中卒の私を見下す社長令嬢
私は幼いころに両親を亡くし、年の離れた兄と姉に育ててもらいました。高校進学も勧めてもらいましたが、これ以上ふたりに負担をかけたくないという思いもあり、中学卒業後から働くことを選びました。
いくつかの仕事を経験したあと、ある会社に契約社員として入社。最初は簡単な業務が中心でしたが、徐々に取引先とのやりとりや資料作成など、責任のある仕事も任されるようになりました。
そんなころ、社長の娘・A子が入社してきました。
A子は私が中卒だと知ると、「中卒を採用するなんて、お父さんどうしちゃったのかな?」と冗談めかして言い、それ以降、何かにつけて私の学歴を持ち出すようになりました。
さらに、コピーや資料整理、備品補充といった自分でもできるような雑務まで、当然のように私へ回してくることも増えていったのです。
明らかに私を下に見ているのは伝わってきましたが、仕事に支障を出したくなかったため、できるだけ気にしないことにしていました。
「会社のお荷物なのよねw」
ある日、私は締め切りの迫った資料を作成していました。そこへA子が自分の書類を持ってきて、まとめておくよう頼んできたのです。
その日は手が回らなかったため断ると、A子は不機嫌そうな表情に。そして、「中卒だから正社員にもなれない」と決めつけ、私のことを「会社のお荷物だ」と笑ったのです。
その言葉を聞いた瞬間、これ以上我慢してまでこの会社にいる必要はないと思いました。
「……それなら、辞めます」
私がそう返すと、A子は驚く様子もなく、好きにすればいいと言わんばかりの態度でした。
私はその日のうちに上司へ退職の意思を伝えました。引き止められましたが、以前から別の会社に転職の誘いを受けていたこともあり、この会社を離れる決意は変わりませんでした。
その後、必要な引き継ぎを済ませ、会社を退職しました。
転職後、まさかの再会
転職先では、それまでの経験を評価してもらい、正社員として働くことになりました。
新しい仕事にも少しずつ慣れてきたころ。新たな取引先を選ぶため、候補のひとつだった以前の勤務先と打ち合わせをすることになり、私も同席しました。
当日、会議室に現れたのはA子。事前に聞いていたのは別の担当者だったため、まさかここで再会するとは思わず驚きました。A子も私の転職先までは知らなかったようで、私を見るなり明らかに戸惑った様子でした。
A子は一瞬驚いた様子を見せたものの、あいさつもそこそこに、そのまま打ち合わせを始めました。ところが、持参した資料には数字の食い違いや記載漏れがいくつかありました。
さらに、こちらが内容について確認しても、すぐに答えられない場面が続き、事前に伝えていた条件まで一部抜け落ちていたのです。
結局、この内容では取引を進めるか判断がつかず、いったん社内で検討することになりました。
「お父さんに口きいてあげるから」
打ち合わせ後、A子に呼び止められました。
話を聞くと、私が辞めたあと、細かな業務を引き継ぐ人がなかなか決まらず、社内でも少なからず混乱があったとのこと。そこで初めて、私が日々どれだけの仕事を担当していたのか気づいたようでした。
ところがA子から出てきたのは、謝罪ではありませんでした。
「戻りたいなら、お父さんに口きいてあげてもいいけど?」
相変わらず、どこか上から目線の発言に思わず苦笑しつつ、私は今の会社で頑張りたいとだけ伝え、その場をあとにしました。
その後、社内で検討した結果、最終的には別の会社と契約することになりました。
さらにしばらくして、元同僚から、今回の商談での準備不足に加え、これまでの勤務態度についても、A子が社長から厳しく注意されたと聞きました。社長の娘だからといって好き勝手していいわけではないと、かなり叱られたそうです。
学歴だけで人の価値や仕事ぶりを決めつけることはできません。自分を正当に評価してくれる場所へ移ったことで、私は以前よりも前向きな気持ちで仕事に取り組めるようになりました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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