上司からの突然の電話
BBQ当日の昼ごろ。会場の公園で電話に出ると、にぎやかな声に交じって、上司の笑い声が聞こえてきました。
「今日のBBQ、俺ら全員キャンセルするわ! 外で焦げた肉なんか食うの、だるいだろ? 部署のみんなを誘って、会社の経費で高級鉄板焼きに来てるんだよ。1人で寂しくやってろw」
突然の言葉に、僕は耳を疑いました。
実は、このBBQを企画したのは社長。日頃の総務部の働きをねぎらうための集まりだったのです。
ただ、「みんなに気軽に参加してほしい」という社長の意向で、案内は幹事である僕の名前で出していました。社長の企画だとは知らせず、単に「親睦BBQ」としていたのです。
上司は、僕が個人的に企画した集まりだと思い込んでいたようでした。
「えっ、でも……」
僕が説明しようとしたときには、もう電話は切れていました。

会場に残されたのは……
ほかの参加予定者にも電話やメールで連絡しましたが、返事はありません。集合時刻を過ぎても、誰ひとり姿を見せませんでした。
「すみません……。参加者は社長と僕だけみたいです……」
一緒に準備をしてくれていた社長に、僕は肩を落として伝えました。
慌てて連絡を取る僕の様子を見て、社長も異変を感じていたようです。
「今どきBBQは、みんなに負担だったかしらね……」
落胆した表情を見せる社長に、僕は慌てて声をかけました。
「違うんです! 僕がみんなに事前に直接確認しておけばよかったんです。上司が僕に嫌がらせをするのは、いつものことなのに……」
そこまで言って、僕はハッと口をつぐみました。
「いつものこと……? そんなことが前からあったの?」
社長の顔つきが一変しました。社長をフォローするつもりが、思わず余計なことまで口にしてしまいました。
詳しく尋ねられた僕は、これまで上司から受けてきた理不尽な対応を話すことになりました。社長は真剣な表情で耳を傾け、「話してくれてありがとう。会社として、きちんと事実を確認するわ」と言ってくれました。
自爆した上司の末路
週明け、上司は社長室へ呼び出されました。そこで初めて、BBQを企画したのが社長だったと知り、顔を真っ青にしたそうです。
もちろん、問題は社長の企画したBBQを欠席したことではありません。
僕への嫌がらせのために参加者を別の店へ誘い出したこと。承認を得ていない飲食代を、会社の経費で賄おうとしたこと。そして、日頃の僕への言動について、説明を求められたのです。
高級鉄板焼きの代金は、上司が立て替えていました。しかし、会社はその飲食代を経費として認めず、結果的に上司の自己負担に。
同僚たちも、後日、僕に謝ってくれました。
「会場が変わったんだと思い込んでた。幹事の君に確認しなくて、ごめん」
その後、会社は上司本人や関係者への聞き取りを進めました。日常的なパワハラや、今回の飲食代を無断で経費申請しようとした経緯が確認され、上司は就業規則に基づく降格処分を受けることに。僕の直属の上司からも外れました。
会社を辞めない限り、耐えるしかない。そう思っていた日々が終わり、ようやく安心して仕事に取り組めるようになったのです。
僕を困らせるつもりが、自分の問題行動を明るみに出してしまった元上司。すっかりおとなしくなった姿を見て、胸がすく思いでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者が特定されないよう、固有名詞などに変更を加えながら構成しています。