彼の実家を初訪問
訪問当日、A男の実家に向かっていると、A男から電話がかかってきました。
どうやら父親が軽い事故にあい、A男は病院へ駆けつけているとのこと。大きなけがではないそうで、母親は家にいるため、先に上がって待っていてほしいと言われました。
私はひとりでA男の実家へ向かい、緊張しながらインターフォンを押しました。しかし、しばらく待っても反応がありません。
聞こえなかったのかと思い、もう一度押してみると、ようやく玄関の扉が開きました。
出てきたのは、着物姿の女性。A男のお母さんだと思い、私があいさつをしようとすると、女性は露骨に顔をしかめました。
「何? 勧誘なら結構よ。帰ってちょうだい」
私が名乗ろうとすると、お母さんは私の服装を上から下まで眺めてこう言ったのです。
「それにしても地味で貧乏くさい格好ね。これから息子の婚約者が来る大事な日なの。邪魔しないで」
私は失礼のないよう、落ち着いた服装を選んできたつもりでした。それでも話を聞いてもらえないまま、一方的に玄関先から追い返されてしまったのです。
A男の父親を見てびっくり
私はその場を離れてすぐにA男に連絡し、事情を説明しました。A男は何度も謝り、病院での手続きを終えると、そのまま父親を連れて私の家まで来てくれました。
ところが、玄関先でお父さんの顔を見た瞬間、私は思わず目を見開きました。
実はA男のお父さんは、つい先日、新規取引の打ち合わせでわが社を訪れていた会社の社長だったのです。私も経営者として、直接あいさつを交わしたばかりでした。
まさかA男のお父さんだったとは思わず、お互い「こんな偶然あるんですね」と笑ってしまいました。
事情を知ったお父さんは、妻の非礼を深く謝罪してくれました。A男も、母親がそこまで失礼な態度をとるとは思っていなかったようです。
婚約者の正体を知った母は
正式なあいさつは日を改めることにし、A男とお父さんは実家へ戻りました。すると、お母さんはA男を見るなり、にこやかにこう尋ねたそうです。
「あら、婚約者さんは一緒じゃないの?」
A男が「朝に訪ねてきた女性を覚えているか」と尋ねると、お母さんは「ああ、勧誘みたいな人なら来たけど」と答えたそうです。
そこでA男が、母親が追い返したその女性こそ、自分の婚約者だと伝えると、お母さんは絶句。さらに、お父さんから私が新しく取引を始める会社の社長だと聞かされると、今度は慌てて「そんな人だと知っていたら、あんな態度はとらなかった」と言い訳を始めたのだとか。
しかし、お父さんはそれを許しませんでした。
相手が社長だから失礼にしてはいけないのではなく、誰であっても見た目や服装だけで決めつけ、話も聞かずに追い返すような態度はおかしいと厳しく注意したそうです。
A男によると、お母さんには以前から人を外見や肩書きで判断するところがあり、何度注意しても変わらなかったとのこと。今回の一件でA男もついに愛想を尽かし、母親とは距離を置くようになりました。
その後、私はA男と無事に結婚しました。お父さんとも良好な関係を築いており、会社同士の取引も順調に続いています。
初対面で話も聞かず、見た目だけで判断されたことには驚きました。けれど、相手の立場や肩書きによって態度を変えるのではなく、誰に対しても敬意を持って接することが大切なのだと、改めて感じた出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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