引っ越して間もないある日、隣に住む女性・Aさんから声をかけられました。
最初は気さくで親切そうな人だと思い、私も笑顔であいさつを返しました。しかし、少し話したあと、いきなり踏み込んだ質問をされたのです。
初対面の隣人からぶつけられた質問
「ところで、旦那さんって年収いくらなの?」
あまりに唐突だったので、私は言葉に詰まりました。
「そういうことは、ちょっと……」とやんわり断ったところ、それまで笑顔だったAさんの表情が一変。
「別に隠すようなことじゃないでしょ?」
「この辺じゃ大きい家だし、ずいぶん余裕がありそうだから気になっただけよ」
さらに、私が何の仕事をしているのかまでしつこく尋ねてきたAさん。それでも答えずにいると、「もしかして、人に言えないような仕事でもしているの?」と、勝手な憶測まで口にし始めたのです。
初対面の相手にここまで言われるとは思わず、私は戸惑うばかり。その日は適当なところで会話を切り上げ、家へ戻りました。
後になってほかの近所の方と話す機会があり、その隣人が以前から噂好きで知られていることを知りました。そして、その話を聞いたころには、すでに私自身がその標的になっていたのです……。
根も葉もない噂
Aさんと話してから1週間ほどたったあたりから、近所を歩いていると、何となく視線を感じることが増えました。
そんなある日、顔見知りになった近所の方が心配そうに声をかけてくれたのです。
「変なことを聞いて申し訳ないんだけど……人に言えないような怪しい仕事をしてるって話、本当なの?」
私は驚いて、すぐに否定しました。詳しく聞くと、Aさんは私が仕事について詳しく話さなかったことから、「人に言えないような怪しい仕事をしているらしい」と勝手に決めつけ、さらに「子どもは闇バイトに加担していたらしい」などと、事実無根の話を周囲に広めていたようです。
そのうえ、私たち夫婦の仲が悪いかのような話まで付け加えられていました。もちろん、どれも事実ではありません。
そして後日、知人から教えられてAさんのものと思われるSNSアカウントを確認したところ、私のことを連想させる投稿がされていました。実名こそ書かれていなかったものの、住んでいる場所や引っ越してきた時期など、近所の人なら私だと特定できるような内容でした。
私はすぐに該当する投稿のスクリーンショットを撮り、URLや投稿日などもわかる形で保存。そのうえでAさんに、「事実ではない話を広めるのはやめてください」「SNSにも投稿してますよね? 削除してください」と伝えました。
しかし、返ってきたのは謝罪ではありませんでした。
「あなたの名前なんて書いてないじゃない。自意識過剰なんじゃない?」
そう開き直られ、私はこれ以上直接話しても解決しないと判断しました。
ようやく取り戻せた穏やかな暮らし
私はSNSの投稿や隣人とのやりとりを時系列で整理し、弁護士へ相談。
SNS上の投稿については、内容や周囲の状況から私のことだと特定できる可能性があること、事実ではない内容を広めた行為についても、状況によっては名誉毀損などの問題になり得ると説明を受けました。
そこで私は弁護士と相談しながら証拠を整理し、今後同様の行為をしないことや、該当する投稿を削除することなどを求めることに。
弁護士から書面で連絡が入った途端、それまで強気だったAさんの態度は一変。すぐに、謝罪の申し出がありました。
「軽い気持ちで話しただけだった。こんなことになるとは思わなかった」
そう言われましたが、私にとっては決して「軽い話」ではありませんでした。知らない土地へ引っ越してきたばかりの私にとって、ご近所から好奇の視線を向けられることは大きな負担だったからです。
最終的には弁護士を通して話し合い、問題となったSNS投稿の削除、今後私や家族について事実ではない話を広めないことなどを確認し、一定の解決金を支払ってもらうことで示談となりました。
Aさんの噂話に加わっていたほかの人たちからも謝罪があり、それ以降、私についての噂も落ち着いていきました。
騒動が落ち着いてから、隣人とは必要以上に関わらないようになりました。顔を合わせても最低限のあいさつをする程度です。
最初に年収を聞かれたとき、相手に合わせて適当に答えておけばよかったのかと悩んだこともありました。しかし、答えたくないことを答えないのは当然のことです。答えなかったことを理由に、事実ではない噂を流されていいはずもありません。
今回の経験から、トラブルになったときほど感情的に言い返すのではなく、証拠を残し、必要に応じて専門家へ相談することが大切なのだと実感しました。
今はようやく、新しい土地で夫と落ち着いた生活を送れています。これからもご近所さんとはほどよい距離を保ちながら、この場所で穏やかに暮らしていきたいと思っています。
◇ ◇ ◇
何気ない噂話でも、内容によっては相手の社会的評価を傷つけ、深刻なトラブルにつながることがあります。特にSNSへの投稿は、多くの人の目に触れたり、削除しても記録が残ったりする可能性があるため、細心の注意を払わなければなりません。
事実ではない噂や投稿による被害を受けた場合は、感情的に相手と争うのではなく、投稿のスクリーンショットやURL、日時、相手とのやりとりなどを保存しておくことが重要です。状況に応じて、弁護士などの専門家への相談も検討しましょう。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
創作ってすぐにわかるぜ