休日になると「急な仕事が入った」と出かけ、娘との約束までキャンセルすることが増えた夫。帰宅時間も遅くなり、以前は無造作に置いていたスマートフォンを、家の中でも肌身離さず持ち歩くようになりました。
そんな夫に違和感を覚えていたある日、私は偶然、見覚えのある女性と親しげに歩く夫の姿を目撃してしまったのです。
夫の隣にいた見覚えのある女性
夫と一緒に歩いていたのは、夫の会社で秘書として働いていた若い女性でした。
「今日は仕事だから」と言って出かけたはずの夫が、その女性と休日の街を並んで歩いていたのです。仕事上の付き合いにも見えず、2人の距離の近さを目の当たりにした私は、その場でしばらく動けなくなりました。
それまで抱いていた違和感が一気につながったような気がした私は、その日の夜、帰宅した夫に尋ねました。
「あなた、自分の秘書と付き合ってるの?」
しばらく黙っていましたが、やがて観念したように不倫関係を認めた夫。さらに夫は、「いずれ彼女と一緒になりたいと思っている。慰謝料も養育費も払うから、娘を連れて出て行ってほしい」とまで言ったのです。
あまりにも身勝手な言葉に、私は何も言い返せませんでした。
長年一緒に暮らしてきた夫が、私と娘との生活よりも不倫相手を選んだ――その事実を受け止めきれず、その晩はほとんど眠れませんでした。
自宅に不倫相手を連れてきた夫に離婚を決意
夫の態度は、その後さらに悪化。そしてある日、夫は私に何の相談もなく、不倫相手の女性を自宅へ連れてきたのです。
突然のことに驚いていると、彼女は私を上から下まで見るような態度を取り、笑いながら言いました。
「悪いけど、オバサンは出て行ってもらえます?」
その言葉を聞いた瞬間、わずかに残っていた夫への未練が消えていきました。
とはいえ、娘を連れてすぐに家を出るわけにはいきません。これからの生活や娘の学校、離婚後の養育費など、考えなければならないことが山ほどあったからです。
私は感情に任せて行動するのではなく、夫の不倫について記録を残し、専門家にも相談しました。そのうえで夫と離婚について話し合い、娘の親権や養育費、慰謝料などについて取り決めました。
すべてが落ち着いてから、私は娘と2人で新しい生活を始めたのです。
離婚後の私を支えてくれた友人たち
新生活を始めたばかりのころは、不安でいっぱいでした。
これから娘を育てながら、どうやって生活を立て直せばいいのか――ひとりになると、そんなことばかり考えていました。
そんな私を支えてくれたのが、昔から付き合いのある友人たち。
「親戚が大家をしている部屋があるから、空きがあるか聞いてみようか?」
「子どものことで困ったら遠慮しないで頼って」
「忙しい日はうちに来て! 一緒にごはんを食べようよ」
友人たちは、それぞれ自分にできる方法で私たち親子を助けてくれました。離婚して失ったものばかりを考えていた私にとって、その存在は大きな支えになりました。
そして、少しずつ気持ちが落ち着いてきたころ、私は以前から好きだったイラストを再び描き始めたのです。
趣味だったイラストが仕事に
最初はイラストを仕事にしようなどとは考えていませんでした。離婚後の慌ただしい毎日のなかで気持ちを整理するように、日常で起きた出来事を4コマイラストにしてSNSへ投稿していただけです。
「ママの絵、もっといろんな人に見てもらえるといいね!」
そんな娘の言葉がうれしくて、私は時間を見つけては投稿を続けました。
すぐに大勢の人から注目されたわけではありません。それでも少しずつ見てくれる人が増え、やがてイラスト制作について問い合わせをもらうようになりました。
最初は小さな依頼でしたが、一つひとつ仕事を続けるうちに依頼の数も増加。趣味として続けてきたことが収入につながったことで、私は少しずつ自信を取り戻していきました。
駅前で偶然の再会
離婚から2年ほど経ったころには、私はイラストの仕事だけで、娘との生活を支えられるようになっていました。決してぜいたくな暮らしではありませんでしたが、小さなマンションで娘と笑い合って過ごす毎日は、以前よりずっと穏やかでした。
そんなある日、買い物を終えて駅前を歩いていると、偶然元夫と再会。以前より少し疲れた様子の元夫は、私を見るなり声をかけてきました。
「元気そうだな」
私は、「うん。娘と2人で元気に暮らしてるよ」とだけ答えました。話したのはたったそれだけでした。
その後、共通の知人から聞いた話では、元夫の会社は以前より経営が厳しくなっていたそう。また、不倫相手だった秘書の女性とも、すでに別れていると聞きました。
かつて夫から不倫を告白された夜、私は自分の人生がすべて壊れてしまったように感じていました。しかし、今の私は娘と笑って暮らし、自分の好きだったことを仕事にしています。
離婚そのものが私を幸せにしてくれたわけではありません。あのとき周囲を頼りながら生活を立て直し、自分にできることを一つずつ続けてきたからこそ、今の暮らしにたどり着けたのだと思います。
これからも娘や友人たちとの時間を大切にしながら、自分なりの幸せを少しずつ積み重ねていきたいです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。