さまざまなストレスがかかりやすい現代社会では、大小あれど、生理痛に悩んでいる人が少なくありません。「生理痛は生理につきもの」と思っている人も多いでしょう。そこで、そもそも生理痛とはなんなのか、痛みが少なければ病院に行かずに放っておいてもいいのかなど、生理痛にまつわることを解説します。
答えてくれたのは……
こまがた医院院長 駒形依子(こまがたよりこ)先生
東京女子医科大学医学部卒業。米沢市立病院入職後、再び東京女子医科大学に戻り、専門医を取得。同大学産婦人科に入局し産婦人科医として働きつつ、性科学を学び、また東京女子医科大学東洋医学研究所で東洋医学を学ぶ。2019年1月に地元山形県米沢市にて、こまがた医院を開業。著書に『子宮内膜症は自分で治せる(マキノ出版)』『膣の女子力~女医が教える「人には聞けない不調」の治し方(KADOKAWA)』。
そもそも生理痛って何?
生理痛は、生理に伴う痛みや不快感全般を指します。
生理痛が起こる時期は、生理開始(出血したとき)~生理終了までの人、生理前~生理開始(出血したとき)までなど、人によって異なります。
生理前に起こる痛みについては、生理痛かPMS(月経前症候群)かの区別が難しいですが、「生理に伴う痛み」が一般的な生理痛の定義なので、生理開始前・生理中問わず痛みや不快感があれば生理痛と思ってもいいでしょう。
症状も、下腹部痛だけでなく、頭痛や腰痛が起こる場合、またそれを併発する場合もあります。また、痛みの強さも、痛みに対する感じ方も人それぞれなので、下腹部痛を「下腹部が重い」と感じる人もいれば「ギュ~ッと絞られるような痛み」と感じる人もいてさまざまです。
どうして生理痛が起こるの?
女性の体では、ある周期で、まず女性ホルモンである「エストロゲン」の働きによって子宮内膜が厚く
また、骨盤が歪んでいると内部に位置する子宮にも負担がかかり、生理痛の原因になることも。また、別の病気が原因で、生理痛が起こることもあります。
冷えや脱水は、普段の生活習慣から起こるもので、生活習慣を変えることで、生理痛も緩和することができます。特に足の冷えは生理痛が重くなる、いちばんの原因と言われ、足を温めるだけでも症状が緩和する人もいるほどです。つまり生理痛は、生活習慣病であるともいえるのです。
生理痛はあるだけで異常事態!
「生理痛はあって当たり前」と思っていませんか? 実は、生理痛は「ないことが普通」であって、生理痛があることは異常なんです。
婦人科での生理に関する診療は保険診療がメジャーですが、そもそも保険診療とは「生活に支障が出る病気や傷病」に対して適用されるもの。生理痛も痛みを伴うので、保険診療の範囲、つまり体に異状がある状態なのです。医療の観点から見れば生理痛があること自体、体が正常とは言い難く、生理痛は何らかの体の異常を示しているのです。
つまり、生理痛があるということは、冷えからくる「生活習慣病」かもしれないし、手術などが必要な別の病気が隠れていて、その病気に付随するものかもしれません。前者であれば、投薬による対処療法で症状を緩和したり、生活改善や漢方などで改善を目指すことができるでしょうし、後者であれば、別の病気を治療することで生理痛もなくすことができるかもしれません。
生理痛での受診の目安は?
前述したように、生理痛があることは当たり前の状態ではないので、「いつも通りの生理痛」だと思わずに、少しでも痛みがある場合は、早めに婦人科を受診することをおすすめします。手術が必要になるような病気が隠れていないかという確認もできますし、鎮痛剤やピルを使った対処療法から、漢方を使って根本治療を目指すこともできます。
また、普段飲んでいる痛み止めがだんだん効かなくなってきたという人は生理痛の症状が重くなってきているサイン。早めに医師の判断を仰ぐのがおすすめです。
なお、婦人科では妊娠や性病だけを検査しているのではなく、患者さんのホルモンが正常に働いているかなども、病院によっては希望すれば診察してくれます。自分の生活習慣を見直すきっかけにもなりますし、日ごろから食事や運動など、自分の体を気遣っている人は体のメンテナンスの一環だと思って受診するといいでしょう。
生理痛の症状や期間、痛みの感じ方は人それぞれ違いますが、「生理に生理痛はつきもの」ではありません。少しでも痛みや異変を感じたら一度婦人科を受診することで、今までわからなかった自分の体の状態に気づくことができるのです。