フォトウェディングでの悲劇
私たちは大がかりな結婚式はせず、両家の家族を招いてフォトウェディングをおこなうことにしていました。撮影を終えてから2人で婚姻届を出しに行く予定でした。
そして迎えた撮影当日。スタジオのロビーで両親や彼の両親と合流して談笑していると、入り口から信じられない格好をした人物が現れたのです。
「なんであなたがそれを着ているの!?」
母の怒りに満ちた声の先には、純白のウェディングドレスに身を包んだ妹の姿がありました。妹は昔から私のまねばかりして、文房具から交際相手まで、私が持っているものは何でも欲しがる自己中心的な性格でした。
ここ数カ月は音信不通で、当然撮影にも来ないと思っていたのですが、突然の登場に彼も彼の両親も目を丸くしていました。後から母に聞くと、妹は数日前に「お祝いだけでも伝えたい」と母に連絡し、撮影場所を聞き出していたそうです。
「花嫁チェンジで♡」妹の略奪宣言
「今日の花嫁は私!」
妹は母の制止を振り切って、私たちの中心へと割り込んできました。あまりの非常識な行動に私が注意しようとすると、妹はとんでもない言葉を叫んだのです。
「私、お姉ちゃんの彼の子どもを妊娠したの♡ だから、彼もらうね! 私が彼と結婚するから!」
その場にいた家族全員が言葉を失いました。彼の両親が慌てて彼に「本当なのか?」と詰め寄ると、彼は顔面蒼白になり、あからさまにうろたえ始めました。彼の両親から問い詰められた彼は、妹と関係を持っていたことを認めたのです。婚約者と実の妹に裏切られていたと知った私は、怒りを通り越してあきれてしまいました。
不器用でも一生懸命で誠実だと思っていた彼への愛情が、急速に冷めていくのを感じました。
「花嫁チェンジで♡」
妹が勝ち誇ったようにそう言うと、隣で彼が「どうしよう……」と情けない声で震えていました。私は冷静になり、「別にいいよ。花嫁チェンジで。2人ともおめでとう! お幸せに!」と笑顔で祝福しました。
妹はますます得意げになりましたが、もちろん私には妹と撮影を交代するつもりなどありませんでした。彼との結婚を取りやめるという意味で、あえて祝福したのです。そして、あぜんとするスタッフに撮影の中止を申し入れました。
突きつけたブライダルチェックの結果
私の決断に周囲は驚いていましたが、妹だけは得意げでした。激怒した両親と彼の両親は次々とその場を去り、私はスタジオのキャンセル手続きと費用の精算を済ませました。
帰り際、私は彼に最後の置き土産を残すことにしました。それは、2人で受けたブライダルチェックの結果でした。
撮影の前日、私は2人で受けたブライダルチェックの結果を聞きに行きました。彼は「きっと問題ないよ!」と一緒に行くのを面倒がったため、彼の同意を得て、私が2人分の検査結果について医師から説明を受けたのです。彼にも結果を伝えようと思っていましたが、落ち着いて話す時間がないまま撮影当日を迎えてしまいました。
実は、彼のブライダルチェックの結果について、医師からは「自然妊娠は難しい可能性があります。詳しく調べるためにも、改めて検査を受けることをおすすめします」と説明されていたのです。
「本当にあなたの子どもなのか、確認したほうがいいんじゃない?」
私はそう言い残し、スマホで撮っておいた検査結果の画像を彼に送信して、スタジオを後にしました。私があえて2人を祝福したのは、彼への愛情がすっかり冷めてしまったから。それに、ブライダルチェックの結果を知っていた私は、妹のおなかの子が本当に彼の子どもなのか、疑問を抱いていたのです。
その後
後日、謝罪の連絡をしてきた彼から聞いたところ、彼は検査結果を見て、おなかの子が本当に自分の子どもなのか疑い始め、妹を問い詰めたそうです。そして2人は、スタジオのロビーでひどい言い争いになったのだとか。問い詰められた妹は、妊娠した可能性のある時期に、ほかの男性とも関係を持っていたことを認めたとのこと。結局、子どもの父親が誰なのかはわからなかったようでした。
彼は私に何度も謝罪し、復縁を求めてきましたが、妹のおなかの子が彼の子どもかどうかにかかわらず、婚約中に彼が妹と関係を持ったことは事実。私は彼の要求には一切応じず、フォトウェディングのキャンセル料と婚約解消に伴う慰謝料の請求について弁護士に相談しました。
退職したばかりで少し気まずさはありましたが、まだ後任が決まっていなかったこともあり、事情を知った元の上司が人事部に掛け合ってくれました。その結果、私は元の会社に再雇用してもらえることになったのです。彼もしばらくは同じ会社にいましたが、社内に事情が知れ渡り、肩身の狭さに耐えきれなかったのか、やがて退職しました。
つらい経験でしたが、入籍をフォトウェディングのあとに予定していたことは不幸中の幸いでした。これからは自分自身のキャリアを大切にして、バリバリ働いていこうと思います。
◇ ◇ ◇
結婚を目前に控えた大切な日に、婚約者と実の妹の裏切りを知ることになるとは……。信頼していた相手からの裏切りは、これまで思い描いていた将来まで大きく揺るがしてしまいますよね。結婚生活を築いていくうえで、お互いへの信頼は欠かせないもの。たとえ結婚の準備が進んでいたとしても、不誠実な行動に目をつぶる必要はありません。うそや裏切りに気づいたときは、周囲の人や専門家の力も借りながら、自分の気持ちを大切にし、納得できる選択をしていきたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。