学歴を理由に兄を見下す婚約者
私は客室乗務員として働いています。婚約者のA夫は、周囲に「自慢の婚約者なんだ」と話すことがありました。当時の私は、そんなふうに言ってもらえることを素直にうれしく感じていました。
一方、私の兄は高校へ進学せず、中学卒業後から働いてきた人です。兄が中学校を卒業するころ、父が体調を崩して以前のように働けなくなり、わが家には経済的な余裕がありませんでした。兄は高校進学を諦め、「少しでも家計を助けたい」と働き始めたそうです。当時まだ小学生だった私は、兄がどれほど悩んで決めたことなのか、後になって知りました。
それから数年後、私が15歳、兄が22歳のころに両親を相次いで亡くしました。その後は親族の助けも受けながら、すでに社会人だった兄が生活費や学費の多くを支えてくれました。
兄は自分が高校へ進学できなかったからこそ、「お前は行きたい学校に行けばいい」と私の背中を押してくれました。私が大学を卒業できたのも、兄の支えがあったからです。その後、兄は長年働いて身につけた経験を生かし、自分で事業を始めました。
そんな兄のことを、私はずっと尊敬していました。ところが、A夫は兄が中卒だと知ると、あからさまに嫌な顔をしました。
「君は大学まで出てCAになったのに、お義兄さんは中卒なんだよね?」
私は、兄が高校へ進学しなかった事情や、両親を亡くした後に私を支えてくれたことを説明しました。
しかしA夫は、「自営業って言っても、そんなに大きな会社じゃないんでしょ?」と、兄をあからさまに見下しているようでした。さらに、「親族に中卒がいるって知られたら、俺まで変な目で見られる」とまで言ったのです。
私は我慢できなくなり、「兄をそんなふうに言う人とは結婚できない」と伝えました。すると、A夫は慌てたように、「悪かった。言い過ぎた。これからは学歴だけで人を判断しないようにする」と謝りました。
私は腹立たしさを感じながらも、本当に考えを改めてくれるのならと、その言葉を信じることにしました。
結婚式当日、兄がいない理由
それから半年ほどたち、結婚式当日を迎えました。支度を終えた私は、親族控室に兄の姿が見えないことに気付きました。A夫に尋ねると、「お義兄さんなら来ないよ。自分が出席すると妹に恥をかかせるからって」と説明されたのです。
しかし、私はすぐに違和感を覚えました。兄がそんな理由で突然欠席するとは思えなかったからです。
慌てて電話すると、兄は「いや、会場には行ったよ。今、出てきたところだけど」と言いました。話を聞くと、兄は受付へ向かう途中でA夫に呼び止められたそうです。そしてA夫から、「会社の人たちも来ているので、今日は帰ってもらえませんか」と言われたというのです。
兄が理由を尋ねると、A夫はさらに、「高校も出ていない人が親族席にいると、こっちまでどう見られるかわからないでしょう」と言ったそうです。
以前の謝罪は何だったのだろうと、私は怒りが込み上げました。しかも、私には兄が自分から欠席したように説明していたのです。私は兄に、「もう帰らないで。会場に戻ってきて」と頼みました。A夫の言い分をそのまま通すつもりはありませんでした。
兄を追い返した婚約者が知った事実
兄が会場へ戻ってくると、私は控室を出て兄を迎えに行きました。ところが、私たちが一緒に会場へ戻ろうとしたところで、A夫と鉢合わせしたのです。
A夫は兄の姿を見るなり、表情を変えました。
「帰ってくださいって言いましたよね?」
私は思わずA夫を見ました。兄は落ち着いた様子で、「妹に戻ってきてほしいと言われたから来た」と答えました。するとA夫は周囲を気にしながら、「今さら戻ってこられても困ります。帰ってください」と言ったのです。
私は、兄から聞いた話が本当だったのだと、その場で改めて突きつけられました。
するとそのとき、近くを通りかかったA夫の上司が兄の姿に気付きました。
「社長、こんなところでお会いするとは」
そう言って、A夫の上司は兄に丁寧に頭を下げました。
「……社長?」
A夫は、何を言われたのかわからないような顔で兄と上司を見比べていました。実は兄は、長年続けてきた事業を少しずつ大きくし、現在は会社を経営しています。しかも、その会社はA夫の勤務先とも継続的に取引がありました。後から兄に聞くと、A夫の上司とは仕事を通じて何度も顔を合わせていたそうです。
A夫はその取引に直接関わる部署ではなく、兄とも面識がなかったため、取引先企業の代表だとは知らなかったようです。A夫は顔色を変え、言葉を失っていました。
私はそんなA夫の姿を見ながら、学歴だけで兄を見下し、私に隠れて式から追い返したA夫への怒りが改めて込み上げました。
結婚式を終えた後に下した決断
私は気持ちが追いつかないまま、それでも招待した方々にこれ以上混乱を与えたくないと思い、予定されていた式と披露宴を最後まで終えることにしました。
ただ、この先A夫と夫婦になる気持ちは、すでになくなっていました。式と披露宴が終わり、参列者を見送った後、私はA夫に話しました。
「今日のこと、なかったことにはできない。私はあなたとは結婚できない」
A夫は驚き、「式まで挙げたのに、今さら何を言ってるんだ」と慌てました。
私たちは式の後に2人で婚姻届を提出する予定でしたが、私はA夫に、提出するつもりはないと伝えました。その後、式にかかった費用の負担や今後の対応については、両家も交えて話し合うことになりました。
今回の出来事を通して、学歴だけで人の価値を決めつけたり、肩書きによって態度を変えたりすることの怖さを感じました。そして、私にとって結婚相手に求めていたのは肩書きや条件ではなく、自分の大切な人にも敬意を持って接してくれることだったのだと気付きました。
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学歴や肩書きは、その人が歩んできた背景や人柄まで表すものではありません。今回の出来事では、兄がどんな立場の人なのかを知った途端に態度を変えたA夫の姿から、相手の条件だけを見て接し方を変えることの危うさが浮かび上がりました。結婚を前にしたからこそ、自分だけでなく大切な家族にも敬意を持って接してくれる相手なのかを見つめ直すきっかけになった出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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