2020年1月に日本で新型コロナウイルスの感染が初めて確認されて1年。新型コロナワクチンが開発され、日本でも接種が開始されようとしています。そんななか、2021年1月27日に、日本産婦人科感染症学会と日本産科婦人科学会が新型コロナウイルスのワクチン接種に関する提言を公表しました。
日本で接種が開始される新型コロナウイルスのワクチンとは?
国内外でさまざまな新型コロナウイルスのワクチン開発に取り組んでいますが、日本独自のワクチンは開発途中でまだ実用までには時間がかかるようです。そのため、日本では海外で開発されたワクチンを国民に供給することを目指しています。
2021年1月の段階で日本がワクチンの供給に関して正式契約を締結しているのは、契約順にモデルナ社、アストラゼネカ社、ファイザー社の3社です。そのなかのファイザー社のワクチンの接種が日本でも始まろうとしているのです。
日本でもワクチン接種開始の方向だけれど…
厚生労働省は、日本における新型コロナウイルスのワクチン接種について、「安全で有効なワクチンが承認され、供給できるようになった時には、医療従事者等への最初の接種が2月下旬から始められるよう準備を進めています。」としています。
現状ではワクチンの薬事承認もまだこれから。海外ではワクチンの供給不足により、接種の予約が取り消されたり、大規模な接種施設の開設を遅らせたりするというようなことも起きているようです。
ワクチン接種の対象者や接種順位は?
厚生労働省は、全国民分のワクチンの数量の確保を目指しているとしていますが、現時点では、
1)医療従事者等
2)高齢者(令和3年度中に65歳に達する、昭和32年4月1日以前に生まれた方)
3)高齢者以外で基礎疾患を有する方や高齢者施設等で従事されている方
4)それ以外の方
の順で接種を開始する見込みとのことです。
また、妊婦さんへのワクチン接種に関して、厚生労働省は安全性や有効性の情報などを見ながら検討するとしています。
妊婦さんへの接種に関しては?
日本でのワクチン接種の準備が進められているなか、日本産婦人科感染症学会および日本産科婦人科学会は、「妊婦さんに対しては十分な知見がなく、各国で見解が分かれています」と前置きしたうえで、現状において以下の提言を公表しました。
1 COVID-19ワクチンは、現時点で妊婦に対する安全性、特に中・⻑期的な副反応、胎児および出生児への安全性は確立していない。
2 流行拡大の現状を踏まえて、妊婦をワクチン接種対象から除外することはしない。接種する場合には、⻑期的な副反応は不明で、胎児および出生児への安全性は確立していないことを接種前に十分に説明する。同意を得た上で接種し、その後 30 分は院内での経過観察が必要である。器官形成期(妊娠 12 週まで)は、ワクチン接種を避ける。母児管理のできる産婦人科施設等で接種を受け、なるべく接種前と後にエコー検査などで胎児心拍を確認する。
3 感染リスクが高い医療従事者、重症化リスクがある可能性がある肥満や糖尿病など基礎疾患を合併している方は、ワクチン接種を考慮する。
4 妊婦のパートナーは、家庭での感染を防ぐために、ワクチン接種を考慮する。
5 妊娠を希望される女性は、可能であれば妊娠する前に接種を受けるようにする。(生ワクチンではないので、接種後⻑期の避妊は必要ない。)
患者さん一人一人の背景が違いますので、まずは産婦人科の主治医と十分にご相談ください。
これから日本でも接種が始まるとされている新型コロナウイルスのワクチンですが、運搬・保存の問題、副反応のこと、接種会場や人員確保の問題など、懸念材料は多々あります。しかし現状を変える可能性にもなっているのも事実です。まだまだ知見が少なく、接種に関して迷うところもあるかもしれません。今後の動向をしっかり見て少しでも安心してワクチン接種を受けられるようになるといいですね。