結婚式の準備は、ほとんど私ひとりで進めていました。彼は結婚式に乗り気ではなく、打ち合わせに一緒に行こうと誘っても、友だちとの遊びや飲み会を優先します。
ようやくドレス選びについてきてくれた日も、嫌々付き合っているのが伝わってくるような態度でした。
2人の結婚式なのに、どうして私だけが準備をしているのだろう——。そう感じながらも、式が近づけば彼も変わってくれるはずだと、自分に言い聞かせていたのです。
そんな中、彼の両親がわが家に泊まりに来ました。私なりにもてなし、無事に見送ったあと、今度は私の両親が来る予定があるので同じように泊まってもらおうと提案しました。ところが彼は、気を使うから嫌だと大反対。気を使うのは、私だって同じだったのに……。
同棲を始めて1カ月。日を追うごとに、2人のいざこざは増えていきました。彼は仲良くしようと口では言いますが、そう思うなら、まずは私が傷つくような言動を控えてほしいのですが……。
サプライズ大成功!? 喜ぶ彼を見て私は…
なんとか準備を終え、迎えた結婚式当日に事件は起こります。ウエディングケーキをカットした後のファーストバイトで、彼が私の顔をケーキに押し付けたのです。
きれいにセットしてもらった髪までクリームまみれになり、何が起きたのか一瞬、理解できませんでした。会場で笑っていたのは、彼と彼の悪友たちだけ。ほとんどの招待客は息をのみ、気まずい空気が流れていました。
急いで中座して、どうにか顔や髪を整えた私。なんとか披露宴を終えて大きなため息をつくと、浮かれた様子の彼がやって来ました。
「顔面ケーキ、最高だったな! 一生の思い出になっただろ」
あの演出はどういうつもりなのかと問いただしても「ただの悪ふざけだって。みんなウケてたじゃん」と、謝る様子もありません。
一度きりの晴れの日を、彼は笑いのネタにしたのです。同棲してから積み重なってきた不満も、もう限界を迎えていました。
二次会の開始時刻は、刻一刻と迫っています。二次会は彼と悪友たちが幹事です。このまま行けば、また何をされるかわかりません。それに、大切な友人たちまで、嫌な目にあわせるわけにはいきませんでした。
「二次会には行きません」と彼に告げ、私は二次会を欠席することに……。私の友人たちにも事情を話し、参加を見合わせてもらうようお願いしました。
彼は不機嫌になっていましたが、私にはもうそれを受け止める余裕はありませんでした。
参列者から聞いた“彼の本性”とは
自宅に着いてひと息ついたところで、参列してくれた彼の友人のひとりから連絡がありました。ケーキの一件を見て、悩んだ末連絡をくれたとのこと……。
聞けば、彼はSNSで私の愚痴を次々と投稿していたそうです。SNSに疎い私は、まったく気づいていませんでした。送ってもらった画面には、私をからかうような言葉がいくつも並んでいて、言葉を失いました。
飲み会では結婚相手を間違えたかもしれないと話し、結婚前の最後の思い出と称して合コンにも通っていたといいます。
話を聞き終えたとき、彼への気持ちは完全に冷めきっていました。私は二次会から帰ってきた彼と向き合い、ケーキの件やSNSの投稿のことを一つひとつ伝えたうえで、はっきり告げたのです。
「婚約はキャンセルさせてください!」
そして、これまでに受けた精神的な苦痛について、慰謝料を請求するつもりだとも伝えると、彼は明らかにうろたえた様子で言いました。
「夫婦だろ? こういうときこそ支え合おうよ」
支え合える関係を壊してきたのは、ほかならぬ彼自身です。幸い婚姻届は式の翌日に提出する予定だったので、まだ入籍はしていません。この人とは夫婦にならない——私の決意は揺らぎませんでした。
その後、彼からはやり直してほしいと何度も謝罪の連絡がありました。それでも、私の気持ちは変わりません。慰謝料や式の費用についても両家で話し合いを重ね、私は彼と別れることができました。
“サプライズ”が炎上に…彼の末路は
別れてから知ったのですが、あの顔面ケーキの一部始終は彼の悪友によって動画でSNSに投稿され、ちょっとした騒ぎになっていたそうです。
私の顔にはモザイクがかかっていましたが、彼の顔はそのまま。動画をきっかけに彼の振る舞いが周囲に知られ、仕事にも影響が出たと聞いています。
まさか結婚式がきっかけで婚約解消になるとは、思ってもみませんでした。けれど今は気持ちもようやく落ち着き、夫婦になる前に彼の本当の姿を知ることができて良かったと感じています。
◇ ◇ ◇
SNS映えやウケ狙いの悪ふざけが、相手の気持ちを深く傷つけてしまうこともあります。本人は冗談のつもりでも、相手が嫌だと感じていれば、それは嫌がらせと変わりません。
その場では笑いが取れたとしても、思いやりを欠いた言動は、積み重ねてきた信頼を一瞬で失わせてしまうもの。笑いを共有できるのは、相手が一緒に楽しめてこそ。大切な人だからこそ、その気持ちを忘れずにいたいですね。
【取材時期:2026年9月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。