下請けを見下す元担当者
僕が勤める工場では、A社から依頼を受けて衣料品の生産をおこなっています。僕は生産スケジュールの調整や品質管理などを担当しており、A社の社員と直接やり取りをすることもあります。
B男は、以前僕たちの工場を担当していた生産管理部の課長。当時から、発注する側という意識が強いのか、僕たちに上から目線で接することが多く、正直あまり得意な相手ではありませんでした。
その後、担当者が変わってからはA社との関係も良好で、B男と顔を合わせる機会もほとんどなくなっていました。
そんなある日、A社が取引先や協力会社を招いて懇親会を開くことになり、僕も工場を代表して参加することに。家族同伴でも構わないとのことで、妻と一緒に会場へ向かいました。
懇親会でまさかの出来事が
会場で何人かにあいさつをしていると、B男が僕たちのところへやってきました。すでにかなりお酒が入っているようで、僕のスーツを見るなりニヤニヤして、こう言いました。
「ずいぶんいいスーツ着てるじゃん。工場勤務なのに、そんなの必要?」
その日僕が着ていたのは、妻から誕生日にもらったブランド物のスーツ。相変わらず嫌みな言い方をするなと思いましたが、せっかくの席で揉めるつもりはありません。僕は軽く受け流しました。
ところがその直後、B男が持っていた赤ワインが僕にかかり、スーツが汚れてしまったのです。
「あ、ごめん。手が滑った」
そう言いながら、B男はなぜか笑っていました。本当に手が滑っただけなのかもしれません。ただ、それまでの態度もあり、僕には素直にそう受け取れませんでした。
それでも取引先との関係を考え、その場を収めようとした僕。隣にいた妻が何か言おうとした、そのときでした。
妻に声をかけた人物は…
「あ、いらしていたんですね! いつもお世話になっております」
僕たちの後ろから声をかけてきたのは、A社の営業部長でした。しかも、その視線の先にいたのは妻。営業部長は僕たちのもとへ来ると、妻に丁寧に頭を下げました。
実は妻は、複数のアパレルブランドを扱う通販サイトを運営する会社で、ファッション部門の責任者を務めています。妻の会社ではA社の商品も多く取り扱っており、A社にとって重要な販売先のひとつでした。
ただ、B男は妻の会社との取引に直接関わっておらず、妻の顔を知らなかったようです。
営業部長が妻に今後の取引について話し始めると、B男の表情は一変。先ほどまでの笑顔は消え、明らかに動揺していました。
そのとき、営業部長が僕のスーツの汚れに気づきました。
「どうしたんですか、それ」
問われたB男は、青ざめた表情で「ただの事故で……」と言い訳を始めました。その後、「大変申し訳ございませんでした」と僕たちに向かって、何度も頭を下げたのです。
すると妻は、静かに言いました。
「私がどこで働いているかを知って、急に態度を変えるのは……おかしくないですか?」
B男は何も言い返せず、黙り込んでいました。
後日、A社から連絡が
懇親会から数日後、A社から僕の会社へ正式に謝罪の連絡がありました。僕にも改めて謝罪があり、スーツのクリーニング代についても負担してもらうことになりました。
さらに後から聞いたところ、B男は以前にも協力会社の社員に対して高圧的な態度をとり、社内で注意を受けたことがあったそうです。今回の件をきっかけにこれまでの言動も問題視され、B男はその後、別の部署へ異動になったと聞きました。
妻の立場を知った途端に態度を変えたB男を見て、なんとも言えない気持ちになりました。それでも、A社がきちんと対応してくれたことで、僕も気持ちを切り替えることができました。
会社の規模や立場が違っても、相手を見下していい理由にはなりません。仕事で関わる相手だからこそ、お互いを尊重することが大切なのだと感じた出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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