取引先社長から息子を紹介され…
その日、A社の社長が仕事の打ち合わせでわが社を訪れていました。打ち合わせを終え、雑談をしていたときのことです。
結婚の話題になり、私が「いい人がいれば、いつかは結婚したいと思っています」と話すと、社長から息子のB男さんを紹介したいと言われました。
「お見合いといっても、まずは気軽にランチでもしてみて」
突然のことで少し戸惑いましたが、A社の社長には日ごろからお世話になっています。会ってみるだけならと思い、後日、B男さんとランチをすることになりました。
ところが当日、待ち合わせ時間になってもB男さんは現れません。
30分ほどたって、ようやく姿を見せたB男さん。遅刻したことを軽く詫びただけで、私を見るなり少し顔をしかめました。
そして、聞こえるか聞こえないかくらいの声で、「うわー、ハズレだ」とつぶやいたのです。
あまりの失礼さに耳を疑いました。
正直、そのまま帰ろうかとも思いましたが、A社の社長から紹介してもらった手前、顔を合わせてすぐ帰るのも気が引けます。ひとまず予約していたレストランへ向かいました。
「どうせ金目当てだろ?」
しかし、食事が始まってからもB男さんの態度は変わりませんでした。
私の仕事について話してもあまり興味を示さず、自分の父親の会社や、将来自分が跡を継ぐ予定だという話ばかり。そのうえ、「君も会社をやってるらしいけど、うちとは規模が違うでしょ。うちみたいな家に嫁げるなら、かなり得だよね」と、どこか見下すような言い方までしてきたのです。
さらに、「どうせ金目当てなんだろ?」とまで言われました。
あまりに一方的な決めつけに、私も黙っていられなくなりました。
「もしかして、私の父のことは知らないの?」
そう言って、父が経営している会社の名前を伝えました。父の会社は少し前、新しい事業についてニュース番組でも取り上げられていました。
すると、B男さんの表情が一変。
「え……あの会社?」
先ほどまでの横柄な様子はどこへやら、急におとなしくなりました。
けれど、私が誰の娘なのかを知った途端に態度を変える姿を見て、「この人とは合わない」とはっきり思いました。
私が会計を済ませて帰ると…
これ以上話しても仕方がないと思い、私は食事を切り上げることにしました。
「ここは私が払いますね」
そう告げて伝票を持ち、2人分の会計を済ませました。
するとB男さんは慌てた様子で、「え、ちょっと待ってよ」と私を引き止めてきましたが、私はそのまま店をあとにしました。
その日の夜、A社の社長から「今日はどうだった?」と連絡がありました。
私は少し迷いましたが、今後も仕事上の付き合いがある相手だからこそ、ごまかさずに話したほうがいいと思い、B男さんに言われたことや当日の態度を正直に話しました。
すると社長は驚き、何度も謝ってくれました。
後日聞いたところによると、B男さんは父親からかなり厳しく注意されたそうです。将来会社を任せるつもりでいたものの、「今のままでは人の上に立つのは難しい」と言われたのだとか。
ご縁がなかったことは残念でしたが、今回の出来事を通して、結婚相手に求めたいのは肩書きや条件ではなく、人への接し方や思いやりなのだと改めて感じました。いつか、一緒にいて自然体でいられ、安心して向き合える相手と出会えたらと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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