働き始めて3カ月。家業の手伝いということで給料はもらえませんでしたが、接客などの基本的なお仕事はひと通り覚え、常連さんに顔も覚えてもらいました。
しかし気になるのがネット上の評価。賛否が分かれ、悪い評価もチラホラ……。悪い口コミには改善策を考えて、丁寧な返信をと思ったものの、義母が感情的な返信を書き込んでしまい、コメント欄はたびたび炎上してしまいます。
「口コミへの返信は、お店の評判にも関わります。私に任せてもらえませんか?」と提案しましたが、義母は「まずは店の仕事を覚えてから言いなさい」と取り合ってくれません。
厨房の義父は料理一筋で、接客や店の運営には口を出さない人で、私の提案にも興味がないようでした。
まさかのクビ宣告
悪い口コミの原因が、日によって態度がコロコロ変わる義母の感情的な接客にあるのは明らかです。私が働き始める前から、ネットには「接客が最悪」との口コミが多数……。
しかも、私を褒めるような口コミがつくと、途端に義母は不機嫌になります。常連さんと親しくしているのも気に食わないようで、私によくしてくれる常連さんへの態度はひどいものでした。
そんなある日、義母は、私が働き始めてから店の評判が落ちたと私を責めて「家族だから無給で都合が良かったけれど、もう来なくていいわ」と言いました。
さんざん無給でこき使った挙句、まさかのクビ宣告。この仕打ちには思わず笑ってしまいました。しかしむしろ、いいタイミング。無給であるにも関わらず、理不尽な文句を言われ続ける毎日に、私も限界を感じていたからです
「喜んで! ちょうど辞めようと思っていたんで♪」と義母に伝え、その日を最後に店に出るのをやめました。帰り際、厨房から出てきた義父だけが「すまなかったね」と小さく頭を下げてくれたのでした。
そんな私に義母は絶句。最後に私は、働く中でつらかったことや、接客について寄せられていた口コミを義母に伝え、店を後にしました。
店の評判はガタ落ち!
私が辞めて1カ月後、義母は「戻ってきてほしい」と泣きついてきました。私が店に出なくなってから、客足が目に見えて減ったというのです。
口コミを見てみると「接客が素敵な店員さんがいなくなったからもう行かない」「今は態度の悪い女将しかいない」「料理はおいしいのに、接客が残念」などといった投稿が目立つように……。
これで店のイメージを壊していたのが誰なのか、はっきりしました。
事情を知った義父からも「無給で働かせていたなんて信じられない!」「どう考えてもお前が悪い」と厳しく叱られたようで、義母はしぶしぶ私に謝罪しました。私が客にちやほやされるのが気に食わず、意地悪をしていたと打ち明けたのです。
とはいえ、義父に促されてようやく謝った義母のこと……。義母の接客態度や私への意地悪が改善されるとは思えず、店に戻るかしばらく悩んでいました。
そんな私に、義父から電話が入ります。追い詰められた様子の義父が口にしたのは、衝撃の事実でした。
「実はあいつ、店の金をパチンコや競馬に使っていたんだ。店の経営も苦しくて、戻ってきてほしいとは言えない。ただ、これまで働いてくれた分のお金は、なんとか工面して今日振り込んだよ」
義父はため息交じりに打ち明けてくれました。
私は店の立て直しに奔走、義母は…?
義母の接客はともかく、義父が作る料理はどれもおいしいものばかりで、義母のひどい接客があっても店が続いてきたのは、間違いなく料理の味があったからこそ。そんな店をこのまま失ってしまうのは、あまりにも惜しいと感じました。
接客態度を見直し、店の魅力をきちんと伝え直せば、まだ立て直せるはずです。
そこで私は、店の運営を手伝わせてほしいと義父に伝えました。義父も、店を立て直したいという私の思いを受け止めてくれ、今度はきちんとお給料を出すと約束してくれました。
その後、使い込みの額が想像以上だったことが決め手となり、義父母は話し合いの末に離婚。店は義父が引き継ぐ形でまとまり、義母は店の仕事からも離れました。
そして、私は店の立て直しに奔走。接客の見直しはもちろん、SNSでの集客にも力を入れ、口コミ評価も売上も着実に回復させていきました。客足が伸びた今では、アルバイトを雇えるまで経営も安定しています。
先日、義母が「また働きたい」とやって来ました。聞けば、どこでバイトを始めても、続かないとのこと。しかし、私も義父も義母と一緒に働く気にはなれません。きっぱりお断りして、義母には帰ってもらいました。
これからも、義父の作るおいしい料理をたくさんの人に届けるため、尽力していくつもりです。
◇ ◇ ◇
義父のすばらしい料理も、義母の接客ひとつで台無しになっていた今回のお話。お客さまの声に目を向けず、店を思って差し伸べられた嫁の手さえ払いのけてしまった義母の姿には、残念な気持ちになりますね。
人の意見に耳を貸さず、自分を省みることをやめてしまえば、状況を好転させるチャンスは失われてしまいます。他者の声に耳を傾け、謙虚に自分を見つめ直すこと——それは、仕事でも人間関係でも、大切なものを守っていくために欠かせない姿勢ではないでしょうか。
耳の痛い言葉でも、まずは一度受け止めてみる。そんな小さな心がけから始めてみたいですね。
【取材時期:2026年8月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。