胎児に配慮した適切な診療をするなど周産期医療の充実に向けて2018年4月に施行された「妊婦加算」が2020年4月に撤廃となりました。世間で物議を醸していた妊婦加算が撤廃となり、今後の妊婦へのきめ細やかな医療の充実に向けてどう変化していくのでしょうか。
どうして妊婦加算があったの?
妊婦の場合、胎児への影響や流産などの危険もあるため、医薬品の処方や妊婦に多い合併症、診断の難しい疾患を考慮した診察が必要になるなど特別なケアや慎重な対応が必要であるとの判断から受診料が上乗せされることになりました。つまり、妊婦が安心して受診できる環境づくりが加算の目的だったのです。
そのため、妊婦加算のメリットとしては妊婦に対する外来ケアがより丁寧になり、細やかになる可能性があると考えられていました。ただ、デメリットとしては妊婦加算があるために受診を控える方もいるのではないかと懸念されていました。
妊婦加算が撤廃?!
妊婦が安心して受診できる環境づくりのために設定された妊婦加算でしたが、十分な説明がないまま妊婦加算が算定されたケースがあったり、コンタクトレンズの処方など妊婦でない患者と同様の診療をおこなう場合に妊婦加算が算定されたケースなど本来の加算の趣旨に反するようなケースの指摘がありました。それが新聞やニュース、SNSでも頻繁に取り上げられるようになり、そのときに妊婦加算を耳にするようになった方も多いでしょう。
しかし、その世論の風潮から国会議員における妊婦加算の議論がおこなわれ、再度妊婦加算の在り方を検討し見直すこととなったのです。そのため、妊婦加算の制度は一旦凍結となり、2020年4月より正式撤廃となったのです。
私も丁度そのころ妊娠していたので、妊娠中に受診した医療機関によって妊婦加算がついていたり、ついていなかったりと妊婦加算に対する医療機関の対応が一律ではなくまばらであるということを感じていました。同じように感じていたママたちも多いかもしれませんね。
今後はどうなる?
今回の妊婦加算の仕組みは一旦撤廃となりましたが、妊婦が安心して受診できる環境づくりの仕組みが再度見直されることになりました。2022年度以降の診療報酬改定に向けて「ゼロベース」で検討されるということです。
たしかに、妊娠中は産科以外の病院を受診することがためらわれる場合やどこに相談していいかわからないというような場合も多いように思います。妊娠中でも安心してどの医療機関へも受診できるような環境の整備が必要でしょう。そのためには、産科以外の医療機関においても妊婦の診療に積極的な医療機関を増やして体制を強化したり、妊婦への診療体制などの周知や産婦人科の主治医とそれ以外の診療科との連携を強めていくことも必要ですね。
妊婦加算の制度は妊婦に負担がかかっているように感じていましたが、本来は妊婦がどの医療機関でも安心して受診しやすい環境づくりのためのものでした。今後は妊婦が負担だと感じるものではない新しい制度ができ、ますます安心して妊娠・出産できる環境が整うといいなと思います。