こんにちは。3人の子どもを子育て中の小児科医、保田典子です。本日は外来でご質問も多い「指しゃぶり」の話です。「指しゃぶりはダメ」という考えが浸透してから、ご心配される親御さんがとても多いです。ですが、指しゃぶりは無理にやめさせないほうがいいです。その理由をお伝えしたいと思います。
どうして指しゃぶりをするの?
指しゃぶりはだいたい生後2-3カ月ごろから始まります。0歳のときの指しゃぶりは「自分の指を認識するため」にしているもので、発達にとっても大切なので、やめさせてはいけません。
1歳半を過ぎてくると、習慣化した癖や気持ちの安定のためにすることが多くなります。歩くようになると、指しゃぶりをしていると安定しなくなるので指しゃぶりが減ってきます。
3-4歳になると幼稚園などに行き、社会生活も増えてくるのでさらに減り、6歳を過ぎることには指しゃぶりをする子はあまりいなくなります。
指しゃぶりは主に「歯並び」に影響します
指しゃぶりにより影響が出るのは主に「歯並び」です。歯が生えていないときは指しゃぶりに関して特に悪影響はないと考えられます。
歯が生えてから、長時間指しゃぶりやおしゃぶりをしていると、出っ歯になったり、前歯の間が空いたりしてきます。指で歯を前に出そうとする力が強いので、指しゃぶりの方がおしゃぶりよりも出っ歯になりやすいと考えられます。
指しゃぶりが4歳以降もが続くようであれば、自然と指しゃぶりをしなくなるように誘導してあげるとよいでしょう。
「おしゃぶり」の使用は慎重に
おしゃぶりは赤ちゃんがリラックスしたいときや不安なときにおしゃぶりを求めるとされており、おしゃぶりが習慣化すると、くわえさせることで泣き止むことが多くなります。
しかし、頻繁におしゃぶり使っていると、言語に関する発達や歯並びに影響する可能性があるため、おしゃぶりはできるだけ使わないようにしたほうがいいかなと思います。
いつでも吸える指しゃぶりと違って、おしゃぶりは親が与える物なので、2歳以上でおしゃぶりを続ける子はあまりいませんが、発語の機会を奪わないよう遅くとも2歳半までには中止したほうがいいでしょう。
「指しゃぶりを無理にやめさせなくていい」その理由は?
指しゃぶりは、親から見たら不要で歯並びに影響する「やめてほしいこと」でも、子どもにとっては必要な行為かもしれません。無理やりやめさせるとかえって逆効果になることあります。
例えば、もっと触って欲しくないところを触る癖がついたり、別の行為に置き換わる場合もあります。(性器いじり、爪かみなど)
まずは指しゃぶりを「やめさせる」という感覚は捨てましょう! そして、お子さんがどんなときに指しゃぶりをしているのかをよく観察しつつ、無理なく卒業してもらえないかを模索してみましょう。
癖っぽくなっている場合
指しゃぶりをするのは、お子さんが「テレビを見るとき」「眠いとき」などパターン化していて、癖っぽくなっている場合があります。手持ちぶさたで指しゃぶりをしていそうなときは、手を使うおもちゃや手遊びに誘導してあげると良いと思います。
眠いときに指を吸うお子さんには、寝るときに手や指をそっと握ったり添えてあげることで指を吸わずに安心して眠れるようになることもありますよ。
精神安定剤となっている場合
緊張しているとき、緊張したあとなど指しゃぶりが精神安定剤になっている場合があります。この場合は特に、無理やりやめさせると他の癖に移行することが多いように感じます。
指しゃぶりをしていないときに、ぬいぐるみやタオルなど他の精神安定剤になるようなグッズをちょっとずつ増やすなど、指しゃぶり以外で安心できるものを探してあげると良いでしょう。
指しゃぶり卒業を目指すなら「焦らず、一歩ずつ」
「出っ歯になってしまうかも」と言われると外見にも関わってくるので、親としては「指しゃぶりはダメ! 早くやめさせたい!」と思ってしまうのですが、焦るほうがうまくいかないことが多いので、焦らずに。いつかはきちんと卒業できます。
まずはちょっとずつ指しゃぶりの時間を減らしていき、自然に卒業できるようサポートしてあげましょう。