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「死んでしまうの…?」不安でたまらなかった。横隔膜ヘルニアで生まれた息子のこれまでとこれから

横隔膜ヘルニアという先天性疾患を持って生まれた息子を持つママの体験談です。息子の病気を通して初めて知ることができたさまざまな経験が書かれています。

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師松井 潔 先生
小児科 | 神奈川県立こども医療センター 産婦人科

愛媛大学医学部卒業。神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神奈川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等、同総合診療科部長を経て現在、同産婦人科にて非常勤。小児科専門医、小児神経専門医、新生児専門医。
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【最終回】「横隔膜ヘルニア」で生まれた息子のこれまでとこれから

 

「横隔膜ヘルニア」という先天性疾患を抱えて生まれたお子さんを持つママの体験談をお届けする連載企画です。横隔膜ヘルニアとは、本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気(※)。おなかの子が横隔膜ヘルニアであると診断された妊娠中から出産までのできごとやママが感じた不安、生まれたお子さんの様子やその後の治療についてご紹介していきます。

(※)心臓や肺を圧迫するために心臓や肺の発育が悪くなります。これにより心臓の機能の低下や肺低形成・肺高血圧症をきたすため、出生後に手術を受けたあとも酸素療法や心不全に対する治療が長期に必要になることがあります。


 

3歳になり、MRI検査でも大きな異常が見られなかった息子は、2021年4月から無事幼稚園に通えることになりました。当連載最終回である今回は、横隔膜ヘルニアで生まれた息子の育児が一区切りした今、息子を育てるうえで大変だったことや、よかったことを振り返っていこうと思います。

 

とにかく不安でいっぱいだった入院中

重度の横隔膜ヘルニアを持って生まれた息子は生後すぐ危険な状態となり、その後4カ月に渡りこども病院に入院していました。特に最初の1週間は毎日が死と隣り合わせで綱渡りのような日々。その後は命の危機こそなかったものの、電話が鳴るたびに「病院からでは?」とヒヤヒヤしていました。

 

ただ、幸いこども病院では親の付き添い入院は必要なく、「面会もできるときでOK」というスタンスだったため、上の子たちや自分自身の気持ちのケアをおこなう時間的余裕があり、非常にありがたかったです。

想像以上に大変な医療的ケア児の世話

入院中、息子が退院後も人工呼吸器が必要な状態であると聞かされてからというもの、私は同様の医療的ケア児についてたくさん調べました。そのうえで、医師や看護師さんなどにわからないことはすべて聞いて、万全に準備をしていたつもりです。

 

しかし、いざ息子が退院すると想定外の出来事の連続で疲弊し、在宅勤務の夫ともずいぶん衝突しました。自分だけで解決できるよう知識を詰め込むのではなく、最低限の知識を夫婦で共有し息子のケアについて意見をすり合わせておくことが必要だったなと、今となっては思います。

医療的ケアがなくなっても終わりじゃない

息子の医療的ケアは生後11カ月でなくなり、見た目は健常児と変わらない状態になりましたが、油断は禁物でした。息子は1歳以降に2回、風邪をこじらせてこども病院に入院しています。

 

そのうちの1回は、再び人工呼吸器を装着するための気管内挿管を伴う非常に重篤なものでしたが、原因は特別な病気ではなく、「ごく普通の風邪」です。

上の子たちが数日の咳だけで熱も出ずに終わったような風邪でさえ重篤な状態になる息子は、医療的ケア児ではなくなっても注意深くケアしなければならない病気を抱えた子に変わりありません。

 

息子のこれからを考えて決めた仕事

昨今、新型コロナウイルス感染症対策が徹底されていることもあり、ここ1年ほどは病気をしていない息子。しかし、幼稚園、小学校……と集団生活が始まれば、風邪をひくでしょうし、こじらせてしまうこともあるかもしれません。そんなとき、なるべくスムーズにストレスなく付き添ってあげられるように、私は在宅フリーランスとして働く道を選びました。

 

最初のきっかけこそ息子でしたが、上の子たちが体調を崩したときにも柔軟に対応でき、幼い子3人を育てる自分には合っていたなと思います。息子が生まれたからこそ見つけることができた、天職です。

 

 

医療的ケア児の息子と過ごした日々はきれいごとでは済まない大変さがありましたが、結果的には私の視野が広がり、働き方や家族のあり方など、さまざまなことを考え直す良いきっかけになりました。一時は「痛みしか知らないまま死んでしまうのかもしれない」と思った息子が今いろいろなことでニコニコ笑うたびに、心の底から幸せな気持ちになっています。

 

※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

 

 


著者:岩崎はるか

2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療的ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院で農学を学んだ経験から食についても執筆。

 

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