派遣を見下す理不尽な若支配人
僕は元々ある旅館の料理人でしたが、過去に現場トラブルでぬれぎぬを着せられて退職し、派遣料理人として別の旅館で働いていました。
しかし、この派遣先の若支配人は相当なくせ者で……。彼は「派遣ごときに料理なんて任せられるか」と数名の派遣スタッフを見下し、本来の調理業務ではなく、食器洗いや清掃などの雑用ばかりを命じてきたのです。
自分は現場経験がないにもかかわらず、あらゆる業務に口を出し、「代わりなんていくらでもいる」と暴言を吐く彼に、派遣スタッフ全員が疲弊していました。それでも僕は料理人としての誇りを捨てず、愚直に仕事をこなしながら静かに耐えていました。
派遣マネージャーの対応は
ある日、派遣会社の担当女性マネージャーが現場の視察に訪れました。若支配人が僕に暴言を吐き、派遣スタッフを不当に扱う光景を目にした彼女は、毅然と言い放ちました。
「スタッフのスキルを正当に評価せず、不当に扱う現場に大切な人材は置けません。これ以上のハラスメントが続くなら、契約を解除し、スタッフ全員を引き上げます」。
彼女の言葉を聞いた若支配人は、「勝手にしろ! 代わりなんていくらでもいる!」と吐き捨てたのです。
こうして派遣契約は解除され、僕たち派遣スタッフは全員現場から撤退することになったのです。
VIP客の来店と崩壊する厨房
僕たちが撤退してから数日後のこと。旅館は大きな危機を迎えていました。その日は、旅館にとって重要な顧客の宴会予約が入っていたのです。
しかし、派遣スタッフが一斉に抜けた厨房は、完全に機能不全だったようで……。「代わりはいくらでもいる」と言っていた若支配人ですが、新たな人員をすぐに確保することができなかったのです。これでは厨房が回らないと悟った彼は、慌てて派遣会社に電話をかけ「なんとか戻ってきてもらえないか」と僕たちに復帰を泣きついてきました。ところが、マネージャーは「自業自得です」と一蹴。
電話から数分後、マネージャーが僕のもとに「念のため…」と若支配人から電話があったことと、旅館で起きていたことを教えてくれました。たしかに若支配人の自業自得ですが、「僕が断ればお客様にまで迷惑がかかってしまう。それだけは避けたい」と思い……。その日限りという条件で厨房に立つことを決意しました。
僕の意見に賛同し、数名の派遣スタッフも一緒に戻ってきてくれました。
僕は今まで培ってきた技術を存分に発揮し、無事に料理を提供することができました。宴会も無事に終わり、お客様にも料理を喜んでいただけました。
自業自得の末路
後日、若支配人の横暴を知った旅館のオーナーである父親が激怒。彼は現場責任者を解任され、旅館を追われました。
旅館側からは深く謝罪され、僕たち派遣スタッフが不当な扱いを受けていたことが正式に認められました。そして、今回の宴会での働きを評価していただき、僕は派遣社員としてではなく、旅館の直接雇用の料理人として迎えられることになりました。労働環境も大幅に改善され、今は充実した日々を送っています。
今回の件で、トラブルに直面したときには、目の前の仕事やお客様に対してどう向き合うかが、その後の人生を大きく左右するのだと感じました。自分の技術は人のために活かし、腐らずに磨き続けたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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