「参加費、払えるの?」決めつけてくるママ友
「今日もお仕事? 生活のためとはいえ、大変ね」
「うちは夫の収入だけで暮らせるから、助かるわぁ」
送迎のたびに嫌味を言われても、娘の友だちのママだと思うと強く言い返せず、私は適当に受け流していました。
そんなある日、クラスの親子親睦会が開かれることに。保護者が企画する集まりで、今回はAさんとBさんが幹事を務め、園長先生も招待されていました。会場は、個室やキッズスペースのある人気のレストラン。案内を見て参加を申し込むと、2人は顔を見合わせました。
「参加費、払えるの? 無理して来なくてもいいのよ」
「あとから払えないって言われても困るし」
費用は確認済みで、支払いにも問題はありません。私は「娘も楽しみにしているので参加します」と答えました。すると、隣にいた娘が不思議そうに尋ねたのです。
「どうしてママがお金ないって思うの?」
2人は一瞬黙りましたが、「子どもにはわからないわよ」と話を切り上げてしまいました。
私たちの席だけがない!?
親睦会当日。娘と会場の個室に入ると、すでに何組もの親子が席に着いていました。娘は友だちを見つけてうれしそうに手を振ります。ところが、テーブルを見渡しても私たちの席がありません。幹事の2人に私たちの席がどこかと尋ねると、Aさんが笑いました。
「シンママの席はないよ(笑)」
「家庭の話をするとき、みんな気を使っちゃうでしょ? だから今回は遠慮してもらおうと思って」
事前に断られたわけでもなく、参加すると伝えたうえで来ているのです。それなのに、娘の前でこんなことを言うなんて……。
「じゃあ私も参加不可ね」園長先生が立ち上がり…
娘が私の手をぎゅっと握りました。私は娘をそばに引き寄せ、2人に尋ねました。
「参加の申し込みはしましたよね。どうして、おふたりだけで決めたんですか?」
そのとき、やりとりを聞いていた園長先生が、静かに席を立ちました。
「じゃあ私も参加不可ね。帰ります」
「えっ、園長!?」
Aさんの声が裏返りました。Bさんも「先生に帰っていただきたいわけでは……」と慌てています。園長先生は2人を見つめ、言いました。
「私も、ひとりで子どもを育ててきました。シングルマザーは参加できないのでしょう?」
「で、でも、園長先生は別です!」
「私とこちらのお母さんで、何が違うのですか?」
2人は答えられません。すると、近くにいたママ友も口を開きました。
「私たちが気を使うなんて、誰が言ったんですか? 私は親子みんなで楽しむ会だと思って来ました」
別のママ友も「申し込んだ人を勝手に断るなんておかしいですよ。お子さんも楽しみにしていたでしょうに」と続けました。
Aさんは「そんなに大げさにしなくても、冗談だったのに……」と笑おうとしましたが、誰も笑いませんでした。園長先生は、不安そうな娘に目を向けてから言いました。
「席がないと言われて、お子さんがどんな気持ちになったか考えてください。冗談では済ませられませんよ」
2人は顔を赤くし、うつむきました。
周囲の反応に、ようやく謝罪した2人
ほかの保護者が店員に確認すると、幹事から伝えられた人数に、私たち親子は含まれていなかったことがわかりました。幸い、席も料理も追加できるとのこと。ママ友たちが席を詰め、「ここに一緒に座りましょう」と声をかけてくれました。
その間、AさんとBさんは黙ったまま。園長先生に改めて説明を求められ、ようやく「自分たちの判断で人数から外しました」と認めました。
「ごめんなさい。軽い気持ちで……」
謝る2人に、私は伝えました。
「私はともかく、娘にまで嫌な思いをさせたことが悲しいです。家庭の事情を理由に、参加できないと決めつけないでください」
2人は小さくうなずき、娘にも謝りました。
その後は、別の保護者が会の進行を手伝ってくれました。さっきまで楽しそうに話していた2人も、もう周囲の同意を得ようとはせず、静かに席に着いていました。娘は友だちに「一緒に食べよう」と誘われ、ようやく笑顔に。その姿を見て、私もほっとしました。
後日、今後の親睦会では、幹事だけでなく参加者全員が出欠を確認できる方法に改めることになりました。AさんとBさんから嫌味を言われることもなくなり、私は必要な距離を保ちながら、娘と穏やかな園生活を送っています。
◇ ◇ ◇
家庭の形だけで相手を決めつける言葉は、子どもまで傷つけてしまいます。今回、園長先生や周囲の保護者がその場で声を上げてくれたことは、親子にとって大きな支えになったでしょう。誰もが安心して参加できる場を、大人同士で守っていけるといいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。