上司からの冷たいひと言
異動先には、以前仕事でかかわったことのある上司のA男さんと、新入社員のころに仕事を教えてくれた先輩のB子さんがいました。
知っている人がいたため少し安心していたのですが、実際に異動してみると、2人の様子は以前とはどこか違っていました。
ある日、仕事でわからないことがあり、A男さんに確認しに行ったときのことです。質問すると、必要なことだけをそっけなく答えられました。
そして、その場を離れようとすると――。
「あんまり仕事なめるなよ」
突然の言葉に、僕は思わず固まりました。仕事をおろそかにしているつもりも、大きなミスをした覚えもありません。理由を尋ねても、A男さんは「別に」と言うだけ。
(僕、何かしたのかな……?)
理由がわからないまま、モヤモヤだけが残りました。
気になっていた先輩まで…
そして、もうひとり気になっていたのがB子さんでした。
B子さんは、新人時代に仕事を教えてくれた先輩です。何度も助けてもらううちに、僕はひそかに好意を抱くようになっていました。
そのため、また一緒に働けることをうれしく思っていたのですが、B子さんまで以前とは様子が違いました。
仕事の話には普通に応じてくれるものの、僕が雑談をしようとすると、どこかよそよそしく会話を切り上げてしまいます。休憩中に声をかけても、すぐにその場を離れてしまうこともありました。
(もしかして、嫌われてる……?)
A男さんに続いてB子さんにまで距離を置かれ、僕はすっかり落ち込んでしまいました。
妹のカフェで…
そんなある日、仕事帰りに、妹が経営するカフェへ立ち寄りました。妹は1年ほど前、たまたま僕の会社の近くで条件のいいテナントを見つけ、念願だったカフェをオープンしていたのです。
店が忙しそうだったため、僕もエプロンをつけて料理を運んでいると、A男さんとB子さんを含む同僚数人が入ってきました。
すると、僕の姿を見たA男さんが険しい表情に。
「お前、やっぱりここで働いてたのか?」
話を聞くと、以前にも僕が店を手伝う姿を見かけ、無断で副業をしていると思っていたのだとか。あの冷たい態度も、それが理由だったようです。
僕が事情を説明しようとした、そのとき――。
「お兄ちゃん、こっちもお願い!」
妹の声に、A男さんが固まりました。
「……お兄ちゃん?」
ところが、なぜかB子さんまで驚いた顔をしています。
まさかの勘違い
僕が、この店は妹が経営していて、忙しいときに無償で少し手伝っているだけだと説明しました。会社の規定にも違反していないことがわかり、A男さんの誤解は解けました。
そして後日、B子さんからも意外な事実を聞かされました。
以前、僕と妹が一緒にカフェにいるところを見かけ、妹を僕の彼女だと思っていたそうです。そのため、僕への気持ちをあきらめようと距離を置いていたのだとか。
「彼女がいると思ってたから……」
その言葉に驚きつつ、僕も新人時代からB子さんに好意を持っていたことを伝えました。
こうしてお互いの気持ちがわかり、その後、僕たちは付き合うことに。
A男さんにもB子さんにも嫌われていると思っていましたが、原因はどちらも妹をめぐる勘違いでした。相手の態度だけで決めつけず、きちんと話してみることも大切なのだと感じた出来事です。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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