親族の集まりはいつも私が段取り
私は63歳。夫とは結婚して30年以上になります。夫の親族は比較的仲がよく、年に何度か、義母や夫のきょうだい、叔父叔母たちが集まって食事をする機会がありました。人数はそのときによって違いますが、多いときには10人を超えることもあります。
まず義母が暮らす義実家に集まり、ひとしきり近況を話してから、昼食の時間に合わせて予約した店へみんなで出かけるのが恒例でした。
結婚したばかりのころは義母が中心になっていましたが、年齢を重ねるにつれ、
「あなた、店を探しておいてくれる?」
「Aさんたちにも日にちを聞いてくれない?」
と、私に頼むことが増えていきました。気付けばここ十数年は、その都度頼まれなくても、私が店探しから予約まで進めるのが当たり前になっていました。
候補日をいくつか出して親戚に連絡し、人数を確認して店を予約。店が決まると義母や夫に伝え、当日は義実家からみんなで店へ向かうのがいつもの流れでした。
高齢の叔父には座敷ではなく椅子席がいいか、子ども連れには子ども用の料理が必要かなども確認していました。直前に人数が変われば店へ連絡し、当日は開始時間や場所を親戚に再度伝えることも。大変ではありましたが、「あなたに任せておけば安心ね」と言われるとうれしく、私も家族の一員として役に立てているのだと思っていました。
今回は珍しく義母が先に日程を決め、親戚に義実家への集合日時を伝えていました。私も夫から日程を聞いていました。
そんなある日、義母から電話がありました。次の親族の集まりについてだと思い、「そろそろお店を探しましょうか?」と尋ねると、義母は少し言いにくそうにした後、こう言ったのです。
「今回はあなた、来なくていいわ」
私は「え?」と思わず聞き返しました。
すると義母は、「今回は家族だけで集まりたいの。あなたは息子のお嫁さんでしょう? 私にとっては、本当の家族じゃないのよ」と言いました。
義母の言葉に絶句
結婚して30年以上。今さら「家族ではない」と言われるとは思っておらず、私は言葉を失いました。しかも私は、これまで何度も親族の集まりを取りまとめてきました。しかし、そこで無理に参加させてほしいと言う気にもなれませんでした。
私は、「わかりました。では今回は行きませんね」とだけ答えました。義母は、「そうしてちょうだい」と、どこかほっとしたような声でした。
電話を切った後、夫にも「お義母さんから、今回は家族だけで集まりたいから私は来なくていいって言われたよ」と話しました。夫は驚いていましたが、「母さん、なんでそんな言い方するんだろうな」と言うだけ。私は、「まあ、来なくていいと言われたんだから、今回はゆっくりするよ」と答えました。
いつもなら、集まりが近づくと、私のスマートフォンには親戚とのやりとりがずらりと並んでいました。
「何日はどうですか?」
「何人で参加しますか?」
「食べられない物はありませんか?」
そんな連絡を一切しなくていいのは、少し不思議な感覚でした。ただ、久しぶりに何も気にせず過ごせることに、少しほっとしている自分もいました。
当日、義母から「店はどこなの!?」
親族の集まり当日、私は夫を送り出し、家でのんびり過ごしていました。ところが、昼前に義母から電話がかかってきました。
「ねえ、今日のお店ってどこなの!?」
義母は、私がいつも通り店を予約し、店名や時間を夫に伝えてあると思っていたそうです。ところが、昼食に出かけようとして夫に尋ねても、予約先がわからず、私に電話をかけてきたのでした。
私は、「今回は何も予約していませんよ」と答えました。電話の向こうが静かになりました。私が、家族だけの集まりなので手配も義母たちで進めるものと思っていたと説明すると、義母は「でも、いつもあなたがやってるじゃない!」と声を上げました。
「私は家族じゃないんですよね? 集まりには来なくていいけれど、準備だけは私がするということですか?」
義母は何も答えませんでした。電話を代わった夫も、義母が予約していると思い込み、確認していなかったと話しました。親戚たちも、いつものように義実家へ行けば、そこから予約した店へ案内されるものと思っていたそうで、店が決まっていないと知って戸惑っていたそうです。
義母たちは急いで近くの飲食店に問い合わせましたが、昼どきに10人以上がまとまって入れる店はすぐには見つからず、結局、数人ずつに分かれて別々の店で食事をしたと聞きました。
帰宅した夫は、店探しや人数の調整まで私に任せきりだったことを認め、謝りました。
数日後には義母からも電話があり、当日の店探しで苦労して、これまで私がしてきた手配の大変さを感じたと話しました。そして、私を家族ではないと言ったことを謝ったのです。
私は、自分なりに家族のためと思って続けてきたことを伝えました。
「でも、『家族じゃない』と言われてまで、家族の集まりを準備するのは違うと思ったんです」
義母はしばらく黙った後、もう一度「本当にごめんなさい」と謝りました。
まとめ
それ以来、親族で集まるときのやり方も変わりました。日にちの確認は夫、店探しは義姉、人数の取りまとめは別の親戚というように、役割を分担することになったのです。私も参加するときには手伝いますが、以前のように最初から最後までひとりで担当することはなくなりました。
思えば私は長年、「私がやったほうが早いから」と自然に引き受け続けていました。そうした役割が固定されるうちに、周囲にとっても、いつの間にか「私がやって当然」になっていたのかもしれません。
「家族ではない」と言われたことは今でも少し寂しく感じます。ただ、取りまとめ役から一度離れてみて、私自身も長年どれだけ多くのことを引き受けていたのか、初めて気付きました。そういう意味では、よい機会だったのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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