不倫した夫から身勝手な離婚要求
夫は以前から、家事や娘の学校行事を私に任せがちでした。それでも家族として暮らしてきましたが、最近は出張や飲み会を理由に家を空けることが増え、家にいてもスマートフォンばかり気にするようになっていました。
不審に思って問い詰めると、夫は不倫を認めました。謝るどころか、「一緒になりたい人がいる。早く離婚してくれ」と言い出したのです。
腹は立ちました。ただ、引き留めたいとは思いませんでした。家のことを任され続けるうちに、私の気持ちも少しずつ離れていたのだと思います。
「わかった。離婚には応じる。でも、お金のことはきちんと話し合いたい」
そう答えると、夫は離婚に応じてもらえたことにほっとした様子でした。
私たちは財産分与などについて話し合いを進めましたが、慰謝料については折り合いがつきませんでした。
それでも私は、夫との婚姻関係を続けながら交渉することに、精神的な負担を感じていました。お金の問題を曖昧にするつもりはありませんでしたが、離婚そのものは早く成立させたいと思うようになったのです。
そこで、弁護士に相談し、慰謝料については離婚後も引き続き協議することを夫と書面で確認しました。その上で、離婚届を提出しました。
娘が結婚式に呼びたかったのは
離婚して半年ほどたったころ、娘から結婚式の招待状が届きました。離婚後も娘とは連絡を取り合っていましたが、私は結婚式への出席にはためらいがありました。元夫や親戚と顔を合わせて、娘に気をつかわせるのではないかと思ったのです。
返信する前に電話で相談すると、娘は「どうして? ママには来てほしいに決まってるでしょ」と言いました。
「でも、お父さんとは離婚したし、私が母親として出席していいのかなと思って……」
すると、娘ははっきり答えてくれました。
「育ててくれたのはママだよ。離婚したからって、私のお母さんじゃなくなるわけじゃないでしょ」
さらに娘は、父親を式に招待していないことも打ち明けました。理由は不倫だけではありませんでした。元夫は娘の婚約者にお金を貸してほしいと頼み、断られると、娘にまで生活費の一部を援助してほしいと求めていたそうです。娘はすでに父親に、式には来ないでほしいと伝えていました。
「私たちの結婚を祝うより、お金の話ばかりなんだもの。今は距離を置きたい。私は、ママに来てほしいの」
そこまで考えて決めていたとは知らず、胸が詰まりました。私は娘の気持ちを受け取り、出席することにしました。
「父親だから」で済ませようとした元夫
結婚式当日、私が式場に着くと、入口付近に元夫がいました。娘がお金のことで父親と距離を置く前に、式の日時と場所は伝えていたそうです。元夫は私を見るなり、「どうしてお前が来て、実の父親の俺が出られないんだ」と詰め寄ってきました。
入口で言い争うわけにはいかず、私はスタッフに事情を説明し、元夫とともに入口から離れた場所へ移動しました。その後、話を聞いた娘も、自分から帰ってほしいと伝えるためにやって来たのです。
「来ないでって伝えたよね」
娘が静かに言うと、元夫は「俺は実の父親だぞ」と激怒しました。しかし、娘は引きませんでした。
「私や私の婚約者にお金を借りようとしたよね。私たちがどんな気持ちになったか、考えた?」
元夫は「ちょっと助けてくれと言っただけだ」と弁解しましたが、娘は首を横に振りました。
「今日は私たちの結婚式なの。帰ってください」
助けを求めるように私を見た元夫に、私も「娘が自分で決めたことよ。あなたの出席を認めるよう、私から娘に頼むつもりはないわ」と答えました。
すると元夫は、今度は私への慰謝料の話を持ち出しました。交際相手との生活で出費が重なり、借金もあるから、請求を取り下げてほしいと言うのです。
娘の晴れの日にまで、自分のお金の都合を優先する。その姿を見て、もう元夫の都合に合わせる必要はないと、改めて思いました。
「その話は弁護士を通して。今日は娘を祝うために来たの」
私たちが応じないとわかると、元夫はようやく帰っていきました。その後、式は予定通りおこなわれ、私は娘の晴れ姿を見届けることができました。
慰謝料についても、後日、弁護士を通じた話し合いで金額や支払い方法が決まり、元夫からの支払いが始まりました。
夫との関係を終えても残ったもの
離婚を決めたとき、私は夫だけでなく、娘とのつながりまで失うのではないかと不安に思っていました。けれど娘にとっては、一緒に過ごした20年が、私を「ママ」と呼ぶ理由だったのです。私も娘を大切に思う気持ちを、遠慮せず伝えていいのだと感じました。
また、離婚に応じることと、夫のしたことを何もなかったことにするのは別でした。弁護士に相談し、自分の希望を伝えられたことで、ようやく結婚生活に区切りをつけられた気がします。
今も娘とは、近況を話したり、食事をしたりしています。これからは元夫の都合に振り回されず、娘との時間も、自分自身の暮らしも大切にしていきたいと思っています。
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親という立場だけで、子どもからの信頼が保たれるわけではありません。大切な日にそばにいてほしいという気持ちは、日々どのように向き合ってきたかの積み重ねから生まれるのでしょう。夫婦としての関係が終わっても、育んできた母娘のつながりまで失われるわけではないことが伝わる体験談でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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