「昨日の同窓会で聞いたわよ! 貧乏母子家庭のあんたが、まさか会社経営者と婚約しているなんてね……」
あのころと少しも変わらず、彼女は私のことをばかにしてきたのですが——。
大人になっても変わらない社長令嬢
「昨日はどんな服装で来るか楽しみにしてたのよ〜。中学のときみたいにボロボロの格好で来るのかなって! まさか欠席なんてね!」
たしかに中学時代の私は、制服もバッグもお下がりでした。母が女手ひとつで育ててくれたわが家に、新しいものを買う余裕などなかったのです。
「玉の輿で一発逆転なんて許せない! それに、私より先にあんたが結婚するなんて……それが一番ムカつくわ!」と彼女は続けます。
玉の輿も何も、私は自分の力で生活しているのですが……。わざわざ訂正する気にもなれず、私は黙って聞いていました。ただ、彼女の言葉を聞いているうちに、ふと疑問が浮かびました。
「ねぇ、まだ結婚してなかったの? 20歳になったらすぐ結婚するって、昔から言ってたじゃない。そのために社長のパパに頼んで、素敵な結婚相手を探してもらっているって」と私。
そう言うと、「えっと、それは……」と慌て出した同級生。「私に釣り合うような人は、そうそう簡単には見つからないの!」と、動揺を隠すように声を上ずらせました。
「私より先に結婚するからって調子に乗るんじゃないわよ!」「玉の輿に乗ったところで、しょせんは成り上がり。生まれたときから勝ち組の私とは違うんだからね!」と一方的にまくし立てて、電話は切れました。
それ以上、言い返す気にはなれませんでした。ちょうどそのころ、私は婚約者との間に別の問題を抱え始めており、それどころではなかったのです。
略奪したつもりだった同級生
それから1カ月後——。「玉の輿生活なんて、もう来ないわよ! CEOのあんたの婚約者は私がもらったから!」例の同級生から、メッセージが届きました。
「最近彼から婚約破棄を言い渡されたでしょう? ごめんねぇ、実はそれ、私と結婚するためだったの!」
聞けば彼女は、同窓会に出席していた友人から私の婚約者の名前を聞き出し、SNSで彼を探し当てて、自分から近づいたのだそうです。
勝ち誇った文面が次々と届く画面を眺めながら、私は小さく息を吐きました。驚きよりも先に、気の毒だという思いのほうが強くなっていきます。
彼女からのメッセージは止まりません。
「私と結婚したいから、あんたとの結婚はやめるって。さっき2人で婚姻届を出してきたんだから、もうあんたの負けは確定よ!」「思い切って近づいたら、彼のほうが私に一目ぼれしてくれたの。会社経営者の旦那は、私にこそふさわしいわね」
私は「そうね、お似合いだと思う」と返し、彼の実態を伝えることにしました。
彼はたしかに会社を経営していました。しかし、法人化したばかりで従業員もおらず、事業はほとんど軌道に乗っていなかったのです。
しかも、事業が早々に立ち行かなくなったにもかかわらず、彼は「これから伸びるから」と借り入れを重ねていました。結婚準備を進める中で、彼の借金や事業の状況が明らかになり、さらに私の収入をあてにしていることもわかったのです。
それを知った私のほうから、婚約を解消したいと申し出て、話し合いのすえに解消が決まっていました。
「どういうことなの……彼の事業、もう終わってるってこと?」
激しく動揺する同級生に、私は続けました。「まさか結婚相手があんな人だとは思わなかったわ。私のほうから婚約破棄を申し出て大正解だった」
同級生は「う、うそよ! あんたたちの婚約破棄は私のせいでしょ?」「私に一目ぼれして、私と結婚したいから婚約破棄したって、彼は言ってたもん!」と認めようとしません。
そこで私は「稼ぎをあてにしていた私から婚約破棄を言い渡されて、手元には借金だけが残って……。そんなときに近づいてきた社長令嬢を、彼が逃すわけないでしょ?」と指摘。
「あなただって、彼のことが好きだから結婚したわけじゃないんでしょう? 私から略奪したくて、彼を選んだだけ。お互い様だし、ある意味お似合いだと思うな!」と続けました。
婚約者と同級生の末路
数日後、またも彼女から連絡が来ました。
「今すぐこの男を引き取って! あいつと結婚したせいで、パパに怒られたの! あんな男のせいで、私、実家を追い出されちゃったのよ!」
どうやら彼女は、私に勝ちたいがために、両親に彼を紹介もしないまま婚姻届を出してしまったようです。しかも彼女を溺愛している父親は、すでにお見合い相手まで手配していたそうです。
それでも「娘が選んだ相手で、しかも会社を経営しているのなら」と一度は受け入れかけたものの、実態を知って激怒。「実家に戻りたければ、今すぐ離婚してこい!」とまで言われたそうです。
「でも、彼は離婚届にサインしてくれないの!」と同級生。
それはそうでしょう。彼にとって彼女は金づるです。どうにかして彼女の実家からお金を引っ張れないかと、彼も必死なのだと思います。
「彼が離婚しないのは、あなたの実家をあてにしているからでしょ? 借金はあくまで彼のものなんだし、私に泣きつくより専門家に相談してみたら?」
そう言うと、彼女は「彼の借金、1,000万円もあるのよ!? 専門家に相談って……それじゃ、いつ離婚できるかわからないじゃない!」と焦った様子で言い返してきました。
私は「どうか2人で幸せになってね。私は私で、幸せになってみせるから」と返して、スマホを置きました。
その後——。
ほかの同級生から聞いた話では、彼女は実家から絶縁されたとのこと。私の元婚約者と2人で家賃の安いアパートに移り、近くのコンビニでアルバイトを始めたものの、働いた経験のない彼女にはかなり厳しいようです。
私は相変わらず、病院で医者として勤務しています。子どものころからお金には苦労してきたので、借金を抱えた人と結婚せずにすんで、心からほっとしています。
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他人と自分を比較して優位に立とうとしたり、「人に勝ちたい」という見栄だけで選択をしたりすると、本当に大切なものが見えなくなってしまうことも……。
誰かの幸せと比べるのではなく、「自分にとっての本当の幸せ」を見つめ直し、自分の軸をしっかり持って歩んでいくことこそが、自分らしく後悔のない人生を歩むための第一歩なのかもしれません。
【取材時期:2026年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。