共働きを否定する義母
ある日、家族で義実家を訪れたときのこと。私たちが到着すると、義母は待ち構えていたかのように話しかけてきました。
「あなた、まだ仕事を辞めてないの?」
「家事も育児も中途半端になるくらいなら、仕事なんて辞めたらいいのに!」
義母は以前から、家事や育児は女性が中心になって担うべきだと考えていたようで、私が働き続けていることをよく思っていませんでした。
私たち夫婦は話し合いのうえで家事や育児を分担していたのですが、義母にとっては、息子が家事をすること自体が不満だったようです。
夫は私が義母に嫌みを言われていても、黙って聞いているだけでした。
帰りの車の中で、夫は「母さんのことで嫌な思いをさせてごめんな」と謝ってくれました。しかし、私が「できれば、あの場でフォローしてほしかった」と伝えると、夫は一瞬面倒くさそうな顔をしたあと、こう答えたのです。
「母さんは昔の考え方だからさ。俺はお前の気持ち、ちゃんとわかってるから。そんなに怒るなよ」
夫が私の考えを理解してくれているのなら、それでいいのかもしれない。そう自分に言い聞かせ、そのときはそれ以上追及しませんでした。
手作りを強要し始めた夫
ところが、それからしばらくすると、夫の態度が少しずつ変わり始めました。
きっかけは、夫が職場の上司から娘へのプレゼントをもらってきたこと。上司の奥さんが趣味で手芸をしているそうで、娘のために巾着袋と髪飾りを作ってくれたのです。
どちらも丁寧に仕上げられていて、私も素敵なプレゼントだと思いました。しかし、夫はそれを見て、突然こんなことを言い出したのです。
「やっぱり手作りっていいよな! 愛情がこもってる感じがするし。お前も手芸とか始めたら?」
最初は単なる提案だと思い、「時間ができたら挑戦してみたいね」と返しました。ところが、夫は不満そうな顔をしたのです。
「時間ができたらって……。娘のためなんだから、時間くらい作れよ。既製品ばっかりじゃかわいそうだろ」
私は驚きました。これまで夫は、娘の服や持ち物について文句を言ったことなどなかったからです。
さらに数日後の休日、昼食に市販のパンで作ったサンドイッチとサラダを出すと、夫はまた上司の奥さんの話を始めました。
「上司の奥さん、パンも自分で焼くらしいぞ。野菜だって庭で育ててるんだってさ」
「すごいね。私も焼きたてのパンは好きだけど、毎日作るのは大変そうだね」と返すと、夫は不機嫌そうに言いました。
「ホームベーカリーを買えばいいだろ! 野菜だってベランダで育てればいいじゃん。なんで同じ女なのに、こんなに違うんだよ!」
あまりの言い方に、私は言葉を失いました。
私も仕事をしながら、家事や育児を頑張っているつもりでした。それなのに、夫は上司の奥さんと私を比較し、できていないことばかり指摘してきたのです。
「手作りがいいと思うなら、あなたが挑戦してみてもいいんじゃない?」
私がそう提案すると、夫は鼻で笑いました。
「俺は仕事で忙しいんだよ! そういうのは女の仕事だろ。女なら料理も裁縫もちゃんとやれよ!」
夫の言葉は、以前から義母に言われていたこととそっくりでした。
しかも、最近の夫は以前ほど家事や育児に協力してくれなくなっていました。休日も「疲れているから」と娘の世話を私に任せ、ひとりで外出することが増えていたのです。帰宅が遅い日もあり、何に使ったのかわからない出費があることも。
それでも、私は夫ときちんと話し合えば、以前のように協力し合える関係に戻れるのではないかと考えていました。しかし、その期待も次第に薄れていったのです。
冷凍食品を「手作り」と勘違いした夫
その日の午後、夫は私に言いたいことだけ言うと、またひとりで出かけてしまいました。
私はあまりに理不尽な要求に腹が立ち、夕食を手作りする気にもなれませんでした。そこで、以前買っておいた冷凍食品のハンバーグを夕食に出すことにしたのです。娘と先に食事を済ませ、夫の分は冷蔵庫に入れておきました。
夜遅くになって、夫がお酒のにおいをさせながら帰宅。
「ハンバーグがあるけど、食べる?」
そう声をかけると、「おお、食べる食べる!」と上機嫌で答えた夫。温め直したハンバーグを食卓に出すと、夫は一口食べて満足そうな顔をしました。
「やっぱり手作りの料理はうまいな! 俺にガツンと言われて、ようやく反省したか」
その言葉を聞いた瞬間、あきれてしまった私。
「それ、有名なメーカーの冷凍ハンバーグだけど?」
私がそう伝えると、夫の手が止まりました。
「は? なんだよ、それ! 手作りじゃないのかよ!」
「さっきはおいしいって言ってたじゃない。冷凍食品だとわかったら、急にダメになるの?」と言うと、夫は腹立たしそうに言い返してきました。
「そういう問題じゃないだろ! 俺が手作りしろって言ったのに、わざわざ冷凍食品を出すなんて、嫌がらせかよ!」
私は夫の言葉を聞きながら、すっかり気持ちが冷めていくのを感じました。
夫が求めていたのは、おいしい食事でも、娘のための愛情でもありませんでした。ただ、自分の理想を私に押しつけたかっただけなのです。
「そんなに手作りがいいなら、自分で作ってみたら? 私だって仕事をしているんだから」
そう言っても、夫は「女のくせに口答えするな」と怒るばかり。私はもう、これ以上夫と一緒に暮らしていくことは難しいと感じました。
そして、私は別の部屋に保管していた離婚届を持ってきたのです。
「そこまで私が気に入らないなら、もう一緒に暮らさなくてもいいよね」
そう言って離婚届を差し出すと、夫は目を丸くしました。
「は!? 離婚って……冗談だろ?」
「冗談じゃないよ。ずっと考えてたの」と告げると、急に慌て始めた夫。「もう手作りしろなんて言わないから!」「母さんだって、この前は言い過ぎたって反省してたんだよ。だからさ、もう一回考え直してくれよ!」と言ってきましたが、私の決意は変わりませんでした。
実は、手作りの強要だけでなく、夫の金遣いにも以前から不信感を抱いていたのです。
複数の知人から「旦那さんが駅前のパチンコ屋さんに入っていくのを見たよ」と聞いて、私は夫が休日や仕事帰りにパチンコに通っていることは知っていました。最初は自分のお小遣いの範囲で息抜き程度に遊んでいるのだと思っていましたが、家計用の口座から使途不明の引き出しが続いていたこともあり、何度か問いただしていました。
しかし、夫は「必要なものを買っただけ」「いちいち細かいことを聞くな」と言うばかりで、まともに説明してくれません。そこで私は家計の記録や夫とのやり取りを残し、離婚の準備を進めていたのです。
娘と始めた新しい生活
後日、私は娘を連れて実家に身を寄せ、弁護士に相談しました。
通帳や取引履歴を整理するなかで、夫が家計のお金だけでなく、私の独身時代の貯金まで無断で使っていたことが発覚。以前、私名義の口座の手続きを夫に頼んだこともありましたが、まさかその口座から夫が無断でお金を引き出しているとは思いませんでした。
夫を問いただすと、最終的にはパチンコなどに使ったことを認めました。
私は弁護士に相談しながら、使い込まれた貯金の返還や娘の養育費について話し合いを進めることに。夫は当初、離婚を拒んでいましたが、私の意思が変わらないとわかると、最終的には応じました。
娘の親権や養育費、財産の清算についても合意し、離婚が成立。無断で使われた貯金についても、返還する金額と支払い方法を取り決めました。
私名義で借りていたマンションは、元夫の退去後に解約しました。
離婚後、私は両親の助けを借りながら、娘との新しい生活を始めました。
仕事にも集中できるようになり、その後、昇進も決定。もちろん、仕事と育児の両立は大変でしたが、誰かに責められることなく過ごせる毎日に、心からホッとしています。
忙しい日は冷凍食品やお総菜に頼ることもありますが、娘と笑顔で食卓を囲めるだけで十分幸せです。
今回の経験を通して、夫婦にとって大切なのは、相手に自分の理想を押しつけることではなく、お互いの事情を理解し、支え合うことなのだと痛感しました。手作りかどうかよりも、相手を思いやる気持ちのほうが、ずっと大切だったのだと思います。
これからも周囲の力を借りながら、娘と笑顔で過ごせる毎日を大切にしていきたいです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。