「若造の下では働けんw」
社長に就任して数か月。僕は会社を立て直そうと奮闘していましたが、営業部長たちは僕を「世間知らずの若造」と見下していました。
業務の改善を提案しても、「先代のやり方を壊す気か」と反発するばかり。なかなか話し合いにも応じてもらえません。
そんなある日、営業部長がほかの管理職数人を連れて、社長室に乗り込んできました。
彼は薄笑いを浮かべながら、束になった書類を僕の机に置きました。
「若造の下では働けんw ここにいる全員の退職届です。我々が一斉に抜けたら、この会社がどうなるか分かっていますよね?」
差し出されたのは、彼らの退職届でした。
僕が慌てて引き留め、自分たちの言い分を受け入れると踏んでいたのでしょう。営業部長たちは、勝ち誇ったような顔で僕の返事を待っていました。
「じゃあ、全て受理しますね」
僕は静かに息を吐き、机の上の退職届に手を伸ばしました。
「じゃあ、全て受理しますね」
その瞬間、営業部長の顔から笑みが消えました。
「え……? なんで……? いや、だって……」
一緒に来ていた管理職たちも顔を見合わせ、言葉を失っていました。
実は、僕が就任後に経費や社内の状況を調べる中で、彼らによる経費の私的使用や、部下への日常的なパワハラが明らかになっていたのです。
僕はすでに外部の専門家に相談し、真面目に働く社員たちとともに、業務の進め方を見直していました。特定の管理職に仕事や情報が集中しないよう、担当や情報共有の体制も整え始めていたのです。
彼らの言いなりにならなければ会社を守れない。僕はもう、そうは考えていませんでした。

脅しでは済まされなかった
「ちょっと待ってくれ! 本当に辞めたいわけじゃ……。あれは撤回させてくれ!」
営業部長は、先ほどとは打って変わって慌て始めました。
僕は退職届を机に置き、彼らに向き直りました。
「では、退職については一人ずつ、改めてお話を聞きます。ただ、会社の方針を皆さんの要求どおりに変えるつもりはありません」
そして、これまで確認してきた経費の記録や、部下への言動に関する資料を示しました。
「こちらの件についても、説明をお願いします」
資料を目にした営業部長たちは、黙り込んでしまいました。
「退職するかどうかとは別に、会社のお金を私的に使った件には対応します。返還については、弁護士を通じて請求する方針です」
退職届を出せば、僕が折れると思っていたのでしょう。しかし、彼らの思惑どおりにはなりませんでした。
その後は専門家に相談しながら個別に話し合い、退職日や引き継ぎについて合意。営業部長たちは、最終的に会社を去ることになりました。
仲間とともに、会社を立て直す
新しい体制での仕事が始まると、社内の雰囲気は少しずつ変わっていきました。若手社員からも意見が出るようになり、止まっていた業務改善も進められるようになったのです。
そうした取り組みを重ねるうちに、業績も上向いていきました。
父が残してくれた会社を守るには、昔のやり方をそのまま続けるだけでは足りないのだと感じています。これからも社員の声に耳を傾けながら、仲間たちと一緒に、安心して働ける会社にしていきたいと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者が特定されないよう、固有名詞などに変更を加えながら構成しています。