生理前や生理中のイライラ、体調不良に悩む女性は少なくありません。なかには自分ではコントロールできないほどの絶不調に振り回される人も。その原因、実は女性ホルモンが関係しています。この記事では医師監修による、女性ホルモンと生理の関係について詳しく解説します。
答えてくれたのは…
こまがた医院院長 駒形依子(こまがたよりこ)先生
東京女子医科大学医学部卒業。米沢市立病院入職後、再び東京女子医科大学に戻り、専門医を取得。同大学産婦人科に入局し産婦人科医として働きつつ、性科学を学び、また東京女子医科大学東洋医学研究所で東洋医学を学ぶ。2019年1月に地元山形県米沢市にて、こまがた医院を開業。著書に『子宮内膜症は自分で治せる(マキノ出版)』『膣の女子力~女医が教える「人には聞けない不調」の治し方(KADOKAWA)』。
女性ホルモン「エストロゲン」と「プロゲステロン」
生理周期のサイクルを調整している主な女性ホルモンは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)。この2種類のホルモンがバランスよく働くことによって、その人の体に合った生理周期を作ります。
また、このホルモンは体だけではなく、心にも働きかけるので、女性は1回の生理周期のなかで、さまざまな体調変化や気持ちの変化が起きます。
エストロゲンは女性らしさを引き出すホルモンと呼ばれ、肌や髪の調子や心を安定させる作用があります。生理周期のうち「排卵期」と呼ばれる時期に子宮内膜が厚くなるのはこのホルモンのおかげです。
プロゲステロンは体温を上昇させる働きのほか、子宮内膜が受精卵を着床しやすいよう厚くなった内膜を維持したり(黄体期)、乳腺の発育や食欲増進を促したりする作用があります。また、心を不安定にさせてしまう作用もあります。
女性ホルモンは、生理中にどんな作用をするの?
卵胞期の初めのころ、つまり生理が始まって数日は、エストロゲンもプロゲステロンもどちらも分泌量が低下します。このとき感じる体調の変化は、体の冷えやその冷えによる生理痛、出血による貧血などさまざまで、心も不安定な状態です。生理の終わりごろになるとエストロゲンが増えはじめ、心の安定を促します。
エストロゲンは排卵に向けて分泌量が増加し、排卵と同時に減少します。エストロゲンの減少とともに、プロゲステロンの分泌は高まり、黄体期が始まります。
そのため、生理が終わったあとから1週間ほどは肌や髪の調子が良くなり、心もいきいきとして過ごせることが多いです。しかし、排卵後、つまり生理の約1週間ほど前くらいからは、プロゲステロンの分泌が高まることで、だんだんと心身の不調を感じる人も。この生理前の不調がPMS(月経前症候群)です。
プロゲステロンは黄体期の間にピークを越え、生理開始に向けて減少するので、黄体期の中ごろが、1回の生理周期のなかでも心身ともに一番デリケートな時期といえます。
このように、「エストロゲン」「プロゲステロン」という2つの女性ホルモンの分泌量によって、女性は1週間ごとに体にも心にも変化が起きます。自分の生理周期を知ることで、今の体や心がどんな状態なのかを理解できるようになるので、体調管理の一環として習慣づけることをおすすめします。