玄関のモニターに映っていたのは義母でした。
義母は以前から、会うたびに「嫁とはこうあるべき」と口を出してくる人でした。夫から聞いた話では、義母自身も若いころに姑から厳しく家事を仕込まれたそうです。
だからといって、私まで同じ目に遭わなければならない理由はありません。
しかし、その日を境に義母の言動はさらにエスカレート。そして頼りたかった夫からも、思いもよらないかたちで裏切られることになったのです……。
義母との“修行”の日々
当然のように家へ上がり込んできた義母は、部屋を見回すなり、私にこう言ったのです。
「せっかく時間ができたんだから、完璧な嫁になれるように私が教育してあげる」
私は耳を疑いました。
妊娠後期に入ってからはおなかもかなり大きくなり、少し動くだけでも疲れやすくなっていました。産休に入ったのも、出産に備えて少しでも体を休めたかったからです。
その日は何とかやり過ごしましたが、それからというもの義母は何度もわが家へやって来るように……。掃除の仕方や洗濯物の干し方、料理の手順まで細かく口を出され、少しでも義母のやり方と違えば注意されました。
「そんなやり方じゃダメよ」
「母親になるんだから、もっとしっかりしなさい」
そう言われ続け、私は心身ともに疲れていきました。そしてある日、そんな私の疲れ切った顔を見た義母は、なぜか満足そうに「そういう顔が見たかったのよ」と言って笑いました。
そして冗談めかした口調で、信じられない言葉を続けたのです。
「嫁いびりって、楽しいわね♡」
私は思わず義母の顔を見つめました。たとえ冗談だったとしても、妊娠中の私に向ける言葉ではありません。
義母が帰ったあと、夫にこれまでのことを打ち明けた私。
「お義母さんが来るたびにつらい。あなたから少し言ってくれない?」
しかし、夫から返ってきたのは「悪いけど、嫁姑問題にかまってる余裕ないんだよ」という言葉でした。
そして話題を変えるかのような軽い口調で、「そういえば最近、ちょっと老けたんじゃない? 会社の若い子たちはもっと身なりに気を使ってるけど」と言ってきたのです。
妊娠中の妻にそんな言葉をぶつける夫に、私は何も言えなくなりました。義母だけでなく、夫まで私の味方ではなかったのです。
夫が長期出張を志願した理由
それから夫婦の会話は減り、ささいなことで言い争うことも増えていきました。
そんなある日、夫から突然「しばらく長期出張に行くことになった」と告げられたのです。詳しく話を聞くと、会社から一方的に命じられたわけではなく、夫自身が希望したとのこと。
出産を控えた妻を残して、なぜわざわざ長期出張を希望したのか――「どうして今なの?」と尋ねても、夫は「仕事なんだから仕方ないだろ」「出世のために自分から志願したんだ」と繰り返すばかり。
どうしても納得できず、夫への疑念を拭えなくなっていった私。その後、夫の言動を振り返るうちに、以前から特定の女性の名前が会話に出ていたことを思い出しました。
ひとりで抱え込まないように、私は兄にも相談。そして負担のない範囲で夫の様子を確かめることにしたのです。
そして体調が比較的安定していた日に、無理のない範囲で夫の滞在先を訪ねました。そこで私は、目を疑うような光景を目撃したのです。
夫は、女性と腕を組んで歩いていました。その女性は、以前夫が話していた会社の同僚のようでした。
2人の距離は、ただの同僚とは思えない近さ。私は動揺しながらも少し離れたところから様子を見ていました。
2人は食事を終えると、そのままそろってラブホテルへ入っていきました。その光景を目にした瞬間、私の中で何かが切れました。
義母から何を言われても耐え、夫にも助けを求め続けてきました。しかし、その夫まで私を裏切っていたのです。
私は兄夫婦をはじめとする信頼できる人たちに事情を話し、今後について相談。そして専門家にも相談したうえで、離婚に向けて動くことを決意したのです。
家を出る決意
夫と一緒にいるだけでもストレスになっていたため、私はしばらく兄夫婦の家にお世話になることに。
私が兄夫婦の家に向かうその日も、事前の連絡もなくわが家へやって来た義母。玄関に置かれたキャリーバッグを見た義母は、驚いた様子で「ちょっと、どこに行くの?」と尋ねてきました。
「兄の家です。しばらくお世話になります」と私が答えると、義母はあきれたような表情を浮かべました。
「出産前なのに家を出るなんて、何を考えてるの?」
私は少し迷いましたが、もう隠す必要はないと思い、正直に「夫が出張先で不倫していました。私、自分の目で見ました」と答えました。
義母は一瞬、言葉を失っていましたが、すぐに顔をしかめました。
「だからって家を出るの? 夫の不倫くらい、妻なら我慢しないと」
その言葉を聞いた瞬間、これまで抑えていた感情が一気にあふれそうになった私。それでも、平静を装って、淡々と言葉を並べました。
「お義母さんは、妊娠中の私のところに何度も押しかけてきて、『嫁いびりが楽しい』って言いましたよね」
「夫に助けを求めても突き放されました。それどころか不倫までしていました。それでも私だけが我慢しなきゃいけないんですか?」
すると、そのとき――玄関の外から聞き覚えのある声が。そこには義父が立っていたのです。
私の味方になってくれたのは…
実はその数日前、私は義父に連絡していました。義母から受けてきた言動や、夫の不倫を知ってしまったこと、離婚も考えていることをすべて話していたのです。
私の話を聞いたうえで、「一度きちんと話をしよう」と言ってくれた義父。兄夫婦の家に向かう日を伝えたところ、「妊婦さんに重いものを持たせるわけにはいかない」と荷物運びを買って出てくれ、わが家に来てくれることになっていたのです。
義父は義母を見ると、厳しい表情で言いました。
「妊娠中の人に何をしてるんだ」
義母は何も答えませんでした。
「過去に守ってやれなかったことはすまなかった。だが、自分がつらい思いをしたからって、同じことをお嫁さんにしていい理由にはならないだろ」
義母はしばらく黙っていましたが、最後には小さな声で、「……ごめんなさい」と謝りました。
その日は義父に送ってもらい、私は無事に兄夫婦の家に到着。その日のうちに、義父は出張先の夫にも連絡を取り、今後についてきちんと話し合えるよう場を設けてくれました。
後日の話し合いでは、まず義父が夫に向かってこう言いました。
「家庭を放り出して、自分が何をしたのかわかってるのか。自分のしたことに責任を持ちなさい」
うつむいたまま、ほとんど何も言い返さなかった夫。私に対して謝罪の言葉もありませんでした。
こんな姿勢の夫を見て、私の迷いも消えました。夫とはこれ以上、夫婦関係を続けることはできない――はっきりとそう思えたのです。
その後、私は弁護士にも相談しながら離婚の手続きを進め、不貞行為についての慰謝料や、子どもが生まれたあとの養育費について夫と話し合いました。
夫の勤務先には私から特に報告はしませんでした。長期出張先とはいえ、人目のあるところで男女関係をにおわせていたのですから、私が言わずとも何かしらお咎めはあるだろうと思っていたのです。
不倫行為が発覚したのかどうかはわかりませんが、夫はその後、さらに遠い地方での勤務になったそうです。不倫相手との関係も、ほどなくして終わったと人づてに聞きました。
周囲の人々に支えられながら新しい生活へ
もともとは離婚成立まで、兄夫婦の家に滞在する予定だった私。しかし、兄夫婦の厚意で、そのまま出産まで穏やかに過ごすことにしました。
そしてしばらくして、無事に娘を出産。兄夫婦にも助けてもらいながら近隣の部屋を探し、少しずつ仕事と子育てを両立できる生活を整えていきました。
出産後はすぐに仕事へ戻ることはせず、産後休業や育児のための休業期間を経て、生活が落ち着いてから職場へ復帰することに。理解のある会社だったため、今はリモートワークを取り入れながら無理なく働いています。
元義母とは必要以上に関わらないようになりました。一方、あのとき私の話を聞き、味方になってくれた元義父とは、その後も交流を続けています。
夫や義母との出来事を思い出すと、今でも複雑な気持ちになることがあります。それでも、あのとき「我慢するしかない」と諦めず、周囲に助けを求めてよかったと思っています。
これからは娘との生活を大切にしながら、私自身も前を向いて歩いていきたいです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています