こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子どもを子育て中の3児の母です。今回は男の子だけに当てはまるお話、「包茎」に関してです。
生後3・4カ月の健診で「むきむき体操」のことを教わり、「うちの子、むいたほうがいいの!?」と混乱してしまうママをちらほら見かけます。今回は、“うちの子に合った”対処法の見極め方をお話しできたらと思います。
おちんちんの構造
おちんちん(ペニス)は、男の子の尿道が入っています。他は血管や神経があり、尿道を包み込むように海綿体といってスポンジ状のものが詰まっているイメージです。
普段ペニスはおなかに半分くらい埋もれています。勃起したときにペニスが大きくなりますが、そのためにペニスは通常包皮に余裕があり、子どもでは余裕のある包皮がペニスの先にかぶっています。包皮がペニスの先にかぶっている状態を「包茎」と言います。
子どもの包茎は、特に心配しなくて大丈夫です
包茎は「真性包茎」と「仮性包茎」という2つの種類があります。
真性包茎は、皮を剥こうとしても剥けない状態の包茎、仮性包茎は普段皮がかぶっているけれど、剥こうとすれば皮がむけてペニスの先が出る状態のものを言います。
生まれたばかりの男の子はほぼ100%包茎で、包茎じゃないほうが異常の可能性があります。幼児は約60%が包茎と言われており、皮をむいて亀頭を出せる割合は3~4歳で約半数。11~15歳では7割の子がおちんちんの皮をむいて亀頭を出せるようになり、思春期以降、包茎の頻度はさらに低下します。このことからもわかる通り、子どもの包茎は特に心配する必要はありません。
むきむき体操、必要のない子も
健診などで、おちんちんの皮をむく「むきむき体操」を指導されることがあります。それをするべきか迷っているというママやパパが、時にいらっしゃいます。
しかし、むきむき体操は「真性包茎」を治すために考えられたものです。なので、仮性包茎の子にはまったく必要ありません。
むきむき体操をするか悩んでいるママのお子さんを見てみたところ、しっかり皮がむけるので、全然むきむき体操が必要なかった、ということもあります。仮性包茎か真性包茎かわからない場合は、健診などで受診した際に医師に相談してみましょう。
お子さんが真性包茎の場合は、無理ない範囲でむきむき体操をやってみてもいいかと思います。ただ、痛いという子もいますし、元気すぎてじっとしておらず、なかなかできないという子もいると思います。そういうお子さんには、無理にする必要はないと考えています。
どうしても包茎が心配という場合は、小児科や小児外科、泌尿器科の先生に相談しながら、むきむき体操を実践してみましょう。
おちんちんの皮をむくタイミングは?
むきむき体操をしなくても、男の子はおちんちんの皮をむくシーンがしばしばあります。例えばお風呂のとき。
むきむき体操ほどしっかり皮をむかなくていいですが、やさしく外側の皮を引っぱってあげて、なるべく皮の中がきれいになるように洗ってあげましょう。シャワーをあてる程度で、ゴシゴシする必要はありません。
また、トイレが自立してきたときに問題になるのが、おしっこがあちこちに飛ぶ問題。よくトイレを汚しちゃう子に対しては、お風呂のときと同様に無理ない範囲で、おしっこをするときに亀頭を出すと、狙ったところにおしっこが飛ぶようになりますよ。
包茎で悩むのは本人ではなくご両親
包茎の処置に関しては、小児泌尿器科医によっても考え方がわかれるところで、むきむき体操をするか、果ては手術をするか、などする(48%)・しない(48%)で真っ二つに意見がわかれています(第10回小児泌尿器科学会アンケート調査にて)。
つまり、してもしなくても、どっちでも大丈夫とも言えます。
私は、真性包茎が強いな、と思う子には無理ない範囲でむくことを試してみつつ、子どもが嫌がったらやめてしまうようにしています。子どもは包茎でも全然困っていないですし、特にそれで病気もしていませんしね! 心配な親御さんは健診のときにでも、相談してみましょう。