「戻るつもりはないよ。彼は私がもらっていくから、お姉ちゃんはみじめに結婚式の中止手続き、がんばってね~!」
妹はそう言い放ち、私の婚約者を奪って本当に駆け落ちしてしまいました。当然、結婚式は中止に……。私ひとりがゲストに頭を下げました。
それから1年後のこと——。ずっと音信不通だった妹から、何事もなかったかのように『お姉ちゃん、久しぶり~!』とメッセージが届いて……?
妹のおめでたい話
『すっごく大事な報告があるの!』と妹。『私ね、かわいい男の子を出産したの!』と言われたので、私は『はいはい、出産おめでとう』と素気なく返しました。
しかし、妹はその冷めた反応が気に入らなかったようです。
『もう、冷たいんだから! もしかして私たちが順調すぎて嫉妬してるの?』
『彼はすごく喜んでくれて、毎日赤ちゃんの面倒も見てくれてるよ。本当にお姉ちゃんからもらってよかった~!』
さらに妹は『お姉ちゃんも早く結婚したほうがいいよ? あれから彼氏もできてないんじゃない? 彼のことはもう諦めて前に進みなよ!』と煽ってきます。
私は呆れながらも『もう未練なんてないわよ……』と答えました。もちろん本心です。
すると妹は『未練がないなら、私たちの赤ちゃんにお祝いくれるよね? そうだ! なんだったら一度うちの赤ちゃんに会いに来る? きっとあまりのかわいさにお祝いを渡したくなると思うし!』と、どこまでも勝手な提案をしてきました。
『彼にそっくりで、本当にかわいいの♡』と嬉しそうな妹……。しかし私は、強い違和感を覚えました。
実は結婚前、彼から「子どものころにかかった病気のせいで妊娠は望めない」と打ち明けられていたのです。私はそれをすべて受け入れたうえで、彼との結婚を決めていました。
子どもの父親
『彼にそっくりなのは変ねぇ? だって、その子の父親は彼じゃないでしょ? それなのに彼にそっくりだなんて……』
そう突きつけると『なんてことを言い出すのよ!』と、妹が激しく動揺している様子がスマホ越しでもわかります。
『ちょっと妊娠しづらいかも……とは言ってたけど! それでも授かったんだから奇跡じゃない!』妹は必死に反論しました。
『本当に彼の子なの? 別の男性が父親なんじゃないの?』私が畳みかけると、妹は『ちょうど彼が帰ってきた! 彼が父親だって、しっかり証明してあげるんだから!』と言い、電話をかけてきました。
電話口に出たのは元婚約者の彼。私は「お久しぶり。とりあえず、出産おめでとう」とお祝いを伝えました。
「ありがとう! お前を傷つけたのに、そんなやさしい言葉をかけてくれるなんて……」元婚約者は、なぜか感極まった様子です。
「赤ちゃんは本当にかわいいし、俺は今すごく幸せだよ!」能天気に語る彼に呆れながら、私は単刀直入に「あなた、前に妊娠は難しいって言ってたよね? どうやって妊娠したの?」と尋ねました。
「奇跡が起きたって不思議じゃないだろ?」と彼。
私は静かに告げました。「たしかにそうね。奇跡だってあるかもしれない。でも……結婚式当日に姉から新郎を奪うようなあなたの奥さんに、一度しっかり確認してみたら?」
すると彼は黙ってしまい、私は電話を切ったのでした。
略奪駆け落ち婚の末路
後日――。「お姉ちゃん! 助けて!! 大変なの! 赤ちゃんの父親が彼じゃないって、バレちゃったの!!」妹からパニック状態の電話がかかってきました。
私が伝えた言葉をきっかけに彼が不信感を抱き、DNA鑑定をおこなったのでしょう。事実を知った彼は激怒し、妹に即離婚を突きつけたそうです。
「私ひとりじゃ赤ちゃんを育てられないよ! 助けて、お姉ちゃん!」とすがってきますが、もちろん助ける義理などありません。
「実家に連絡しても『絶対に帰ってくるな!』って冷たく突き放されて……」と泣きつく妹ですが、挙式当日に姉の婚約者を奪って駆け落ちしたのですから自業自得です。
「自分のしたことの責任は自分で取りなさい。今あなたができるのは、生まれてきた子どもを幸せにすることだけでしょ」そう告げて、私は電話を切りました。
その後、妹と彼は離婚。慰謝料や離婚条件を巡って散々揉めた末、彼は実家に戻り、妹は駆け落ち先でシングルマザーとして苦労しているようです。
妹に会うつもりはありませんが、甥っ子に罪はありません。そのため、毎年誕生日とクリスマスにはプレゼントを贈ることに決めています。
私は相変わらず忙しい日々を送っていますが、そろそろ新しい恋へ向けて歩き出そうと思っています。今度こそしっかりと相手を見極め、幸せな未来を築いていきたいです。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
誰かを傷つけたり、横取りしたりして手に入れた幸せは、決して長くは続かないのだと改めて感じさせられますね。嘘や偽りで固めた関係は、いつか必ず崩れてしまうもの。まわりの人とは誠実に向き合い、自分の手で一歩ずつ築いていく関係こそが、本当の幸せにつながるのではないでしょうか。
【取材時期:2026年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
からの嘘松エピソードやな