異変を感じるようになったのは、夫の様子が明らかに変わってからでした。
以前は帰宅すると仕事の話をしたり、一緒にテレビを見たりしていたのに、いつからかスマホばかり気にするようになったのです。
スマホを手放さなくなった夫
食事中にも通知が届くとすぐに画面を確認し、ときにはうれしそうに笑っていることも。
「最近、ずっとスマホ見てるよね。誰と連絡してるの?」と尋ねても、夫は「会社の部下だよ」と答えるだけでした。
ある日、夫がソファでスマホを見ている後ろを通ったとき、偶然画面が目に入りました。そこには、スポーツウェア姿の若い女性の写真が表示されていたのです。
さらに夫は、その女性に親しげなメッセージを送っていました。どう考えても、単なる上司と部下のやりとりには見えません。
私が問いただすと、夫は慌てたようにスマホを伏せました。
「ただ相談に乗っていただけだよ。仕事のことでいろいろ悩んでるみたいでさ」
話を聞くと、相手は夫の部下とのこと。仕事だけでなくプライベートな悩みまで相談されるようになり、頻繁に連絡を取っていたようでした。
「頼られたから放っておけなかっただけ」と夫は繰り返しましたが、女性から送られてきた写真やメッセージの内容を考えると、私は納得できませんでした。
ただ、その時点では不倫を裏付けるものはなかったのも事実。夫も「やましいことは何もしていない」と言い張ったため、私はそれ以上追及できませんでした。
それでも最後に、「既婚者なんだから、部下との距離感には気をつけてね。誤解されるようなことはしないで」と釘を刺しておきました。夫もうなずいたため、そのときは夫のことを信じるしかなかったのです。
消えなかった違和感
しかし、それからも夫の行動は変わりませんでした。むしろ、スマホをお風呂やトイレにまで持っていくようになり、帰宅が遅くなる日も増えていったのです。
「部下の相談に乗っていた」「急な仕事が入った」などと説明されましたが、以前とは明らかに違いました。ある日には「会社の飲み会」と言って出かけたにもかかわらず、帰宅した夫の服から、女性向けの香水のにおいがしたことも。
疑いたくはありませんでしたが、もう見過ごすことはできません。
ひとりで抱えきれなくなった私は、近くに住んでいた弟に相談することに。弟は「決めつけて問い詰めるより、どうしても気になるなら専門家に相談して事実を確認したほうがいいんじゃない?」と助言してくれました。
その言葉に背中を押された私は、調査会社に相談。費用もかかるため迷いましたが、疑い続けながら生活するより、事実を知りたいと思ったのです。
そして調査を依頼してしばらくしたころ、私の不安は現実のものとなりました。
夫は仕事を終えたあと、例の女性部下と待ち合わせて食事をしていました。それだけならまだ言い逃れもできたかもしれません。
しかし別の日には、2人でホテルへ入っていく様子まで確認されたのです。報告書を受け取ったとき、ショックより先に、「やっぱりそうだったんだ……」という気持ちが込み上げました。
あれほど気をつけてほしいと伝えたのに、夫は私の忠告を無視していたのです。
夫が失ったもの
調査会社から夫の不倫の証拠を受け取った私は、夫と話し合うことに。最初は「誤解だ」と言い張っていた夫も、調査報告書を見せると、とうとう不倫を認めました。
きっかけは、本当に女性部下からの相談だったそうです。仕事の悩みを聞くうちに、プライベートでも連絡を取るようになり、食事に誘われるようになったとのこと。
「頼ってもらえるのがうれしかったんだ」
夫はそう話しました。自分を必要としてくれる若い女性に頼られ、上司としてではなく男性として意識されているように感じて、舞い上がってしまったそうです。
しかし、それは家庭を裏切っていい理由にはなりません。私が許せなかったのは、夫が私から一度忠告されていたにもかかわらず、自分の意思で関係を続けたことです。
「私、気をつけてって言ったよね?」
そう言うと、夫は何も答えられませんでした。
その後、不倫が発覚したことを知った女性部下は、関係を続けるつもりはないと夫に告げたそうです。夫はてっきり彼女も自分に本気だと思っていたらしく、かなりショックを受けていました。
例の部下に振られてからというもの、夫は何度も私に謝り、「もう二度としない」「やり直したい」と言いましたが、私の気持ちは変わりませんでした。
その後は離婚の条件について話し合い、慰謝料についても双方で協議。すぐにすべてが決まったわけではありませんでしたが、最終的には夫も離婚を受け入れ、私たちは夫婦ではなくなりました。
離婚後、ひとり暮らしを始めた私。長年一緒にいた人との生活が突然なくなったため、最初は寂しさを感じる日もありましたが、夫の行動を疑ったり、スマホの通知に神経をとがらせたりする必要のない毎日は、想像していた以上に穏やかでした。
弟や友人と食事に出かけたり、自分の好きなことに時間を使ったりしながら、少しずつ新しい生活にも慣れていきました。
夫があのとき私の忠告を真剣に受け止めてくれていたら、違う未来もあったのかもしれない――そう思うこともありますが、後悔はしていません。
◇ ◇ ◇
誰かから頼られたり必要とされたりすることは、うれしいものかもしれません。しかし、既婚者である以上、相手との距離感を意識し、自分で一線を引くことも大切です。
「相談に乗っていただけ」という関係から始まったとしても、配偶者への配慮を忘れてしまえば、大切な信頼を失うことにもつながります。守るべきものを見失わないようにしたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
じゃなきゃこういうおかっぱブサイクにむしり取られちゃうね