「子どもは好きだから」「1児を育てた経験があるから大丈夫」と思っていても、もしかしたら産後うつの一歩手前、さらには、すでに産後うつになっている可能性があります。他人事ではなく、少しでも辛いと思ったら周囲の人や専門家に頼ってほしいのが「産後うつ」です。
そもそも「産後うつ」とは?
産後うつとは、出産後6〜8週の間に発症する「うつ病」のことをいいます。ここで間違えてはいけないのが、「出産後6〜8週の間に“発症する”うつ病」ということです。6〜8週の間に産後うつと“診断される”のが産後うつではありません。
疲れを感じていたとしても、育児をしているため仕方のないことだろうと頑張っているうちに病状が進み、重いうつ病になってしまうことは多々あります。もう産後から1年近く経っているから自分は産後うつではないだろうと思っていても、すでに発症しており、うつ病が進行している可能性もあるのです。
実際、2015〜16年に行われた国立成育医療研究センター調査では、産後1年未満に死亡した女性の死因で最も多いのが自殺という結果が出ており、要因が「産後うつ」であると考えられています。
誰でもなる可能性がある病気
「うつ病」というのはよく聞く病気でありながらも、自分とは遠い存在であると思っている方も多いと思います。しかし誰でもなりうるのがこの病気です。今までの人生できっちりやってきたママが、赤ちゃんが思うように育児用ミルクを飲んでくれなかったり、夜泣きがひどかったりで困惑し、産後うつになってしまうこともよくあります。また、明るくくよくよしない性格だと自分も周囲も思っていた人がなってしまうこともあります。
「産後うつ」の恐ろしさとは
うつ病の怖いところは、うつの状態かどうか本人はわからないことが多く、ただ頑張って疲れているだけと思っていたり、自分は思い込みやすい性格だと勘違いし、病気と認識せずに病いが進行してしまうところです。また、頑張り屋さんで、もともと前向きな性格な人ほど、周囲に自分の辛さを見せまいとし、また周囲もその人の変化に気づけず、うつを進行させてしまう場合もあります。
幸い「うつ病」であると気づくことができたとしても、非常に辛いのは、薬でラクになることはあっても完治しにくいこと、いつ治るか周りにも本人にもはっきりわからず、ただただ終わりの見えない辛い日々が続くことです。自分自身の存在価値をどうしても受け入れることができず命を絶ってしまうこともあります。
産後うつは、ホルモンのバランスや、こどもができたことによる大きな環境の変化によって起こります。繰り返しになりますが、誰にでもなりうる病気です。気分が沈む日が多い、疲労感・無気力感に囚われる、育児や家事に集中できない、望んだ赤ちゃんなのに愛おしく思えない、体が重く感じるなどがあれば、なるべく早く周囲や専門家に相談することをおすすめします。
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<参考>
国立成育医療センター「人口動態統計(死亡・出生・死産)から見る妊娠中・産後の死亡の現状」