私は留守番!?
結婚を機に、夫から「家のことをお願いしたい」と強く頼まれ、私は美容師を辞めて専業主婦になりました。新生活を始めた場所は、義父が私たちのために貸してくれた一戸建て。土地も建物も義父の名義で、家賃を取らずに住まわせてくれていたのです。
義父が海外赴任してから、穏やかな生活は一変。ひとり暮らしになった義母が頻繁に訪れ、夫も何かと実家へ。休日に一緒に出かける予定があっても、義母から呼ばれればそちらを優先するのです。不満を伝えても、夫は「母さんはひとりで大変なんだから」と取り合ってくれませんでした。
数カ月後、夫に3年間の地方転勤が決まりました。当然、私も同行するつもりでしたが、夫は義母と一緒に帰宅し、突然告げたのです。「転勤先には母さんを連れていくことにしたから。お前は今の家で留守番してて」
驚いて理由を尋ねると、義父が帰国するまで義母をひとりにしたくないとのこと。私まで連れていくと、もっと広い部屋を借りなければならないため、家賃のかからない今の家に残ってほしいと言うのです。相談もなく決めたことに抗議しても、夫は「お前ならわかってくれると思ったんだよ」のひと言。義母を心配する気持ちはわかりますが、私の意見も聞かずに決めてしまった夫に、納得がいきませんでした。
夫の身勝手な要求は止まらず……
夫は義母と住むため、会社の単身赴任者向けの寮ではなく、自費でアパートを借りました。すると、転勤先で家賃がかかることを理由に、私に渡す生活費を一方的に減らしたのです。
家計簿を見せて食費や光熱費が足りないと訴えても、夫は「こっちは家賃がかかるんだよ。お前はかからないだろ」と言って聞く耳を持ちません。それどころか、「足りないなら、また働けば?」と言うのです。夫の希望で仕事を辞めたことは忘れたのでしょうか。何度話しても、義父が帰国するまでの辛抱だと譲りませんでした。
悩んだ末、私は海外赴任中の義父に電話しました。義父は、夫が義母を連れて転勤したことは知っていましたが、生活費まで減らされているとは知らなかったようです。
「そんなことになっていたのか……。無理してあの家にいる必要はないよ」という義父の言葉で決心がつき、夫に伝えて実家へ戻りました。以前勤めていた美容室にも連絡したところ、幸い復職が決まり、再び美容師として働くことに。自分で収入を得られるようになり、少しずつ生活を立て直していきました。
私が出した答え
約1年後、義父の帰国に合わせて義母も転勤先から戻り、夫はひとりで赴任を続けることに。義父は夫に、私と今後について話し合うよう伝えてくれたそうです。
ところが夫から来たのは、転勤先へ来ないかという連絡。すでに美容師として復職していた私は、仕事を辞めるつもりはないと断りました。
何より、私に相談もせず、家に残るよう一方的に決め、生活費まで減らした夫をもう信用できませんでした。私は離婚を切り出しましたが、夫は「そこまでのことか? 帰ったらやり直そう」の一点張り。話がまとまらないまま約2年が過ぎ、夫の帰任が近づいていました。
3年後、夫が目にした光景とは
そして転勤から3年後。赴任を終えた夫は、以前暮らしていた家に向かったそうです。ところが、表札は知らない名字に変わり、そこには見知らぬ家族が。驚いた夫は義父に電話しました。「父さん! あの家、知らない人が住んでるんだけど!?」
実は、義父は帰国後、空き家になった家の返還を私たち夫婦に求めていたのです。私は了承しましたが、夫は「今は使わないし、家のことは任せるよ」と、今後のこともろくに確認せずに同意。荷物の搬出や鍵の返却も済ませていました。
その後、義父は維持管理や資産整理を考え、不動産会社を通じて家を売却。しかし夫は、家はまだ義父のものだと思い込み、帰任すればまた貸してもらえると勝手に考えていたようです。
後日、義父も交えて話し合うと、夫は私とあの家で暮らすつもりだったと訴えました。義父は「奥さんの気持ちは聞いたのか?」と問い、生活費を減らされた私から相談を受けていたことも伝えます。
「母さんをひとりにできなかったんだ!」と反論する夫に、義父は「母さんを心配してくれたことはわかったよ。だけど、なぜ奥さんばかり我慢させた?」と一喝。義父の言葉に黙り込んだ夫は、しばらくして「勝手に決めて悪かった。やり直せないか」と謝ってきました。しかし、今さら謝られても、私の気持ちは変わりません。「私の気持ちはずっと後回しだったよね。もう、あなたとやり直すつもりはないよ」と答えました。
その後も話し合いを重ね、夫もようやく離婚に同意。条件がまとまり、正式に離婚が成立しました。元の家に戻れなくなった夫は、新しい住まいを自分で探すことに。一方、私は今も美容師として働き、自分の収入で生活しています。結婚当初は夫の希望で辞めた仕事ですが、あのとき復職しておいて本当によかったと思っています。
◇ ◇ ◇
家族だからこそ、「これくらいはわかってくれるはず」と、つい相手に甘えてしまうこともあるかもしれません。でも、自分の都合で相手の暮らしを変え、困っていると訴えられても耳を貸さなければ、気持ちは離れてしまうもの。だからこそ、自分の思いを優先するばかりでなく、相手に無理をさせていないか考えることも大切かもしれません。