事前に連絡をくれれば歓迎もできるのですが、おもてなしをしてもらって当たり前という態度で、高級すしの出前を要求されたり、義父の好きなお酒の買い出しを頼まれたりと、出費もばかになりません。
中でも一番我慢できなかったのは、私たち夫婦の趣味に対する態度でした。
私たち夫婦の趣味を否定する義両親
私たち夫婦の共通の趣味は、恐竜のフィギュアや化石のレプリカを集めることです。いつの間にか家の中には恐竜グッズが増えていきましたが、整理整頓を心がけ、きれいにディスプレーして楽しんでいました。
しかし、わが家に遊びに来た義母は、部屋に飾ってあるコレクションを見てあからさまに嫌な顔をします。私が「これは珍しい化石のレプリカで……」と説明しようとしても、「恐竜なんて子どもじみた趣味、いい加減にしなさいよ」とため息をつくばかりでした。
あるとき、わが家でお酒を飲み上機嫌になった義父が、ガラスケースに飾っていたフィギュアを勝手に取り出して触り始め、トゲのついたしっぽを折ってしまいました。繊細な作りなので触らないようにと注意していたにもかかわらず、です。
夫が激怒して抗議しても、義父は謝るどころか「ただのおもちゃだろ!」と笑い飛ばしました。義母も「そんなに怖い顔しないでよ」と夫をたしなめ、2人は逃げるように帰っていきました。
壊されたフィギュアは、結婚1周年の記念に兄が海外の専門店で買ってきてくれた大切なものでした。後日、事情を知った私の兄は「残念だけど、壊れたものは仕方がないよ。駅近のアパートじゃ、これからも気軽に来られちゃうね」と苦笑いしていました。
その言葉に背中を押され、以前から考えていたマイホームの購入を本格的に決意したのです。
突然の同居宣言と1カ月の猶予
私たちが見つけたマイホームは、駅からバスで20分ほど離れた場所でしたが、その分、広さを確保できる一戸建てでした。恐竜グッズを飾る専用の部屋も作れますし、駅から遠いことで義両親のアポなし訪問からも逃れられると考えたのです。
ところが、引っ越しから1カ月ほどたった週末の朝、突然インターホンが鳴りました。玄関を開けると、そこには大荷物を抱えた義両親が立っていました。ひとまず家に上がってもらうと、義両親は家の中をひととおり見て回り、空き部屋だった南向きの日当たりの良い部屋に荷物を広げ始めました。そこは、私たちがこれから趣味部屋にする予定だった部屋です。
「賃貸マンションの更新を機に引き払ってきた。今日からここに住むから!」
義父が当然のように宣言しました。夫が「急にそんなこと言われても困る」と抵抗しても、義父は「親の面倒を子どもが見るのは当然だ!」と聞く耳を持ちません。しばらく考えた私は、「ここは任せて」と夫に目配せしてから言いました。
「わかりました。同居そのものは受け入れます」
予想外の返事だったのでしょう。夫だけでなく、義両親も驚いた顔をしました。私は続けました。
「ただし、一緒に暮らすなら、私たちも今まで通り自分たちの生活を続けます。家を買ったのは、私たちが自分たちらしく暮らすためでもありますから。それに、同居には準備とルール作りが必要です。1カ月だけ時間をください。それまでは仮住まいとしてウィークリーマンションを手配します」
義両親は、同居できるならと渋々ながらも納得しました。こうして、いったん荷物をまとめて引き上げてもらうことができたのです。
趣味全開のマイホームで迎撃
義両親が帰った後、夫はすぐに私に尋ねました。「本当に一緒に住むつもりなの?」私は笑って答えました。
「追い出すつもりはないよ。同居上等。ただし、私たちが義両親に合わせて趣味を捨てるつもりもないけどね」
私の考えを聞いた夫は大笑いし、全力で協力してくれることに。私たちは1カ月間、2人で必死に趣味部屋の「準備」を進めました。そして約束の日。再び荷物を持ってやってきた義両親は、案内された南向きの部屋に入るなり悲鳴を上げました。
私たちは、せっかく一戸建てを手に入れたのだからと、大好きな恐竜の世界観を再現した本格的な趣味部屋を作り上げていたのです。部屋中には大型のシダ植物などの観葉植物を所狭しと並べ、大切なコレクションは鍵付きのガラスケースに収めて、壁や天井からはリアルな翼竜のフィギュアをつるしました。
さらに、以前から夫婦で飼育を検討していたイグアナも、必要な飼育環境を整えた上で新たな家族として迎え、部屋には大きな飼育ケージを設置しました。
「同居は受け入れますよ。おふたりのお部屋は、先日荷物を広げたこの部屋です。ここはもともと趣味部屋にする予定だったので、予定通りに整えました。ほかに空いている部屋もありません。私たちは、これからも趣味を大切にして暮らします。イグアナも大切な家族です。それを受け入れた上で一緒に暮らすのであれば、私は構いません」
義母は青ざめた顔で部屋を見回し、義父も言葉を失っていました。
「私たちの趣味をやめたり、この子を手放したりするつもりはありません。それでも同居しますか?」
私が確認すると、義両親はしばらく黙り込んだ後、「こんな家では暮らせない」とつぶやきました。爬虫類やリアルなフィギュアがどうしても受け入れられなかった義両親は、自分たちから同居を諦めたのです。
元の賃貸マンションはすでに退去していたため、義両親は自費でウィークリーマンションの契約をしばらく延長することに。その後、自分たちの貯金で高齢者向けの賃貸マンションを見つけ、そちらへ入居したそうです。今、私たち夫婦は思う存分趣味を楽しみながら、マイホームでの穏やかな生活を満喫しています。
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家族であっても、相手の住まいや暮らし方を自分の都合で決めてよいわけではありませんよね。まして、事前の相談もなく同居を押しつけたうえ、自分たちの価値観まで押しつけようとするのは身勝手ではないでしょうか。親子だからこそ、お互いの生活や大切にしているものを尊重し、同居するのであれば事前にしっかり話し合うことが必要です。家族との距離感に悩んだときは、無理に相手に合わせるのではなく、自分たちの暮らしを守るためのルールや線引きをきちんと伝えたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。