彼の両親との食事会
彼とは将来の話をすることも増えており、私も結婚を意識していました。
当日、彼の両親はにこやかに迎えてくれ、最初は仕事や趣味など当たり障りのない話が続きました。
ところが、食事が進むにつれて話題がお金のことに。
彼は以前から「いつか自分のお店を開きたい」と話していました。すると彼のお父さんから、「結婚するなら、そういうことも2人で支え合っていかないとね」と言われ、私の貯金についてまで話が及んだのです。
お母さんも、「開業資金、あなたにも少し協力してもらえたら、この子も助かると思うの」と続けます。さらに彼まで、「お願いできるなら助かるんだけど」と重ねてきました。
まだ結婚もしていないのに、私の貯金をあてにされているようで違和感を覚えました。
タオルに書かれていた文字
そんなとき、女性店員さんが水を持って近づいてきました。
ところが突然――。
「きゃあ! 申し訳ありません!」
水が頭からかかり、私はびしょ濡れに。店員さんは「手が滑ってしまって……」と何度も謝り、すぐにタオルを持ってきました。
しかし、受け取ったタオルを広げた私は固まりました。そこには、「この家族から逃げろ」と書かれていたのです。
顔を上げると、店員さんは私と目を合わせ、化粧室のほうへ視線を送りました。
何かあるのだと感じた私は、服を拭いてくると言って席を立ちました。
「親友のときと同じなんです」
化粧室の近くで待っていた店員さんは、開口一番こう言いました。
「ごめんなさい。水、わざとかけました」
思いがけない言葉に驚いていると、店員さんは少しためらうように「実は……」と話し始めました。
数年前、店員さんの親友が私の彼と婚約していたそうです。
店員さん自身は彼と面識はなかったものの、親友から何度も写真を見せてもらい、彼のことで相談を受けていたため顔を覚えていたとのこと。
その親友も、結婚前に彼の両親と食事をした際、「息子を支えてほしい」「家族になるなら協力するのが当然」と言われ、お金を求められたそうです。
ところが後になって、彼の実家には借金があり、彼女に出してもらおうとしていたお金も、その返済に充てるつもりだったことがわかったのだとか。親友は家族に相談し、婚約を破棄したそうです。
「さっき聞こえてきた話が、親友のときとほとんど同じだったんです。余計なお世話かもしれないって迷ったんですが……どうしても黙っていられなくて」
その言葉を聞き、私は一気に不安になりました。
お金の本当の目的は…
その日は体調が悪くなったと言って、食事を切り上げました。
後日、私は彼に、独立資金として私の貯金を出すつもりはないと伝えました。さらに、実家に借金があるのか尋ねると、彼は明らかに動揺。
問い詰めると、実家に借金があり、私に協力してもらうつもりだったお金の一部を返済に充てようとしていたことを認めました。
そして彼は開き直ったかのように、「結婚するんだから助け合うのは普通だろ」と言ったのです。
その言葉を聞き、私の気持ちは完全に決まりました。
「結婚はできません。別れてください」
こうして私は、彼との関係を終わらせました。
結婚すれば、夫婦で支え合う場面はあると思います。でも、大切なお金の使い道を隠したまま「家族になるんだから」と相手に負担を求めるのは、支え合いとは違います。
結婚のような大切な選択だからこそ、「家族になるんだから」という言葉に流されず、お金のことも含めて納得できるまで確認することが大切なのだと学んだ出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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