しておきたいと考えていました。
そんな中、私はこれまでの営業経験も生かせるのではないかと声をかけられ、品質管理部へ異動することになりました。私の勤務先の品質管理部では、商品パッケージに使用するデータが、本当に取引先が承認した最終データと一致しているか、指定された包材の仕様になっているかなどを確認し、製造前のミスを防いでいました。
異動して1週間ほどたったころ、社内でB田と顔を合わせました。
「品質管理か。細かいところまで気にするお前にはぴったりじゃん。営業よりラクそうでいいな」
笑いながらそう言われ、私は少し引っかかりました。営業の仕事をしていたころから何度も「細かすぎる」と言われていたため、今回も仕事ぶりを皮肉られているように感じたのです。
印刷前の確認で見つかったデータの食い違い
品質管理部へ異動してしばらくしたころ、営業部から大手コンビニ向け冷凍食品のパッケージについて、印刷前の確認依頼が届きました。
私が資料を確認すると、取引先が承認した表示データと、印刷に使用する予定のデータの一部に食い違いが見つかりました。こうした場合は、営業部へ差し戻して修正してもらうのが通常の流れです。私は修正箇所をまとめ、営業部へ連絡しました。
すると、その案件を担当していたB田が慌てた様子を見せました。
「えっ? もう印刷工場にこのデータでお願いしちゃったんだけど……」
話を聞くと、B田は品質管理部の確認が終わる前に、普段やりとりしている印刷工場の担当者へ直接連絡し、正式な依頼前にもかかわらず、誤ったデータを前提に準備を進めてもらうよう頼んでいたのです。
幸い、まだ実際の印刷には入っていなかったため、営業部から工場へすぐに連絡し、準備を止めてもらうことができました。しかし、すでに印刷スケジュールには組み込んでいたそうで、工場側に予定を変更してもらう事態になってしまいました。
急いだ結果、かえって手戻りに
今回の件は営業部の上司にも共有され、B田は事情を確認されることになりました。
品質管理部の確認が終わる前に印刷工場へ連絡した理由を聞かれたB田は、「納期が迫っていたので、できるところだけでも先に進めておいたほうがいいと思ったんです」と説明したそうです。
しかし結果的には、品質管理部から修正が入り、工場には印刷スケジュールを変更してもらうことになりました。早く進めようとしたことで、かえって工場側に余計な手間をかける結果になったのです。
上司からは、納期を意識して動くこと自体は必要だとした上で、品質管理部の確認が済んでいない段階で、正式な手続きを経ずに外部へ準備を依頼しないよう注意を受けたとのことでした。
後日、社内でB田と顔を合わせると、以前のように私の仕事の進め方をからかう様子はありませんでした。営業部にいたころ、「細かすぎる」と何度も言われていた私にとって、以前のようにからかわれなくなったことには、少し胸がすく思いもありました。
まとめ
今回の出来事を通して、私は「慎重に確認すること」と「仕事を早く進めること」は、どちらか一方を選ぶものではないのだと気付きました。
両方の仕事を経験した今は、それぞれの役割を理解しながら、必要な確認とスピードをどう両立させるかを考えるようになりました。今回の経験は、自分の仕事の進め方を見直すと同時に、立場が違えば大切にしていることも違うのだと知るきっかけになりました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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