息子から突然のSOS「パパ、助けて…」
現在、妻は妊娠中。新しい家族が増える日を心待ちにしていた、ある日のことです。突然、私の携帯に息子から電話がかかってきました。
「パパ、助けて……」電話口から聞こえてきた息子の震える声に、私は血の気が引きました。詳しく話を聞くと、前妻には最近新しい彼氏ができ、すっかり彼に夢中になっているとのこと。長時間家を空けるようになったうえ、学校で必要なものを買ってくれないなど、子どもたちへの態度も冷たくなっていったというのです。
さらにその日、前妻から「そんなに嫌なら、パパのところに行ってもいいわよ」と突き放すように言われたそう。私は、今すぐにでも2人を迎えに行きたい気持ちでいっぱいになりました。しかし、ふと隣にいる妊娠中の妻のことが頭をよぎります。
これから赤ちゃんが生まれる大変な時期に、息子と娘まで一緒に暮らすことになれば、妻にどれほどの負担をかけてしまうのか……。すぐに答えを出せず葛藤していると、事情を知った妻が、きっぱりと口を開きました。
「今すぐ迎えに行くわよ」妻の言葉に決意
「何を迷ってるの? 今すぐ迎えに行くわよ。おなかの赤ちゃんと同じ、あなたの大切な子どもでしょ」
妻の言葉に、私はハッとさせられました。迷っていた私の背中を、妻が力強く押してくれたのです。妻自身、幼いころに家庭のことでつらい思いをした経験があり、困っている子どもを放っておけなかったのだと思います。
妻はこれまでにも面会の際に何度か息子と娘に会っており、子どもたちも妻になついていました。私たちはすぐに2人を迎えに行くことに。私たちの顔を見た2人は、安心したように大粒の涙を流しました。
ところが翌日、前妻から「勝手に連れて行くなんてどういうこと!?」と怒りの電話がかかってきたのです。私はすかさず、「『パパのところに行ってもいい』って言ったのはそっちだろ!」と反論。すると前妻は、「少し反省させるつもりだっただけ。本当に行くとは思わなかったのよ!」と言い訳をしてきて……。
「パパたちと暮らしたい」子どもたちの決意
そんな前妻に対し、息子と娘は「もうママの家には戻りたくない。パパたちと暮らしたい」と、はっきり自分たちの意思を伝えました。
私は、2人の気持ちを尊重することにしました。しばらくは自宅で2人を預かりながら、前妻と今後について話し合いを重ねることに。前妻は当初こそ渋っていましたが、その後も話し合いを重ね、家庭裁判所で親権者変更などの必要な手続きを進めた末、息子と娘は正式に私たちと暮らすことになりました。
それからしばらくして、妻は無事に出産しました。息子と娘は、生まれたばかりの赤ちゃんをとてもかわいがってくれています。妻も2人に分け隔てなく愛情を注いでくれており、わが家は以前にも増して、にぎやかで温かな毎日を送っています。
家族は血のつながりだけで決まるものではない――。新しい命と、私を信じてくれた妻、そして子どもたちの笑顔を見るたびに、私はそう強く感じています。
◇ ◇ ◇
妊娠中という大変な時期でありながら、迷う夫の背中を押し、子どもたちを温かく迎え入れた妻。家族の形はさまざまですが、お互いの気持ちをたしかめながら、無理のない形で支え合っていけるといいですね。
また、子どもへの虐待や育児放棄(ネグレクト)は、発見が遅れるほど心身に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。虐待を受けたと思われる子どもを見つけた場合は、市町村や児童相談所などへ速やかに通告することが求められています。
相談・通告は匿名でも可能です。「虐待かもしれない」と感じたら、ためらわずに専門機関へ相談しましょう。早めの相談や通告が、子どもを守ることにつながります。
■相談・通告先
児童相談所虐待対応ダイヤル:189(いちはやく)
※24時間受付・通話料無料。一部のIP電話からはつながりません。
市町村の子ども家庭相談窓口
【取材時期:2026年9月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。