取引先の社長から娘さんを紹介されて
ある日、取引先の会社を訪れたときのことです。その会社の社長とは、僕が独立したころから仕事で付き合いがあり、何かと気にかけてもらっていました。
打ち合わせを終えたところで、たまたま近くにいた女性を社長から紹介されました。
「娘のA子です」
A子さんはその会社で働いているそうで、僕とは年齢も近いとのこと。落ち着いた雰囲気で、笑顔が素敵な女性だなというのが第一印象でした。
すると社長が笑いながら、「年も近いし、よかったら今度2人で食事でも行ったら?」と言ったのです。
突然のことで少し照れくさく感じましたが、その後、僕からA子さんを食事に誘いました。ありがたいことに快く応じてくれ、後日2人でレストランへ行くことになったのです。
食事中、元カノとまさかの再会
当日はお互い少し緊張していたものの、仕事や趣味の話をするうちに自然と会話も弾むようになりました。
そんなとき、近くから聞き覚えのある声が。顔を上げると、そこにいたのは僕の元カノでした。
元カノとは、学生時代から社会人になったころまで付き合っていました。当時の僕は収入も少なく、余裕のある生活ではありませんでした。一方、元カノは次第に高級店やブランド品を好むようになり、金銭感覚の違いから僕が別れを告げたのです。
僕を見つけた元カノは、少し驚いたようにこちらを見たあと、ニヤリと笑いました。
「えー、こんなお店来るんだ。無理してない? お金、大丈夫?(笑)」
僕が何も言い返さずにいると、今度はA子さんをちらりと見て、「彼女? ずいぶん地味な人だね。でも、あなたにはお似合いかも(笑)」と言ったのです。僕だけならまだしも、初対面のA子さんまで見下すような言い方には腹が立ちました。
そのとき、A子さんの視線が元カノのバッグに向きました。大きなブランドロゴが目立つ、華やかなデザインです。すると元カノは、その視線に気づいたのか、バッグを見せつけるように持ち直しました。
「あ、これ気になる? 限定カラーで、やっと手に入れたの♡ 似合ってるでしょ?」
A子さんのひと言で元カノが沈黙
すると、A子さんは少し首をかしげ、「そのシリーズの限定カラーって、別の色じゃなかったですか?」と言いました。
「え……?」
元カノの表情が固まりました。
A子さんが続けて、「私、その色は見たことなくて……どこで買ったんですか?」と尋ねると、元カノは一瞬言葉に詰まり、「え……いや……」と視線をそらします。先ほどまでの勢いはすっかりなくなっていました。
A子さんはそれ以上追及することもなく、「私の勘違いだったらすみません」と穏やかにひと言。元カノは何か言いたそうにしていましたが、結局、一緒に来ていた男性に促され、僕たちの前から離れていきました。
後で聞くと、A子さんはそのブランドが好きで、新作もよくチェックしていたそうです。
「あまりにも失礼だったから、ちょっと言い返したくなって」
そう笑うA子さんを見て、僕も思わず笑ってしまいました。
初デートは散々だったけれど…
元カノが去ったあと、僕はA子さんに「嫌な思いをさせてごめん」と謝りました。しかしA子さんは、「あなたが謝ることじゃないですよ」と笑ってくれました。
こんな初デートでは次はないかもしれないと思っていましたが、その後もA子さんとは何度か食事へ行き、少しずつ距離を縮めています。
ある日、A子さんから「一緒にいると落ち着きます」と言ってもらえたことが、僕には何よりもうれしい言葉でした。
元カノと付き合っていたころ、僕に経済的な余裕がなかったのは事実です。でも今は、見栄を張ったり自分を大きく見せたりすることより、自然体でいられる相手との関係を大切にしたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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