高学歴を優遇する面接官
一緒に面接を受けていた中に、B男という男性がいました。
自己紹介でB男がT大学出身だとわかると、A部長は明らかにうれしそうな反応を見せました。A部長自身もT大学出身だったようで、B男が発言するたびに、「さすがT大学だな」「やっぱり頭の回転が違う」と何度も褒めていました。一方、僕自身は学歴にあまり自信がありませんでした。
そして、ある質問にB男が答えたあと、A部長はさらにこう言ったのです。
「BくんはT大学出身だけあって、さすがにいい意見を言うね。これよりいい意見を言える自信がある人だけ、発言してください」
僕も自分の意見を言おうとしていたタイミングだったのですが、思わず口を閉ざしました。ほかの参加者も同じように感じたのか、その後はほとんど発言せず、次第にA部長とB男ばかりが話すようになりました。
誰も話さなくなった面接
しばらくして、同席していた社長が「Bくん以外のみんなはどう考える?」と尋ねました。しかし、誰も答えません。面接会場は静まり返ってしまいました。
するとA部長は、なぜ誰も発言しないのかと困惑した様子。そこで僕は、先ほどの言葉が気になり、発言しづらくなってしまったことを伝えました。
「僕はBさんのような有名大学を出ているわけではないので……。発言していいのか迷ってしまって」
すると、ほかの参加者からも「私も同じように感じました」と声が上がりました。
A部長は慌てて否定しようとしていましたが、社長は「発言しづらい空気を作ってしまったようだね」とA部長をたしなめ、僕たちにも謝罪。その後はほかの参加者も少しずつ発言するようになり、面接は無事に終了しました。
入社後、B男は新設部署へ
その後、僕は内定をもらい、翌年の春、無事に入社しました。後から聞いたところ、あの最終面接まで進んだ時点で採用の可能性はかなり高かったようです。実際、一緒に面接を受けていた人たちのほとんどが入社していました。
僕を含め、多くの新入社員は希望していた部署へ配属されました。しかし、B男は違ったようです。彼は、A部長が責任者を務める新設部署へ配属されていました。
A部長は新設部署に学歴の高い社員を集めていたようで、「うちの部署は高学歴の人材ばかりだから期待できる」と周囲にも話していたそうです。
僕は希望していた部署で、先輩たちに教わりながら仕事を覚えていきました。
一方、社内でB男を見かけると、入社当初より疲れた表情をしていることが増えていました。A部長から厳しく注意されている姿を目にすることもあり、何かと苦労しているように見えました。
再び社長が部長をたしなめ…
そんなある日、先輩に頼まれて社長室へ資料を届けに行ったときのことです。ちょうどA部長もそこにいて、新設部署について社長と話していました。
どうやら新設部署は思うような成果を出せていないようでした。
A部長は、「みんな頭は悪くないんですが、仕事となると使えなくて……」と、うまくいかない理由を部下のせいにしていました。
すると、社長が厳しい声で「結果が出ないからといって、すぐに部下の能力のせいにするのは違うんじゃないか」と言ったのです。さらに、学歴だけで人を判断せず、それぞれの適性を見極めることも責任者の役目だと、A部長に指摘していました。
その後、新設部署は体制を見直すことになり、A部長は責任者から外れたそうです。
学歴だけを見て「優秀」と決めつけ、思うような結果が出なければ今度は「仕事ができない」と決めつける。A部長の姿を見て、人をひとつの基準だけで判断するのは違うのだと感じました。
僕自身はその後も希望していた部署で働き、少しずつ任される仕事も増えています。これからも肩書きにとらわれず、目の前の仕事にしっかり向き合っていきたいと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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