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「人生、夫の後始末だけで終わらせたくない」赤字農業を続けた70代夫。離婚届を手に病室へ行くと異変

70代の知人Aさんは、同い年の夫と2人暮らし。採算を度外視して農業を営む夫の身勝手な行動に心身をすり減らし、離婚を考えていました。その矢先、夫は膝を痛め、入院生活。タイミングの悪さを恨みましたが、それでも決意は変わらず、ある日、離婚届を手に病院へ向かったのですが、驚く事態が待っていたのです……。

 

作れば作るほど赤字…指摘しても聞く耳持たず

Aさんの夫は定年退職後、実家の農地を引き継ぎ、米とお茶を栽培。農地は広く、収穫期には人材センターや親戚の手を借りるほどの忙しさでした。夫は「先祖から引き継いだ土地だから」と頑張り、Aさんも精一杯手助けしていました。

 

しかし、農業の現実は甘くなく、ここ数年はずっと赤字経営。利益は出ず、作れば作るほどマイナスが膨らみます。それなのに夫は、近隣の高齢者が手放した田んぼまで、「せっかく声をかけてもらったのだから」と採算を度外視して引き受け、経費ばかりがかさむ悪循環に陥っていたのです。

 

「このままでは家計が持たない」と、通帳を見せて何度も指摘しますが、夫は耳を貸しません。妻がなんとかしてくれるだろと、事態を真剣に受け止めず、夫はAさんの抗議を言葉でねじ伏せるばかりでした。

 

自分のプライドや世間体ばかりを優先し、家計や妻の負担を顧みない夫の態度に、Aさんは離婚を考えますが、「お前がいないと、俺は死ぬ!」と夫は取り合ってくれず、「私は何のために一生懸命尽くしているのか」と、Aさんのストレスは増す一方でした。

 

夫の入院・農地の後始末…尻ぬぐいに心折れる

そんなある日、夫の体に異変が。激しい膝の痛みを訴え、整形外科を受診すると、膝の軟骨がすり減ってほぼない状態だと判明。骨同士がぶつかり合う重症でした。歩行困難と判断され、とうとう総合病院に入院し、手術を受けることになったのです。

 

医師からは、人工関節にするにしても、ハードな農業は不可能だろうと告げられます。すると、これまで頑なに農業にこだわり続けた夫は、あっさりと断念したのです。

 

しかも、事後処理はAさんに丸投げ。残された広大な農地の処分や、茶畑を更地にして売却するなどの面倒な手続きは、すべてAさんの肩にのしかかりました。不動産業者や近隣住民との交渉、法的な手続きなど、専門知識のないAさんにとっては、息が詰まるような作業の連続でした。

 

夫の尻ぬぐいに追われ、妻の堪忍袋の緒はついに切れます。

 

「私の人生、これ以上この人の後始末だけで終わらせたくない」

 

今度こそ離婚を認めてもらおうと、離婚届を手に、数日ぶりに入院先へ向かいました。

 

 

「何かがおかしい…」夫を襲った予想外の事態

しかし、病院では、思わぬ事態が待ち受けていたのです。

 

病室へ入ると、夫が大声を上げ、食事の有無で看護師と言い争っています。Aさんが驚いて「どうしたの?」と聞くと、夫は急に沈黙。ぼんやりとした目をAさんに向けます。しばらくして、「ああ、お前か」と気付きますが、Aさんは違和感を覚えました。しかも、いつもなら熱中するテレビの競馬中継に、夫はまったく興味を示しません。「何かがおかしい……」。

 

その後、夫は医師から認知症と診断されたそうです。Aさんには、症状が驚くほどの速さで進んでいるように感じられました。Aさんには、残酷な現実。離婚を決意したときには、夫はすでに、離婚について話し合うことさえ難しい状態になっていたのです。

 

「今になって認知症になるなんて、どこまで私を苦しめれば気が済むの?」

 

配偶者が認知症でも、離婚の意味を理解して意思を示せる場合は、協議離婚が可能です。一方、離婚の意思を確認できず話し合いが難しい場合には、家庭裁判所での調停や離婚訴訟などが必要になることがあり、判断能力の程度や手続きの状況によっては成年後見制度が関わります。Aさんは、こうした法的手続きが大きな壁になると感じたそうです。Aさんは、行き場のない憤り、絶望感でいっぱいになったそうです。

 

そんな中、Aさんを救ったのは近くに暮らす次女でした。「お母さん、もう十分頑張ったよ。これ以上ひとりで抱え込まないで。私たちも居るよ」と寄り添ってくれたのです。

 

娘に胸の内を吐露することで、Aさんの心も少し落ち着きました。今では自分の気持ちに何とか折り合いをつけて、夫の看病や、面倒な農地の後始末をこなしています。

 

まとめ

現在、Aさんは離婚届を出すことなく、生活を続けています。夫は手術を経て介護施設に入所し、週に一度くらい面会に通っているそうです。Aさんの長年の不満や理不尽な苦労を思えば、一刻も早く縁を切りたかったのが本音かもしれません。

 

しかし、法的な壁や家族との対話、認知症のせいで時々子どものようにはしゃぐ父を見ていると、若いころ家族で幸せだったことを思い出し、Aさんは「離婚」という形にこだわらず、お互いに適切な距離を保ちながら人生を整理する道を選んだといいます。

 

この決断は、きれい事だけでは語れない、家族のリアルな着地点の一つなのかもしれないと感じされられました。

 

 

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。

 

著者:雪嵐 ルイ/40代女性。高齢の母とラブラドール犬との3人暮らし。酒は飲めないが、酒にまつわる香りを好む。ある一つの酒のにおいが好きな香りフェチ。

イラスト:山口がたこ

 

※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年8月)

 

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