孤立する同僚の女性
僕の部署には、少し前に中途で入社してきた同僚の女性がいました。真面目でコツコツと仕事をこなす素敵な人で、外回りの合間に資料作成を手伝ってもらうこともあり、僕は彼女の丁寧な仕事ぶりに助けられていました。しかしなぜか、一部の社員たちからは冷たい態度を取られていたのです。
どうやら「彼女は中卒らしい」という噂が社内に広まり、学歴を鼻にかける一部の社員たちが、彼女をあからさまに無視したり冷遇したりしているようでした。
彼女は挨拶をしても無視され、職場内でポツンと孤立してしまう日々。陰口を言われても一切言い返すことなく、黙々とパソコンに向かい自分の業務に打ち込んでいました。
そんな姿を見かねた僕と親しい同僚たちは、「学歴なんて仕事に関係ないのにひどすぎる」「一度ゆっくり話を聞いてみよう」と思い、彼女を仕事終わりの飲みに誘ってみることにしたのです。
楽しく飲んだ翌朝に…
僕たちから「もしよかったら、今日みんなで飲みに行きませんか?」と声をかけると、彼女は少し驚いた様子でしたが、「ぜひ行きたいです!」と嬉しそうに頷いてくれました。
お店に到着してみんなで乾杯すると、彼女はとても安堵した様子を見せてくれました。話を聞いてみると、実は彼女、高校時代にいじめに遭って中退してしまったとのこと。その後、自力で高卒認定試験に合格し、通信制で学びながら仕事をしていた時期もあったと明かしてくれました。
「本当のことが言えず、職場でもずっと孤独だったので……今日こうして楽しく話せて本当に嬉しいです」と笑顔で語る彼女。その言葉に、学歴の噂なんて関係なく、ちゃんと向き合えば分かり合えるんだと僕たちは実感しました。「誘って本当によかった」と胸をなでおろし、その日は笑顔で解散しました。
しかし、事件が起きたのは翌朝のことでした。
僕が目覚めてスマホを確認すると、画面には信じられない表示が。なんと、普段はめったに直接連絡してこない社長からの「着信50件」という凄まじい鬼電の痕跡が残っていたのです。

社長の鬼電のワケ
青ざめた僕は慌てて社長に折り返し電話をかけました。すると社長は怒鳴るわけでもなく、焦りと困惑が入り混じった声で言いました。
「昨日、中途入社の彼女と飲みに行ったそうだな!? 実は……彼女は我が社の筆頭株主である大企業の社長のお嬢さんなんだ!」
実は彼女、親の力を一切頼らずに自分の実力で社会経験を積みたいと、正社員としてうちの会社に応募してきたのだそう。
「『社会勉強のために特別扱いせず現場で育ててほしい』と頼まれていたから任せていたが……」と語る社長。昨晩、彼女が帰宅後に「職場の良い仲間と楽しく飲んできた」と嬉しそうに家族に話したことで、彼女の父親(大株主)から社長へ「昨晩は娘が親切な同僚の方々と楽しく過ごせたようで、感謝している」とお礼の電話が入ったのだそうです。
ただ、その際に父親がぽろっと漏らした「今まで娘が学歴のことで冷遇されていたようだ」というひと言に、社長は血の気が引いたとのこと。
社内での噂や陰湿な無視の存在を知り、青ざめた社長はパニックになり、事情を知る僕から話を聞こうと着信50件もの鬼電をかけていたのでした。
社長はすぐさま動き、彼女を無視したり嫌がらせをしたりしていた社員たちを厳しく指導。学歴を理由に人を差別するような言動は今後一切許されないと、社内全体に注意喚起がなされることになりました。
一方、僕たちは彼女とより一層固い絆で結ばれ、今も最高のチームメイトとして共に楽しく仕事を続けています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。