新型コロナウイルスと熱中症予防に注意が必要となった2020年の夏。8月17日には静岡県浜松市で国内最高気温にならぶ41.1度が観測されました。暑さのピークは過ぎたようですが、まだまだ暑い日が続いています。暑いなかでのマスクの使用は迷うことも多いかもしれません。そんななか、WHO(世界保健機関)とUNICEF(国連児童基金)が新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた18歳未満の子どものマスク着用に関する指針を公表しました。
WHOが発表した指針とは?
WHOとUNICEFでは、以下のように子どもを3つの年齢層に分けて指針を示しています。
■5歳以下
通常の状況ではマスクを着けるべきではない。
■6~11歳
感染の広がりや、高齢者などハイリスクの人と交流しているかを考慮して判断すべき。マスクを使う場合は、安全に着け外しできるように大人が注意する必要がある。
■12歳以上
大人と同じようにマスクを着用すべき。他人と1m以上の距離が取れない場合や、地域の広い地域で感染がみられる場合は特に着用が求められる。
また、発達障害を抱えている子どもに対しては年齢を問わず、マスク着用を強制しないよう推奨しています。
なお、厚生労働省は現段階においてこの指針に対する見解を示していません。今後の動向を注視していく必要がありそうです。
マスク使用による乳児への影響とは?
WHOとUNICEFでは、5歳以下はマスクを適切に着用できないことが多い上、他人に感染させる可能性も他の年代に比べて低いとして、着用は不要としています。
日本小児科医会では、
・乳児の呼吸器の空気の通り道は狭いので、マスクは呼吸をしにくくさせ呼吸や心臓への負担になる
・マスクそのものやおう吐物による窒息のリスクが高まる
・マスクによって熱がこもり熱中症のリスクが高まる
・顔色や口唇色、表情の変化など、体調異変への気づきが遅れる
などの理由から、「2歳未満の子どもはマスクの着用は不要、むしろ危険である」という見解を公表しています。
妊婦さんも注意が必要!
妊婦さんは大きくなった子宮によって横隔膜が押し上げられるため、呼吸がしづらくなります。そして、体内の血液量が増加することで心臓への負荷も増加し、動悸や息切れを訴える妊婦さんも少なくありません。また、妊娠初期はつわりがあったり、妊娠後期は基礎代謝が上がって汗をかきやすくなったりするので、脱水に陥るおそれもあります。
妊娠しているというだけで体に負担がかかっている状態に加え、暑いなかマスクをすることはさらに妊婦さんへの負担を増強させてしまうことになります。
厚生労働省は「高温や多湿といった環境下でのマスク着用は熱中症のリスクが高くなるおそれがあるので、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、マスクを外すようにしましょう」と呼びかけています。
スーパーコンピューター「富岳」が飛沫検証
8月24日、理化学研究所と神戸大学は、スーパーコンピューター「富岳」を使って、マスクによる飛沫の拡散防止効果などを計算した結果を公表しました。
そこでは、不織布、ポリエステル、綿を使ったマスクの防止効果の違いでは、不織布が最も飛沫拡散防止効果が高かったとのこと。また、他のマスクでも約8割の飛沫を防げ、新型コロナウイルスの対策に有効だとしています。
そして、「全体的には、不織布マスクがもっとも抑制効果が高いが、それを着用して息苦しい場合には、少し性能が落ちても、空気がとおりやすい布マスクを着用するのがいい。着用することが大事であり、苦しいからマスクを外してしまうというのが、一番リスクが高い」とも指摘しています。
現在、さまざまなマスクが販売されていますが、状況に合わせてマスクを選び、それに合った感染対策を講じることが必要だと言えますね。
毎日、新型コロナウイルスの新規感染者数が各自治体で発表されていますが、新型コロナウイルス対策の政府の分科会では、感染状況について、全国的には今回の感染拡大はピークに達したと考えられるものの、再び増加するおそれがあり、引き続き注意が必要だと指摘しています。その一方で、妊婦さんが無理をしてマスクを着用し外出したところ、酸欠と熱中症で倒れてしまった、自閉症の特性でマスクを着けられないお子さんや、ママがマスクをしているとパニックを起こしてしまうため、マスクを着けられずにいる自閉症のお子さんを持つママが施設の利用を断られた……というような話も耳に入ってきます。引き続き自分たちができる熱中症と新型コロナウイルスの感染予防対策をおこなうとともに、他者への思いやりの気持ちも忘れずに日々過ごしていきたいですね。