「横隔膜ヘルニア」という先天性疾患を抱えて生まれたお子さんを持つママの体験談をお届けする連載企画です。横隔膜ヘルニアとは、本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気(※)。 おなかの子が横隔膜ヘルニアであると診断された妊娠中から出産までのできごとやママが感じた不安、生まれたお子さんの様子やその後の治療についてご紹介していきます。
(※)心臓や肺を圧迫するために心臓や肺の発育が悪くなります。これにより心臓の機能の低下や肺低形成・肺高血圧症をきたすため、出生後に手術を受けたあとも酸素療法や心不全に対する治療が長期に必要になることがあります。
息子が酸素吸入器をつけ始めたのは、生後6カ月のとき。ちょうどハイハイが活発になってきた時期でした。人工呼吸器よりもチューブが長い酸素吸入器になったことで動きやすくなった分、絡まって外れてしまうこともしばしば……。ここでは、動きが活発で言うことを聞かない息子に酸素吸入器をつけるうえで工夫したことをご紹介します。
酸素吸入器の鼻カニューラのつけ方
息子の酸素吸入器を使った呼吸の補助は、長いチューブの先に小児用の小さな鼻カニューラ(鼻の穴から酸素を吸いこめるようにする器具)をつけておこなわれていました。鼻カニューラは酸素が出る部分を鼻の真下に置いてから、両端のチューブを耳にかけ、顎下で固定するのが一般的なつけ方です。
しかし、そのつけ方だと息子の体の前面にチューブが来てしまい、手がすぐに届くので握ってはずしたり、ハイハイの際に踏んづけたりと、何度もつけ直す必要がありました。
後頭部に固定してはずれにくく
体の前面にだらんとチューブがあるのですから、息子が触りたくなるのも頷けます。最初は仕方ないのかなと思っていたのですが、ハイハイのときにチューブにつまずいて顔からこけることが何度かあり、思い切って顎下の固定を後頭部に変更してみました。
鼻下から頬、耳上を通して、後頭部で留めてみると、チューブは必ず息子の後ろ側にきます。たったこれだけのことなのですが、後頭部で固定するようにしてから息子がチューブに触ることも、つまずくこともほとんどなくなり、つけ直す回数も格段に減りました。
眠ったあとのカニューラの位置も工夫
鼻カニューラを後頭部で固定するようにして、1つだけ難しかったのが、寝ている間のカニューラの位置でした。基本的にカニューラのチューブはある程度の硬さがあり、子どもの頭の重さくらいで完全にふさがってしまうということはないと、こども病院の医師から聞いてはいたのですが、やはりチューブが頭の真下にきていると心配になってしまいます。
そのため、息子が完全に眠ったのを見計らって固定具を緩め、後頭部にあるチューブを頭頂部までずらしてから固定するようにしていました。
幼い上の子も協力者に
わが家には当時5歳と3歳の上の子がいたので、息子が酸素吸入器になった最初のころは上の子たちがチューブを踏んだり、つまずいたりすることもよくありました。そのたび、難しいとは思いつつ、「このチューブがふさがったら、弟の息が苦しくなる」ということを繰り返し説明しました。
すると1カ月もしないうちに上の子たちはチューブに気を付けて歩くようになり、それだけではなく「息子くんがチューブを踏んでる!」などと私に教えてくれるようになったのです。たとえ幼くても弟を大事に思う気持ちはしっかりあるのだと本当に感心しました。
動きたい盛りの息子に長いチューブのつながった鼻カニューラをつけ続けてもらうのは難しく、最初のころは危ない場面もたくさんありました。しかし、つけ方のちょっとした工夫や上の子たちとの協力で随分ラクにお世話ができるようになったので、いろいろと試行錯誤してよかったです。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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著者:岩崎はるか
2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療的ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院で農学を学んだ経験から食についても執筆。