義母の「嫁教育」はただのいびりだった
結婚して間もないころから、私は義母との関係に悩まされていました。
義母は夫の留守中を狙うように、何の連絡もなく自宅へやってきました。そして部屋を見回しては、掃除の仕方や冷蔵庫の収納方法にまで口を出してくるのです。
「こんな嫁をもらって、息子がかわいそう」
そんな嫌みを言われたことも、一度や二度ではありませんでした。
義母としては「嫁教育」のつもりだったのかもしれません。しかし、私には単なる嫁いびりにしか思えませんでした。
私が少しでも反論すると、「嫁のくせに口答えするなんて!」と怒り出す義母。しかも厄介だったのは、夫や義父の前ではそうした態度をほとんど見せなかったことです。
ある日、夫と一緒に義実家を訪ねたときのこと――。
義父が、「プリンをたくさんもらったから、みんなで食べよう」と声をかけてくれました。プリンが大好物だった私は喜んだのですが、義母から「ちょっと台所を手伝って」と呼ばれ、席を立つことに。
すると義母は、夫や義父に聞こえない程度の小さな声で、また私への嫌みを言い始めたのです。いつものことだと思って聞き流していましたが、その日は義母があまりにも必死だったため、私は思わず苦笑してしまいました。
それが気に障ったのでしょう。義母は突然、声を荒らげました。
「こんな生意気な嫁なんていらない! 息子と今すぐ離婚しろ!」
そして義母は、用意していた離婚届を私の前に突きつけてきたのです。そこまでされるとは思っていなかったため、さすがに驚きました。
しかし、興奮している義母と言い争っても仕方がありません。私は何も言わずに離婚届を受け取り、そのままバッグへしまいました。
もちろん、義母には私たち夫婦を離婚させる権限などありません。それでも私は、その場で離婚届を返しませんでした。
実はそのとき、あることを思いついていたのです。
私が義母に見せた「もう1枚の離婚届」
後日、またも夫が不在の時間帯にわが家へやってきた義母。そして玄関に入るなり、「まだ離婚届を出していないの?」と私に詰め寄ってきたのです。
私は言い返さず、用意していた1枚の書類を取り出しました。
「離婚届なら、こちらにあります! 記入済みですよ」
そう言って私が見せた書類を見た瞬間、義母の表情が変わりました。そこには、義父の署名があったのです。
「何なのよ、これ!?」と声を荒らげた義母。
そのとき、別室にいた夫が姿を現しました。実は夫は不在だったわけではありません。
義母ときちんと話をするため、あえて私ひとりで対応しているように見せていたのです。
夫は義母を見ながら、静かに言いました。
「父さん、本気で母さんとの離婚を考えてるよ」
義母は言葉を失っていました。
私が見せたのは、私たち夫婦の離婚届ではありませんでした。義母との離婚を考えていた義父が、自分の意思で署名して用意したものだったのです。
私への嫁いびりを知った夫と義父
義母は、それまで私への嫁いびりを夫や義父の前ではほとんど見せませんでした。
そのため、私が相談し始めたころ、夫は「母さんがそんなことするかな……」と戸惑っていました。
私も夫にとって実の母親を悪く言いたいわけではありませんでした。それでも、義母の訪問や言われたことについて何度も話しているうちに、夫も少しずつ「何かおかしい」と感じるようになったようです。
さらに義父も、義実家を訪れた私がひとりで泣いているところを偶然見かけたことがありました。心配した義父から事情を聞かれ、私はそれまで義母から言われてきたことを打ち明けました。
最初は半信半疑だった夫と義父も、その後、義母の言動を注意して見るように。そして私が話していた内容と義母の行動が重なるにつれ、2人とも私の話を信じてくれるようになったのです。
そんななか、私に離婚届まで突きつけてきた義母。義母から渡された離婚届を夫と義父に見せると、義父はしばらく黙り込んでいました。
そして、「人の家庭を壊そうとする前に、自分の夫婦関係について考えたほうがいい」と言ったのです。
義父が明かした本音
義父は以前から、義母との結婚生活について思うところがあったそう。
家事のやり方や家計のことだけでなく、友人との付き合いにまで細かく口を出されることがあり、息苦しさを感じていたようです。それでも長年夫婦として暮らしてきたこともあり、義父は我慢を続けていました。
しかし、義母の言動が私にまで向けられていたことを知り、「自分が黙っていたことで、今度は息子夫婦まで巻き込んでしまった」と考えるようになったそうです。
そして義父は、これまでの夫婦関係を今後も続けていけるのか真剣に考えた末、義母に離婚を申し出ました。
もちろん、義母はすぐには納得しませんでした。義父は感情的な言い争いを避けるために弁護士へ相談し、その後は必要に応じて専門家を交えながら話し合いを続けたそうです。
離婚届は夫婦双方の合意がなければ協議離婚として提出できないため、最初に義父が用意した書類だけで離婚が成立したわけではありません。話し合いにはかなり時間がかかりましたが、最終的には双方が離婚に合意し、正式に義父母の離婚が成立しました。
離婚後、実家へ戻った義母。義父も新しい生活を始め、以前より穏やかに過ごしているようでした。
私たちも夫婦間で話し合い、義母との距離を置くことに。私も、義母から突然連絡が来るのではないかと不安になることがなくなり、ようやく夫との生活を落ち着いて楽しめるようになりました。
今回の出来事で強く感じたのは、年齢が上だから、あるいは家族だからといって、相手をぞんざいに扱っていいわけではないということでした。家族だからこそ、お互いへの敬意や適切な距離感が必要だったのでしょう。
あのとき義母から渡された1枚の離婚届は、結果的に私たち夫婦を別れさせるものにはなりませんでした。むしろ、それまで表面上は保たれていた義両親の夫婦関係を見直す、大きなきっかけになったのだと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています