【もしも、こんなことが起きたら?】「急に旅行へ誘うのは罪滅ぼし」ママ友の言葉を思い出して…
※以下は、法律上の疑問を考えるために設定した架空の相談です。

私たち夫婦はもともと旅行好きでしたが、最近は仕事が忙しく、しばらく出かけられていませんでした。
そんなある日、ママ友との会話で、不倫をしている男性にまつわる“よく聞く噂話”が話題になりました。
「後ろめたいことがあるとさ、罪滅ぼしのつもりで急に奥さんを旅行に誘ったり、プレゼントをしたりすることもあるらしいよ」
そのときは「へえ、そうなんだ」と聞き流していました。
ところが翌日、夫が突然、「今週末、旅行に行かない?」と誘ってきたんです。
一瞬うれしかったのですが、前日に聞いたママ友の言葉が頭をよぎりました。
「え、待って……なんで急に……」
それからは、最近帰宅が遅くなっていなかったか、スマホを触る時間が増えていなかったかなど、それまで気にしていなかった夫の行動まで怪しく思えてきました。
もちろん、ただ旅行に誘ってくれただけかもしれません。では、こうした「いつもと違う行動」だけで、不倫の証拠になるのでしょうか。
教えてくれたのは…株式会社BestOne 太田垣弁護士

・株式会社BestOne 弁護士・税理士 太田垣佳樹(おおたがき よしき)さん
東京大学法学部卒業。首都大学東京(現・東京都立大学)法科大学院修了。
2013年司法試験合格、2014年弁護士登録。Arden法律事務所の代表弁護士として、相続・不動産・企業法務を中心に幅広い案件を取り扱う。
2022年より東京都立大学法科大学院非常勤講師を務めるほか、2025年に税理士登録。
弁護士が教える!妻が「夫の不倫」を疑うきっかけ
ご相談で実際によく伺うのは、次のような変化です。
ただし、これらはあくまで調査を始める「きっかけ」であり、それだけで不貞を立証できるわけではない点に注意が必要です。
変化①スマートフォンの扱い

・画面を伏せて置くようになった
・浴室にまで持ち込む
・ロックの暗証番号を変えた
・通知のプレビューを非表示にした
・着信があると席を外す
・充電を寝室でしなくなった
変化②帰宅時間・休日の予定

・残業や接待、出張が急に増えた
・休日出勤が増えた
・予定の説明が以前より詳しすぎる、または曖昧すぎる
変化③金銭の使い方

・現金の引き出しが増えた
・クレジットカードの明細を見せなくなった
・利用先に飲食店やホテルが増えた
・家計への入金が減った
・キャッシュレス決済に切り替えて履歴が追いにくくなった
変化④身だしなみ

・服装や髪型が急に変わった
・香水を使い始めた
・下着を新調した
・ジムに通い始めた
・体型を気にするようになった
変化⑤急なプレゼントや優しさ

・理由のない贈り物をするようになった
・急に家事を手伝うようになった
・旅行に誘うようになった
これらは、罪悪感の裏返しとして現れることがあります。
変化⑥周囲へのアピール

・SNSに家族写真の投稿が増えた
・人前で「愛妻家」であることを強調するようになった
変化⑦夫婦関係そのもの

・性交渉が途絶えた
・会話を避けるようになった
・逆に不自然なほど機嫌がよくなった
法的な立証における位置づけ
裁判で不貞行為(民法上の不法行為となる肉体関係)が認定されるためには、肉体関係の存在を推認させるだけの証拠が必要です。
上に挙げた行動の変化は、いずれも単独では不貞の証拠になりません。「スマートフォンを伏せて置くようになった」だけでは、裁判所は不貞を認定してくれません。
実際に不貞の認定に用いられるのは、次のような証拠です

・ラブホテルや相手方の自宅への出入りを示す写真・動画(複数回あるとより強い)
・宿泊を伴う旅行の記録(予約履歴、写真、交通費の履歴)
・性的な内容を含むLINEやメールのやり取り
・探偵事務所の調査報告書
・本人が不貞を認めた発言の録音、念書
それでも行動の変化には3つの意味がある
夫の行動に変化があったとしても、それだけで不貞行為を立証できるわけではありません。しかし、今後の調査や裁判では、次のような意味を持つことがあります。
①調査を始める手がかりになる

変化に気づいた曜日・時間帯・行き先の傾向は、探偵に依頼する際の日程や場所を絞り込む手がかりになります。やみくもに調査するより費用を抑えられることがあります。
②総合判断の一要素になる
決定的な証拠が一つしかない場合でも、行動の変化や金銭の動きと組み合わせることで、裁判所が不貞を推認しやすくなります。
③相手の弁解を崩す材料になる

「ただの食事だった」という弁解に対し、同時期に下着を新調していた、宿泊費の支出があった、といった事情は、弁解の不自然さを示す材料になります。
実務上のご注意
違和感を持たれた段階でまず行っていただきたいのは、問い詰めることではなく、記録を残すことです。
問い詰めると証拠を消されるおそれがあり、以後の立証が難しくなりかねません。
帰宅時間や不審な言動を日記形式で記録しておくだけでも、後の調査と立証に役立ちます。
ただし、証拠を集めるためであっても、配偶者のスマートフォンを無断で見る、内容を保存・転送する、第三者に見せるといった行為には、プライバシー侵害などの法的リスクが生じる可能性があります。
「いつもと違う」だけでは、不倫の決め手にはならない
太田垣弁護士によると、スマートフォンの扱いや帰宅時間、急なプレゼントなどの変化は、不倫を疑うきっかけにはなっても、それだけで不貞を立証できるわけではないそうです。
今回のケースのように、突然旅行に誘われたからといって、すぐに「不倫している」と判断できるものではありません。
一方で、気になった曜日や帰宅時間、金銭の動きなどを記録しておくことが、その後の調査や判断の手がかりになる場合もあるとのこと。違和感があったときこそ、まずは冷静に状況を確認しておきたいですね。
※法律上の評価は個別の事情によって異なります。具体的な判断については、弁護士などの専門家にご相談ください。
※一部AI画像を使用しております。