「横隔膜ヘルニア」という先天性疾患を抱えて生まれたお子さんを持つママの体験談をお届けする連載企画です。横隔膜ヘルニアとは、本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気(※)。 おなかの子が横隔膜ヘルニアであると診断された妊娠中から出産までのできごとやママが感じた不安、生まれたお子さんの様子やその後の治療についてご紹介していきます。
(※)心臓や肺を圧迫するために心臓や肺の発育が悪くなります。これにより心臓の機能の低下や肺低形成・肺高血圧症をきたすため、出生後に手術を受けたあとも酸素療法や心不全に対する治療が長期に必要になることがあります。
呼吸の補助が外れると、息子の見た目は健康な子どもと変わらなくなりました。しかし、横隔膜ヘルニアの影響で肺が片方しかないことには変わりなく、風邪が重症化しやすかったり、喘息の発作が起きやすかったりします。息子の幼稚園の面接が近づくなか、そんな息子の状態について一体どこまで話せばいいのか、私は迷っていました。
悩みながら書いた健康調査票
息子が2歳になった9月、幼稚園の願書配布がありました。さまざまな必要書類のなか、困ったのが健康調査票。園児の「現在」の健康状態を告げるものなのですが、先天性疾患などの記入欄がないため、事実だけ書くと息子が「喘息があるだけの子ども」のように映ってしまいます。
備考欄はありましたが、横隔膜ヘルニアだった経緯をきちんと書くにはあまりにも狭く、「変に心配をかけてしまうかも……」と書けずにいました。
かかりつけ医の意見は?
保護者が書く健康調査票とは別に、病院で健康診断を受けて医師から書いてもらう健康診断票がありました。健康診断の際、かかりつけ医に「息子の病気について、どこまで知らせていいのかわからない」と相談すると、「横隔膜ヘルニアはあまり知名度のない病気だし、現状の喘息と食物アレルギーのことだけで十分」とのこと。
私自身も横隔膜ヘルニアのことは息子が生まれるまでまったく知らなかったので、たしかに病名を書いても幼稚園の先生方の不安を煽るだけになりそうな気がして、横隔膜ヘルニアについては書類に書かないことにしました。
気になる手術痕
ただ1つ気になったのは息子の手術痕でした。息子には、横隔膜ヘルニアを塞ぐ手術をおこなった際にできた傷痕がおなかに大きく残っています。さらに、首には人工肺に繋がる太い管を入れていた傷があり、まだ皮膚がひきつっていて少し不自然な状態です。
おなかはともかく、首の傷痕は服を着ていても目に入る部分。「一応過去に手術をしたことは伝えておいたほうがいいのでは……」と再び不安になってきました。
面接で伝えてみると
結局書類には書かなかったものの、面接時に口頭でこれまでのいきさつを軽くお話ししました。この幼稚園には長女のころからお世話になっていたので、面接官の先生も授業参観のときなどに医療的ケアが必要だったころの息子のことを見ており、心配してくれていたそうです。
息子が現状は幼稚園で生活するうえでは健康面の特別なケアは必要ないことを告げると、「お任せください。でも不安だったら担任の先生に直接病気のことを話す時間を作ることもできるので、いつでも言ってくださいね」と言われ、心が軽くなりました。
内心「病気のせいで落とされたらどうしよう」と気が気じゃなかった幼稚園の面接でしたが、かかりつけ医の先生としっかり相談していたことで、幼稚園側に自信を持って現状を伝えることができました。息子の病気のことを知ったうえで、柔軟な対応で受け入れてくださった幼稚園にも感謝です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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著者:岩崎はるか
2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療的ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院で農学を学んだ経験から食についても執筆。